お前に『幸福』は似合わない
アタラクシア
序章 雨模様のパジャマの少女
第2話 幸福な毎日を
八重が時雨と出会ったのは大学一年生の時だった。初めて受けた
最初は特に会話もなかった。だが次の日も、そのまた次の日も。狙っているかのように2人は隣り合わせで座っていた。
温厚でお
「僕と結婚してください……『こちらこそお願いします』……ふふ」
ショーケースに並べられたネックレスを見ながら、少々気持ちの悪い笑みを浮かべている――と、八重のスマホが振動した。
「おわっ!?」と声を出しつつスマホの画面を
『――もしもし?』
「なんだよ兄貴」
それは4歳離れた兄からの電話だった。
『光ちゃんから聞いたぞー。告白、成功したんだってな』
「まぁ一応」
『やるじゃねぇか。まさか弟に先
兄弟の関係は
(……考えても仕方ないか)
そこについては特に触れない。
『
「未定だよ。ご両親からの了承が得られてなくて」
まだ告白してOKを貰っただけだ。むしろ本番はこれから。初めて時雨の両親に会った時はもうそれはそれは――。
昔ながらの
『……男はガッツだ。きちんと
「んな
歩きスマホ。それも店内。通常ならダメ一択。他に客がいないからこそギリギリ許されている
目を惹かれたのだ。黄色のダイヤモンドが付いたネックレス。シンプルながらも美しく、
自分の心の中にある時雨の様相にピッタリのネックレスを見つけたのだった。まさに運命的な出会いだ。
「これ……いいな」
『どうした?』
「ネックレス見つけてさ。黄色の……ダイヤモンドか。時雨にすげぇ似合いそう」
『そうかぁ?時雨ちゃんは水色とかの方がいいと思うけど』
なんて言われるも、決めた心は揺るがない。ダイヤモンドに反射する自分の顔がキラリと光った。
「……」
しかし
「13万……」
買えなくはない。だが手軽に出せる値段でもない。
『――誰かが言った』
「どした?トリコでも見てんのか?」
『悩む理由が値段なら買え。それ以外ならどんなにお得でも買うな……ってな』
「……名言をどうも」
――決まった。悩んでいた心が『買う』と決定を付ける。金なんて削れば
「予約……しとくか」
ネックレスをつけた時雨……ベールを付けている時雨……
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