第3話 悪役令嬢ルートに入ってくるプレイヤーがうざ可愛い

Xensystems ver0.400016......check

―――――――――――――――――――――――――――———————————


 あなたは、35歳のOL。


 準ゼネコンとなる建築会社の支部で、事務員をしていた。職場にかかってくる電話の処理、申請書類の処理、補助金の処理、台帳の処理、勤務表の処理、すべてあなた一人で行っており、徹夜の残業が常態化していた。


 たまに我が家に帰り、シャワーを浴び、うつらうつらしたまま日が昇る。


 事務所の掃除、飲み物の補充、車検の申請、雑務という雑務を押し付けられ、それでいて、「事務員は楽でいい」と笑われた。あなたは愛想笑いで返すことしかできなかった。そんな気力は残っていなかったのだ。精神はすり減り、体力も限界だった。


 あなたは、昔、好きなゲームがあった。


 主人公の女の子は魔法学園に通い、美男子たちと交流し、メインルートでは王子と結婚する。王道の作りながら、一か所だけ他のゲームとは違う点があった。


 悪役令嬢のルートがあるのだ。


 悪役令嬢としてプレイするわけではない。悪役令嬢を攻略するルートだ。女性向けのゲームなのになぜ? と思ったが、その意外性と、最初の悪印象からの転換か、なんだかんだ可愛くて見えてきて、このゲームのグッズを集めるようになった。


 ある朝、目を覚まし、あなたは、悪役令嬢のミニぬいぐるみが転がっているのに気づいた。それが好きだったことを思い出した。それがあることを思い出した。


 どうしてか、あなたの頬を涙が伝っていた。


 報われず、将来に希望も見えない中、少しだけ精神に余裕ができたあなたは、会社をさぼり、ロープを買いに行き、それをクローゼットに引っ掛け、自らの……。


 ――そして、女神に出会った。[了]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る