第4話
「ん~! たった2時間くらいだったけど、今まで一番身になる勉強をした気がする」
「だったらよかった」
大きく伸びをして充実感を表現する高崎さん。
勉強会一日目を終えた俺たちは駅に向かっている。
周りに同じ学校の生徒はほとんどいない。
さすがに学校に残ってまで勉強するは人はなかなかいないようだ。
「太田君の話って分かりやすいんだよね。先生の話だけだと、どうしても分かりづらいこともあって……」
「先生はカリキュラムが多い分、表面的なことを満遍なくやるしかないからね。そこから理解するための深いところはどうしても生徒自身に委ねられている気がする」
「理解力がなくてすみません」
怒った様子もなく、普通に謝罪する高崎さん。
「いや、そういう意味じゃなくて……。俺の話をちゃんと理解してくれたし、そこは……」
「ふふふっ」
「えっ?」
「太田君ってやっぱり真面目だね。でも良い真面目さんだと思う。最初は真面目で自分の世界を持ってて、もしかしたら絡みづらい人なのかなぁって思ってたけど、全然そんなことなかった。でも不満が一つだけあります」
「ふ、不満?」
俺の教え方は分かりやすいって言ってくれたし、変な目でも見てなかったと思うし、何か地雷を踏むようなことをしてしまったのだろうか。
「だって太田君、全然私の方を見ようとしてくれないじゃん。いっつもノートとか教科書に向かって話しかけるし。私は目の前にいるんだよ?」
ちょっとふくれっ面で不満を露わにする高崎さん。
「え……。だって……その……」
「ふふふっ、冗談。教えてもらってるんだから何も不満なんてありませ~ん」
のほほんとそんな冗談を言ってのける。
こんな俺にも本当に壁を作らない良い人なんだな。
高崎さんとは電車が反対方向のため、そのまま改札で別れることになった。
ガラガラの駅のホームで待っていたとき「ずいぶんと仲が良くなったみたいで良かったじゃない」と少々素っ気なく呟いてきた前橋さん。
あれ? ちょっと怒ってる?
前橋さんの存在を無視して、ずっと勉強に集中していたことが気に障ったのかな。
でも、高崎さんに前橋さんの話をするわけにもいかないし……
まぁ、素っ気ない感じはいつものことだし、それ以上は考えないようにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます