第6話


 7月10日、土曜日。高崎家玄関前。


 3回目の高崎家訪問。

 女の子の家ってだけで、その緊張感は倍増する。たとえ小さい妹さんがいたとしても。


 ピンポーン


 玄関のチャイムを鳴らし、雫ちゃんが来るのを待つ。


 ガチャ


「こんにちは」

「おにぃちゃん、だーれ? 」

「お兄ちゃんは、お姉ちゃんのお友達だよ」

「そっか! おねぇちゃん! かっこいいおにぃちゃんがきたよ~!」


 あぁ、雫ちゃん、マジ可愛い。

 もう癒しです。


 この年にして俺の良さを分かってくれるなんて、将来はきっと高崎さんにも負けないマドンナになりそうだ。


「いきなり妹がごめんねぇ」

「そんなことないよ、俺にも妹がいるから慣れっこ」

「そっか、ならよかった♪ 雫を膝に乗せたままでも大丈夫?」

「うん、問題ない。雫ちゃん、お兄ちゃんたち今からお勉強だから、静かにしててね」

「は~い! しずくね、おにぃちゃん好きなのぉ~」

「この子ったら。いきなりこんなに懐くなんて珍しい。じゃあお言葉に甘えて、このまま勉強しよっか♪」

「……そうだね」


 そういえば、雫ちゃんにも好きって言ってもらってたんだっけ……

 でも《巻き戻し》は起こらない。


 なんかちょっと……訳が分からなくなってきた。

 いったい俺が何をしたっていうんだよ。


 学園のマドンナと一つ屋根の下にいるドキドキのシチュエーションのはずなのに、心のモヤモヤの方が大きくなっているのを感じた。

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