第49話 悠馬の弱点と真白とのひと時

僕は困っていた。英語は得意と思っていたけど、思わぬ弱点があった。


「悠馬先輩? 三単現のSって何ですか?」


「え~と、Sって事は、Superな特別な感じかな? それとも Satisfactionかな?」


「ええっ!? 悠馬様、三単元のSって、動詞の3人称単数の時につくSですよぉ!」


莉子ちゃんが驚いたような声を上げる。三人称? 僕小説家じゃないよね? なんでそんな知識が英語に必要なの?


「…悠馬、悠馬は実践で英語を獲得したのね。普通は文法から行くのよ、日本人は」


「文法?」


僕は英語の勉強で文法なんて考えた事がなかった。

最低限の単語を覚えたら、できるだけ簡単な英語にまとめて話す。

それが英会話を早く学ぶ基本だった。

実際、僕はスラング以外の英語はほとんどネイティブ並みだと思う。

でも、そういえば、帰国してから、中学の頃の文法って習った事がなかった。高校からのは覚えたけど…


「し、信じられません!? 悠馬様が文法がわからないなんてぇ♪」


「陽葵ぁ!? びっくりぃ♪」


「僕にがっかりした? ちょっと、残念なところ、見せちゃったね?」


僕は恥ずかしくて、頭の後ろをかいた。ホント、調子に乗ったらダメだな、反省。


「い、いえ! せ、悠馬様がぁ…外人みたいだなぁて思うと、エッチな気分になっちゃってぇ♪ だめぇ、勉強なんてできない!?」


「莉子もなんか変な汁が出そう!?」


テシッ!?


陽葵ちゃんと莉子ちゃんにチョップを入れておく。僕、ほんとにいいのかな? 

この子達、凄い金持ちのご令嬢なんだよね?


「ゆ、悠馬…♪ わ、私だって、悠馬にチョップをしてもらいたいよう♪ ついでにエロい目でもみられたいよぉ♪」


テシッ!!!


真白にもチョップを入れておく。ヤバい…真白も陽葵ちゃん達もエロ過ぎる、この娘達ってば、何でこんなにエロいの?


……


だが、この日は陽葵ちゃんに貞操を狙われる事もなく、無事過ぎた。


もっとも、前回のボディーガードさん達に薬を盛った事がバレた陽葵ちゃん達は足に20kg位ある鉄球をつなげられていた。


奴隷ですか? …金持ちのやる事はわかんない。お仕置きの仕様が一般人とは異なるらしい。


そんな日々が続いて、いよいよ期末テストがやってきて、嵐のような1週間が過ぎ去った。

さすがに自分たちのテストもあるから、陽葵ちゃんの家庭教師もお休みだ。


そして古典のテストが終わって、無事帰宅する。あとは明日の数学と英語だけだ。

もう、期末テストはあらかた終わったような気がした。


「悠馬? 古典のテストどうだった?」


真白が僕に古典のテストのできを聞いてくる。

当然だ、中学を日本で過ごしていない僕達にとって、古典や漢文はかなりハードルが高い。

必死で勉強して食らいついている。


「いや、日本人としては恥ずかしいけど、なんで昔はあんな変な言葉だったのかな?」


「そりゃ、何百年も何千年も時間が経つと、言葉も変わるわよ。歴史がある日本人に誇りを持たなきゃね」


「それはそうだね。ロシアの人の血が半分の真白に言われると恥ずかしいよ」


僕は真白に外人…ていう言葉、いや、海外の人に外人だなんて言葉は絶対に使わない。

ロシア…ていうか欧米では自国民と違う国の人を違う言葉で…まして外人だなんて言い方は失礼なような気がする。

分けて考える方が不自然なんだ。差別のレベルだと思う。


日本人は意外と欧米の常識がない。キリスト教徒でもないのに教会で結婚式…その上、十字架を掲げるカトリック式なのに何故か牧師さんの前で愛を誓う日本人…牧師さんはプロテスタントだよ。

それにクロスのアイテムを身に着けて西欧を旅したり…日本人だと誰も突っ込まないと思うけど、それはキリスト教徒への冒涜にあたる。

西欧ではキリスト教徒以外の人は決して身に着けない。場所によっては命に係わる。

そもそもお洒落アイテムじゃないよ。


「ねえ、悠馬ぁ~♪」


「どうしたの? 真白?」


何故か真白が急に甘えた声で言ってくる。

真白は普段クールなんだけど、二人っきりの時は時々甘えた猫のような声で、僕に話しかけてくる。

壊れて妄想をしている時の真白も可愛いけど、ストレートに甘えてくる真白はもっと可愛い。


「テスト頑張ったご褒美にぎゅーとして♪ お願い♪」


ああ、真白のこの表情が…エッチ。


僕は欲望に屈した。


「うん、頑張ったご褒美にぎゅーとしてあげる♪ ほらおいで♪」


僕も調子にのってしまう。二人でベンチに座って…せっかくだから長い間ぎゅっとしたいよね? 

だからベンチに座った方がいいよね?


さあ、真白ぎゅっと、おお!?


僕より先に真白の方から抱き着いてきて、ぎゅーとされてしまった。


「テスト頑張ったご褒美……ちょうだい……?


ん……ゆ、悠馬……ちゅ、んん……」


真白にキスをせがまれてしまった。校庭で人気はいないと言っても恥ずかしい…でも、人がいても避けられないよね? 抗しきれないよね?


「クスり、悠馬からキスしてくれた……♪ えへへ~……♪」


「びっくりしたよ、ここは日本だよ? 我慢できなかったけど…」


真白と二人で抱き合っていると、


『わぁ~、例の帰国子女のバカップルだわぁ♪』


『やっぱり中身が外人なんだねぇ♪』


通りすがりの同級生にからかわれる。さすがに恥ずかしい。ちょっと惜しいけど、ぎゅーとを止めようかなと思っていたけど…


真白はそのまま寝ちゃった…


僕達はそのまま1時間位抱き合った。真白を起こしたくないもん。寝顔が可愛いんだもん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る