第3話
「オギャアアアアア! オギャアアアアア! ママーーーー‼」
「ハイハイ、ママはここでちゅよ~。ねぇ、お父さん、この子もしかしたらオムツかもしれないから見てくれる? 私、料理を見ないといけないの」
「そうか。任せなさい」
「オギャアアアアア! オギャアアアアア! いやーーーー‼」
「ほほっ、ママじゃないとダメみたいだ」
「オギャアアアアア! オギャアアアアア! ……って、こんなこと恥ずかしくてやってられるか!」
「もっとまじめにやらないとダメダピ」
「まじめって……。なんで二十歳を越えた俺たちが幼女に変身してまで、おままごとをしなくちゃいけないんだよぉおおおおお!」
そう、俺たちは今、幼女に変身しておままごとの最中である。
お父さん役を杏沙、お母さん役を一葉、そして、なぜか俺が赤ちゃん役を引き受けることになった。
「あんたノリノリだったじゃない。たまに家を出てどこに行ってるんだと思ったけど、あれってもしかして、さっきみたいに泣いてたんじゃ……」
「んなわけあるか! ただの気晴らしの散歩だっつーの! なんだよ、杏沙だってノリノリだったじゃねぇか!」
「だってしょうがないでしょ! YOJOパワーを効率的に上げるためなんだから」
「二人とも! 喧嘩はめっ! です!」
「一葉ちゃんも案外ノリノリだね……」
「……はい。私、引っ込み思案で友達も少なかったので、一人でこういう遊びをすることが多くて……」
やばい。悲しい歴史を話させてしまったぞ。
このままだと、一葉の辛い過去編に突入しかねないと思ったが、ダピルが間に割って入り、
「新斗、心をもっと幼女にするんダピ」
「だからそれができれば苦労しないって! 俺は男なの! 心は狼なの!」
「じゃあ狼の幼女の気持ちになるんダピ」
「もっと難易度が上がってるだろ! だいたいこんなんで本当に強くなれるのか? なんだよ、YOJOパワーを鍛えるのに、幼女の気持ちになりきるって」
「それが大切なんダピ。君たち大人の欠点は、変に心がすれてることダピ。どうして子供の頃は純粋無垢なのに、大人になるとこうも汚れちゃうんダピ? 人間の心はまだまだ理解が難しいピ」
「それはだな、就職とか人付き合いとか女に振られるだとか……ブツブツ」
「ああもう! 心が汚いのはコイツだけ! でもそうね、どうして幼女の心を持つとYOJOパワーを鍛えれるの?」
「それは純粋無垢な心こそ、ありとあらゆるものを吸収する余裕が生まれるんダピ。その余裕の中に、YOJOパワーを今よりももっと取り込ませることにより、レベルが格段に上がるんダピ!」
「それで……幼女の心を手に入れるために、幼女がやりそうな遊びをってこと……ですか?」
「その通りダピ」
「鍛えるって言うから、もっとこう、筋トレ的なものをイメージしてたぜ。ちょっと拍子抜け」
「新斗。やっぱり君は謎ダピ。君の心はすれ過ぎてるピ。ツルツルピカピカ頭のおじさんと同じダピ」
「いや、あの人たちは別に心がすれてあのような輝かしい存在になったわけじゃ————」
「君の正義の心は素晴らしいピ。でも、それだけじゃ幼女ヒーローになることはできない。君の持つYOJOパワーは杏沙と一葉とじゃ比べ物にならないくらいのポテンシャルを持ってるピ。……もしかして、心が幼稚だから、あるいは……」
「こらこら! 失礼だぞ、このネコもどきが!」
「ネコもどきってどういう意味ダピ⁉ ダピルは気高きネコ型AIであって……」
こんな風にひと悶着もふた悶着もあったが、幼女の心とやらを身に付けるべく、おままごとをしたりお絵かきをしたり、お歌を歌ったり、とにかく子供がやりそうなことをやりまくった。
姿は幼女とはいえ、かなり恥ずかしかったです……はい……。
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