【第3章】 チャージ! YOJOパワー‼

第1話

 幼女戦隊としてヒーローの道を歩み始めて2週間が過ぎた頃。


 本当に地球に危機が迫っているのか疑ってしまいたくなるくらい平和な日々が続いていたのだが、ようやく敵である悪魔が現れた。


 俺(レッド)、杏沙(ブルー)、一葉(イエロー)の三人での初めての出撃。

 早速変身だ!


 でも、あれ?


「あの……、変身ってどうすればいいんですか?」

 

 ズコッ

 バチンッ!

 

「あんたね、敵を前にしてるのに、なに緊張感のないこと言ってるのよ!」

「いきなりパーで顔をぶつなよ! 母さんにもたぶたれたことないのに!」

「ふざけてる?」


 バキバキ♪


「笑顔のまま指をそうやって鳴らすのはやめろよ、怖いから。それに指を鳴らしてると指が太くなっちゃうんだからな? いや、そんなことはどうでもいい! 俺、この前初めて変身して、そのときはダピルが手伝ってくれたら、自分で変身するのは初めてなんだよ……」

「ったく、これまでに時間はあったんだから、変身の練習くらいしておきなさいよ。これだからニートは……」

「今はニートじゃないし!」

「体臭がニートなのよ!」

「どんな臭いだよ! ちゃんと毎日お風呂入っとるわい!」

「あの……、痴話喧嘩してるところ悪いけど、君たちを無視して世界を滅ぼしちゃうよ? いいの?」

「「うるさいからまだ黙ってろ!」」

「あ、はい」


 まだ名前も知らない悪魔を一旦黙らせる。


「分かったよ。教えるわよ。一葉ちゃんが会話に入れなくていじけちゃってるし」

「私はいつも仲間外れ。いいんです。私はいつもこうだから。私なんて会話のテンポが悪くなるからいつも……ブツブツ」


 別に仲間外れにしてるわけじゃないぞ?

 お兄さんはいつだって君の味方さ。だから元気だしな?

 今度アイスでもご馳走するからさ……。

 あの高いカップのやつ……。


 あまりにも気の毒な一葉に声をかけることはできず、心の中でそう誓った。


「それで、どうすれば変身できるんだ?」

「ダピルからもらったヘアピンがあるでしょ? それを掛け声と一緒に髪にセットするだけ」

「セットする場所は?」

「そんなの適当よ。ファッションなんだから可愛く見えるところに付けたらいいんじゃない?」

「適当だな! でも分かった!」

「じゃあ、いくわよ!」

「あっ! あと掛け声のときの決めポーズとかは————」

「ああもう! そんなのいいから早く変身するわよ! 一葉ちゃんお待たせ! さっさと敵を倒してゆっくりお風呂にでもつかりましょ!」

「そういうまとめ役的なのって、リーダー色であるレッドの俺の役割では⁉」

「黙れ」

「御意」

「じゃあ、気を取り直していくわよ」


「「「YOJOパワー、コンプレッション!」」」


 なんやかんやあったが各々が幼女に変身。

 試しに、昔テレビで見た仮面をつけたライダー風にポーズを決めて変身してみたけど、無事成功だ。


「グッヘヘ! 来たな幼女戦隊! お前たちが変身するまでに5分は待ったぞ……。まぁ俺様は寛大だから許してやる。お前たちの噂は魔界でも聞いているぞ。俺様の名はウァラク! 我が君・魔法少女様が従えし悪魔72柱の一つ。貴様たちは俺様がぶっ潰してやるぜ!」


 双頭の竜を彷彿とさせる二つの頭。この前の鳥頭の悪魔と違って、桁違いに強そうだ。

 それに、72柱ってことは、まだほかにも悪魔がいるってことなのか?

 それにしても、気になる点が一つ……


「ファッションがダサ過ぎだろ」

「うん。ダサいわね」

「ダサいです……」


「なに⁉ 魔法少女様が素晴らしいと褒めてくれたんだぞ!」

「お前それきっといじられてるだけだぞ? そのファッションが似合って、最高にかっこよく見えるのはこの世界にたった一人しかいない」


 2つの竜の顔を持つ悪魔であるウァラクのファッションは、某フレディのようなピッチリ白タンクトップをジーンズにインさせている。

 あの顔にこのファッションは最高に似合ってない。若干足も短いし。


「というか、なんで悪魔が人間の服を着てるんだよ……」

「うるさいぞ! 魔法少女様はこの世界に興味があるというから、この世界の文化に触れてみようとだな……」

「気に入られるように頑張ってたのね。悪魔って意外とピュアなのかしら。一気に弱そうに見えてきたわ」


 杏沙が少し小バカにしたようにウァラクを挑発する。


「貴様……。俺様をバカにしたな! まずは貴様からぶっ殺してやる! ズッ、ズッ、チャ。ズッ、ズッ、チャ」


 聞き覚えのあるようなリズムを二つの口で刻みだす。

 やっぱりフレディ⁉

 そう思った瞬間、二つの竜の口が開き、


「ロッキュー‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


 片方の口からは白、もう片方の口からは黒の炎を俺たちめがけて放出する。


「うわっ!」


 俺たち三人はなんとかその攻撃をかわす。

 しかし、


 バゴーンッ!


 後ろを振り返ると、山の一部が抉られていた。

 もし、これがこの島の人たちに当たっていたら……。

 そう思うと一気に緊張感が増してきた。

 杏沙と一葉も同じ思いのようで、


「まずいわよ、新斗。アイツ、結構強いかも」

「怖いです……」

「そうだな。でも、ここで俺たちが食い止められなかったら、この島……いや、この世界が危ない! 何とか食い止めるぞ!」

「そうね!」

「……はい!」


 三人でウァラクに対峙。


「グッヘヘ!  ようやく俺様の強さが分かったみたいだな。でも、貴様らには俺様と戦う前に、コイツらの相手をしてもらうぜ! いでよ! ゴルラども!」


 その掛け声と同時に魔法陣が地面に現れ、


「「「ウホッ、ウホッ、ウホッ、ウホッ、ウホッ」」」


 その魔法陣からゴリラのような姿をした獣が3体、姿を現した。


「なんだあのゴリラどもは!」

「あれは、悪魔たちが従えてる魔獣のゴルラダピ! 一体だけだと大したことないけど、数が多いとなにかと厄介ダピ!」

「まずはゴルラたちを倒さないとってこと?」


 杏沙が尋ねる。


「いや、あいつらを相手してる隙に島の人たちに危害を及ぼすかもしれねぇ。あのゴリラもどきは俺がなんとかするから二人はウァラクをやってくれ!」

「わかった! 行くわよ、一葉ちゃん!」

「はい!」


 ゴルラたちを飛び越え、ウァラクの元へと向かう二人。

 そういえば、二人が戦うところを見るのは初めてかも。

 でも、まずは目の前のゴルラに集中しないと。


「このゴリラもどきが! 全員まとめて相手にしてやるぜ!」

「「「ウホッ!」」」

「うりゃああああ‼‼‼‼」


 3体同時に相手にするのは少々骨が折れたが、なんとか撃退。

 この前は無意識に炎が拳から出てきてたけど、今回は感覚で炎を操ることができた。

 まだなんとなくだけど。

 次からは戦いに備えてしっかり練習する必要があるな。

 急いで二人の元へと向かう。


「くらえ!」


 杏沙が水の弾丸を手から次々と繰り出す。

 杏沙は水のYOJOパワーを司る幼女ブルー。

 身体にあるパワーを水へと変換させて、一気に放出させる。


「悪い悪魔さんは消えてください……!」


 一方の一葉は、空中から雷を呼び起こし、相手に命中させる。

 雷のYOJOパワーを司る幼女イエローというわけだ。

 内側にあるパワーを放出させるというよりは、自然に対して優しく語り掛けることで、力を貸してもらっているという感じ。


 あまり連携が取れているとは言えないが、それぞれの力を存分に発揮して、ウァラクを追い込み、


「クソぉぉぉ! 俺様がこんなところで……。アイワズボーン‼‼‼‼‼」


 ドカーンッ!!!


 大きな爆発とともにウァラクが消滅。

 初めての三人での勝利である。

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