第2話

 ウァラクを倒した俺たちは、三人での初勝利の余韻に浸るかのように、海に沈む夕日を眺めている。


 この島の海は本当に綺麗だ。

 見ているだけで心が洗われる。

 この光景を見れば魔法少女とやらも心が浄化されて、この世界を滅ぼそうだなんて気は起こさないんじゃないか?

 そんなことを思っていたが、一匹のネコ型AIは、どこか釈然としていないみたいで、


「全然ダメダピ! 君たちはまだ現状で満足してちゃダメダピ!」


 と、勝利をしても満足は許さない少年野球の監督みたいなことを言い出した。


「何がダメなんだよ。三人で掴んだ初めての勝利だぞ? 少しは余韻に浸ってもいいじゃねぇか」

「そう言いながらダピルの鼻をつまむのはやめてほしいピ!」

「おっとすまない」

「それで? なんでダメなの? そりゃ新斗は幼女戦隊に入ってからまだ間もないし、私と一葉だって戦い慣れてるわけじゃないから、手こずってはいるけど」

「はい……もっと……頑張らないとですよね」

「確かに戦い慣れていくことは必要ダピ! でも、ダピルが懸念してることはもっと深刻な問題ダピ」


 急に重々しい雰囲気になってしまい、思わず三人とも息を飲む。

 ダピルは海を眺め、寂しそうな背中でこう言った。


「このままだと、魔法少女はおろか、これから出てくるであろう悪魔にも勝てなくなるピ」


 波が堤防に衝突する音だけがこだまする。

 沈黙を破ったのは杏沙。


「どういうことよそれ? だって、さっきは少し手こずっちゃったけど、全員無傷で倒せたのよ? 魔法少女の力がどれくらいなのかは分からないけど、あれくらいの悪魔ならこれからだって余裕で倒せるに決まってる。そうだよね? 新斗、一葉ちゃん?」

「お、おう」

「……そうですね」


 杏沙の言う通り、魔法少女がどれだけ強いかは分からないが、俺たちの力が合わされば、きっと大丈夫なはずだ。


 しかし、ダピルの口から聞かされた真実は驚くべきものだった。


「さっきの敵……ウァラクは、悪魔の中でも最弱の部類に入る低級悪魔ダピ。本来ならあの程度なら一人でも一発で倒さないといけないレベルダピ」

「……嘘……だろ」


 驚くべき真実に思わず動揺する俺。

 かまわずダピルは続ける。


「ウァラクは最初に名乗ったピ。『悪魔72柱の一つ』だと。そう、悪魔は全部で72体いるピ。そして、ウァラクのランクは62。ランクが上がるごとに強さはどんどん上がっていく。そしてそのトップに君臨する魔法少女の強さはもはや未知数。このままの君たちの強さじゃ到底かなう相手じゃないことは確かダピ」

「マジか……。じゃあどうすればいいんだよ?」

「YOJOパワーの底上げが必要ダピ」

「えっ、パワーって鍛えられるの?」


 杏沙が質問する。


「当然ダピ。強くなりたければひたすらバットを振り続けるしかないピ」

「その少年野球監督ネタ、続いてたのかよ」

「野球も同じダピ。ひたすらバットを振り続けることは前提条件。これに加えて、もっと効率よく実力をつけるために、スイングスピードを速めるために腕の筋力をつけたり、体幹を鍛えてしっかりと下半身の力をバットに伝えられるようにしないといけないんダピ」

「詳しいな」

「YOJOパワーも同じダピ。持続と効率なんダピ。効率よくパワーアップするために、君たちにはとても大切な二つのポイントを教えるピ!」

「「「おお!」」」


 三人が一斉に感嘆の声を上げる。

 すかさず俺は続きを聞く。


「ずばりその2つのポイントとは……?」

「ダピ。その2つのポイントとは」

「「「ポイントとは……?」」」

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