第57話エピローグ1
夏休みに入ったけど、僕は3日程体調不良になった。
空音は僕が病院を退院すると、既に引っ越ししていた。
僕は自分から空音を永遠に拒絶した癖に辛かった。しばらく食事も喉を通らず、臥せっていた。
時々、真白からLi〇eが来るので、それが唯一の気晴らしだった。
真白とのやりとりも空音の事だった。真白は空音と一生会わない事には反対していた。
真白が言うには空音の事を許してあげて欲しい…だった。
違うんだ。僕は自信がないんだ。また、空音を甘やかしてしまうんじゃないか…真白を傷つけてしまうんじゃないかと…全部僕が卑怯なんだ。
真白には本当の事を告げた。僕が卑怯だから空音を拒絶した事を…真白を傷つけたくない事を…空音の為だけじゃない…
4日目にようやく僕は回復してきた。僕はもう一つ、どうしてもやっておきたいことがあった。
真白は僕に想いを伝えてくれた。
突然、壊れた様に言いだして、本人の意思に関係なく。僕は真白の気持ちがわかった。
でも、僕達はなんとなく彼氏彼女の関係になっている。
最初は空音への配慮から始まった仮初の彼氏彼女。でも、僕は彼氏彼女になろうとはっきり伝えていない。
欧米の人はわざわざ彼氏彼女である事を互いに確認する事なんてしない。
僕も真白もそんな感覚だったから、僕は真白に好きとは言ったけど、彼女になって下さいとははっきり言っていない。
でも、僕は真白に彼女になってくださいと伝えたかった。それで、真白をデートに誘った。
気が付くともう夏本番がやって来ていた。鎌倉高校前のまだ綺麗な海の前で真白に気持ちを伝えられたら、いいなと思った。
真白と由比ガ浜から鎌倉高校に向かって134号線沿いにデートした。
真白がお弁当を作ってきてくれて、お弁当を広げて、海を前にして二人で食べる。
「もう、大丈夫なの?」
「ああ、もう大丈夫だよ。十七年分泣いた。そして、僕はこれからやり直すんだ」
「そう…悠馬が決めた事なら、反対はしないけど…」
「ケジメは必要だよ。僕にとっては空音はLikeな存在、でも、真白へのはLoveなんだ」
「わ、私は、ただ、悠馬を励ましたかっただけなのに……。『真白は運命の人、前世から定められた人、永遠に巡り合う人だなんて! だから僕は一生真白を愛していく』だなんて、ゆ、悠馬! 急にいくら何でもサプライズ過ぎる!」
いや、そんな事は言ってないし。ていうかこれから告白しようとしてるのに、僕よりうまい事言うの止めて…
「…真白」
あわあわしている真白の名前を呼んでみる。
真白は目がくるくるとあちこち向いていたが、しばらくして僕を見据えた。
「わ、私、
真白、君は僕の気持ちに気づいてないの? 僕言ったよね? 空音はLike、真白はLoveって…さらって言ってしまったからいけないんだろうか?
僕はとっくに真白の本当の彼氏のつもりだ。
順序が違って、僕が未だ、最初の彼氏彼女になってくださいという告白ができてないだけなんだ。
それとも真白は幼馴染として仮初の彼女の役割をかってくれただけで、本当に僕の事、なんとも思ってないのだろうか? 僕は心配になってきた。
「…僕は真白がずっと僕を見ていてくれた事に心を奪われたんだ」
「わ、私……。ごめん、涙が出ちゃう」
「僕の事、ずっと見ていてくれてありがとう。僕の勘違いじゃないよね? 僕、真白が僕のことなんとも思ってくれてなかったら、ヤダよ」
「そ、そ、そ、そんな、私と悠馬は互いに強く思いあっているから、もう夫婦同然だから、早く結婚しようだなんて、そんな恥ずかしいこと言わないでよ!」
僕より情熱的な事言わないでよ…僕の幼馴染、凄く告白しづらい。もう、単刀直入に言ってしまえ!
「真白、君のことが好きなんだ。だから、結婚して欲しい!」
「……」
真白が突然、固まった。僕のプロポーズ、駄目かな? 真白の妄想の方が素敵な様な気がする。
ていうか、何、僕プロポーズしてんの? 彼氏彼女になってくださいと言おうとしてたのに?
「真白? 聞かせて欲しい。君の返事を?」
「悠馬! 責任とってよね! 私の頭をこんなにぐちゃぐちゃにしたんだから!」
「真白、返事が未だだよ」
真白は目から涙を流していた。そして、小さな声で俯きながら、言った。
「はい……真白を悠馬のお嫁さんにしてください」
「僕はこれからずっと真白だけを見ていく……」
「私もずっと悠馬を見ていく……」
僕は真白の顔に顔を寄せた。綺麗な真白の整った顔、少し、頬が赤くなってる。
僕も多分真っ赤だと思う。そして、レモンのとてもいい香りがしてきた。
真白の香水の香りだ。そして、目の前に真白の顔が近づくと、真白は目を閉じた。
僕は真白の唇にそっと唇を寄せた。桜色の綺麗な真白の唇はとても柔らかった。
真白と何度目かのキス。そう思って、唇を離そうとしたら、
「―――――~~~~ッ!!!!」
真白は僕の口の中に舌を絡ましてきた。舌の感触がとても柔らかくて、突然で、でも僕はたまらず、僕も真白の舌の感触を楽しんだ。真白の口の中の感触をたっぷり楽しんだ。
「へっ、へへへっへへ~」
「もう、真白は急に、びっくりした」
「わ、私、はしたないかな……」
「ううん、とっても美味しいキスだった。ありがとう」
そうだった。真白がクールなのは見た目だけだ。
無表情で、無口だから誰も知らないけど、ホントは情熱的な子だ。
真白の妄想を聞いていて僕にはわかった。
誰も知らない、僕だけが知っている真白。
初めてのキスでもベロチューしてくるような子なんだ。
誰も信じないと思うけど。
「真白…」
僕は真白の名前を呼ぶと、真白の手を握った。
真白も指を絡ましてきて恋人つなぎになった。
僕達、全部順番が違う、最初にいきなり彼氏彼女になって、告白が最後で、告白の時、彼氏彼女の確認じゃなくてプロポーズになっちゃった。
いきなりプロポーズする奴いないだろうな。
「これからもよろしくお願いします」
「私もずっとよろしくお願いします」
こうして、僕達は鎌倉高校前の江ノ電の駅で海をバックに夕日が落ちる中、何度も何度もキスを重ねた。
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