第5話
「くらえ! スバラシパンチ!」
「うわー!」
パタリ
「この素晴島の平和は私たちが守る! だって私たち!」
「「「アイランド戦隊スバラシンジャー‼‼‼‼」」」
パチパチ
観客は杏沙のおばあちゃんと、昼寝中のおじさんの二人だけ。
スタッフの拍手の音が一番大きいというありさまだ。
ここは近くにある行政センターの野外ステージ。
なぜかヒーローショーをやってほしいと頼まれ、今にいたる。
「いやぁ、君たち本当にさまになってたよ! お兄さん感動しちゃった! また機会があったらぜひよろしくね! はははっ!」
この島の役所のスタッフらしきお兄さんが、満足気な笑い声をあげながら去っていく。
満足してくれたようで何より!
「って! たいして人気のないご当地ヒーローか!」
「新斗さ、毎回ツッコんでて疲れない?」
「ツッコまずにはいられないだろ! だって男の子だもん!」
「ああ?」
「なんでもないです……」
下ネタまがいなことは厳禁なようだ。以後気を付け……うん、無理だ。不可能だ。
「みんな助けを必要としてくれてる人たちダピ。そんな人たちに手を差し伸べてあげる。それこそ正義の心ダピ!」
「だからってよぉ。なんでもかんでもはいはいって言って引き受けてたんじゃお互いのためにならないだろ。たまには自分の力だけでなんとかやらせてみる。これも一つの正義だと思うんですけどね。けっ」
「どうして新斗はこうもひねくれてるんダピ?」
「ひねくれてません! 歪んでるだけです~!」
「ああもう! さっきからうるさいわよ、あんたたち!」
ゴン!
ゴン!
「いったぁ~! 何するんだよ杏沙!」
「そうダピ! ダピルまで殴る必要はないピ!」
「ただでさえ、こんな暑いのにあんたたちの声は目障りなの!」
「幼女の姿でそんなことを言うのって、今更ながら心をくすぐられるものがありますな」
思わず本心をぶちまける俺。これも夏の暑さの仕業かな♪
でも、そんなことはお構いなしに、可愛い幼顔にメキメキと怒りマークが増えていく。
「……もうあんたは一生黙ってなさい!」
「ひぇええええ!」
こんなやりとりが日常になりつつある今日この頃。
正義の心と幼女の心を身に付けるってなかなか難しいぜ。
たしかにボランティア精神にのっとって人々を助け回ることは『THE 正義』って感じだ。
でも、これじゃあ俺たちの身も心も削られてしまい本末転倒な気がする。
助ける側も助けられる側もメリットが得られるような、それでいて正義の心と幼女の心をはぐくめるようなこと……。
ん? あっ! 良いことを思いついたぞ!
「みんな聞いてくれ! 俺にいいアイデアがある! これなら正義の心も幼女の心も身に付けられて一石二鳥だ!」
「変なことを企んでるんじゃないでしょうね?」
「えっちなことは……ダメ……です」
この短い付き合いでいかに俺が変な人間に思われているのかがよく分かった。
でも今はどうでもいい。
「コホン。それはだな……」
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