第3話 悪役令嬢ルートに入ってくるプレイヤーがうざ可愛い
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あなたは、35歳のOL。
準ゼネコンとなる建築会社の支部で、事務員をしていた。職場にかかってくる電話の処理、申請書類の処理、補助金の処理、台帳の処理、勤務表の処理、すべてあなた一人で行っており、徹夜の残業が常態化していた。
たまに我が家に帰り、シャワーを浴び、うつらうつらしたまま日が昇る。
事務所の掃除、飲み物の補充、車検の申請、雑務という雑務を押し付けられ、それでいて、「事務員は楽でいい」と笑われた。あなたは愛想笑いで返すことしかできなかった。そんな気力は残っていなかったのだ。精神はすり減り、体力も限界だった。
あなたは、昔、好きなゲームがあった。
主人公の女の子は魔法学園に通い、美男子たちと交流し、メインルートでは王子と結婚する。王道の作りながら、一か所だけ他のゲームとは違う点があった。
悪役令嬢のルートがあるのだ。
悪役令嬢としてプレイするわけではない。悪役令嬢を攻略するルートだ。女性向けのゲームなのになぜ? と思ったが、その意外性と、最初の悪印象からの転換か、なんだかんだ可愛くて見えてきて、このゲームのグッズを集めるようになった。
ある朝、目を覚まし、あなたは、悪役令嬢のミニぬいぐるみが転がっているのに気づいた。それが好きだったことを思い出した。それがあることを思い出した。
どうしてか、あなたの頬を涙が伝っていた。
報われず、将来に希望も見えない中、少しだけ精神に余裕ができたあなたは、会社をさぼり、ロープを買いに行き、それをクローゼットに引っ掛け、自らの……。
――そして、女神に出会った。[了]
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