第4話


 カチ、カチ、カチ、カチ


 部屋中に響き渡る置時計の針の音。


 ベッドに横たわってから何回目かは数えていないが、再び目を開ける。

 時間を確認すると、すでに夕方の5時を回ろうとしていた。


 昨日は家に帰ってから、特に何も食べずにずっとベッドで過ごしている。

 目をつぶっても深い眠りにつくことはできず、結局すぐに目を開けてしまう。その繰り返し。


 再び部屋を見渡す。


 結葉はいない。


 当然だ。

 結葉は自ら命を絶ってしまったのだから。


 ……あれから3カ月。


 ボクが彼女のためにしてあげられたことはあっただろうか。

 正義だと思ってやったことは、真中さんからすれば、間違いだった。

 でも、今度はそんな間違ったボクを守ってくれるという。


 いつもいつも女の子に守られてばかり。

 いつかはボクも守る側の人間になりたいと思っていた。


 今度こそはと意気込んだけど失敗した。

 それでも諦めないと誓った。


 結葉を守れなかったボクだけど、真中さんに守られるボクだけど。

 いつか絶対に恩返しをしよう。


 ……それにしても、真中さんはいつ頃来るんだろう?


 今日は平日。

 学校が終わったらそのまま来てくれるのかな。

 天井を見つめ、置時計の針の音を聞きながら、ボクは真中さんが来るのを待ちわびた。



 ピンポーン



 一瞬意識が飛びかけたが、玄関のチャイムの音で我に返る。

 時間を確認すると夜の9時を示していた。


 思ったより遅かったけど、やっと来てくれたのかな?

 はやる気持ちを抑えながら、ボクは玄関に移動して、ドアスコープを確かめる。


 柔らかくて優しい笑顔がそこにあった。


 施錠を解除し、扉を開ける。



 この扉の先にある、明るい未来を信じて。

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