第12話 繋がりこそ人生

「お前……まだなにかする気かよ」

「幻覚かなんか知らないが、写真立てを触った時に変な映像みたいなのが見えたんだ。そこには小学校が見えた。名前は応為おうい小学校」

「……もしかして行けって言ってるのか?」

「そうだ」

「――――冗談じょうだんはよしこさん案件だろそれは!」

「その言い回し方は初めて聞いたわ」


呼吸がまだ戻っていない弦之介が立ち上がって抗議こうぎする。


「仮にだ!幽霊がいるとすれば、これ以上関わるのは危ねぇだろ!?俺は首をつかまれたんだぜ!?おどされてるんだよ『もうこの件には関わるな』ってな!!」

「だが時雨の過去に何かがあったのは事実だ!そのを俺は知りたいんだ!」

「事実なのは確定してないだろ?夢や幻覚の曖昧あいまいなもので変なシーンを見たってだけだろ?」

「その曖昧あいまいなものが全部繋がってるのがおかしいんだよ。仮定や予測も繋がれば事実に導かれるんだ」

「んな馬鹿な話があるか!」


車へと早歩きで向かう弦之介。


「……俺。お前にいくら貸してたっけな」

「……待てよ、それはずるいぞ」

「どうする?人間と幽霊、どっちが怖いか体験してみるか」


悪い笑顔で弦之介の肩を叩く。


「幽霊に殺されるか、内蔵全部売っぱらわれて死ぬか……選ぶか?」

「――分かった!分かったよ!」


車のカギを開ける。


「行きゃあいいんだろ行きゃあ!」

「いいね最高だ!今のお前は超『ロック』だぞ!」

「これまで生きてきた俺の人生で1番バンドをしてたことを後悔してる」

「金を借りたことを後悔しろよ」




応為小学校。地図を広げて見つけたのは――日和佐ひわさの隣。由岐ゆき町にそれらしき小学校を発見した。


車を走らせること30分と少し。これまた静かな町の中。そこだけが昭和で止まっているような場所に小学校はあった。


「あんまり大きくないな」

さびれた町だしな。子供も少ないんだろ」

「だったら時雨ちゃんのことも覚えてくれてるかもな」

「そうだといいんだがなぁ……」


絶妙ぜつみょうに高いへい。登れなくはない――が、小学校でやっては洒落しゃれにならない。犯罪は犯罪でも子供好きの変態になるのはごめんだ。


「……で、どうするんだ?」

「正面突破」

「アポイントは?」

「もちろん取ってない」

「――ダメだろそれ」


驚くほど冷静に弦之介は言った。


「これから個人情報を聞きに行くんだぞ?アポイントなしで行ったところで聞けるわけがないだろ」

田舎いなかだし個人情報とか保護されてなくない?」

田舎いなか舐めすぎだろ」

「真正面から行った方が『ロック』だ――」

「『ロック』が便利な言葉じゃないって言ったのはお前だかんな?」

「――もううるせぇなぁ!」


忠告ちゅうこくを無視して学校入ろうとする八重――を止める弦之介。


「こういうのはパッパと行った方がいいんだよ!」

「おいバカやめろお前!下手すりゃ犯罪者だぞ!?」

田舎いないになんて警察は来ねぇよ!」

「お前田舎いなかに対して偏見持ちすぎだろ!」




「――何をしているんですか?」


――例えばそう。蛇ににらまれたかえるのように。メドゥーサに見つめられたかのように。


潜在的な恐怖を刺激されたというよりは、『あ、これ終わった』というような予測できる恐怖が2人に襲いかかった。


「あ、あの小学校になにか御用ごようで?」


話しかけてきたのは60歳前後初老くらいの男性だった。白髪しらがが生えそろって今にも髪が抜けていきそうだ。腰も背も低い。


「いやあの――」

「――聞きたいことがあるんです」

「聞きたいこと?要件があるならなら聞きましょうか?」

「えっと……あなたは?」

つじ石蕗つわぶき。ここの職員です」

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