第41話 悠馬、陽葵ちゃんに襲われる
「んんっ……♪ はぁぁあ……っ……♪
「だめぇ……♪ そんなことされたら、勉強どころじゃなくなっちゃうぅ……♪」
陽葵ちゃんと莉子ちゃんは何故か自分の身体を抱きながら、ゾクゾクと身体を震わせて椅子から床に倒れ込む。
「あ、あの遊んでないで、ちゃんと勉強してよ。僕、こんなに真面目に教えているのにちゃんと勉強してくれないと、やりがいがないよ」
「ああっ! もうそんな凄いのだめれす!」
「やぁん~♪ 先輩~もっとぉ~♪ もっとぉ~♪」
なんか誤解されそうな発言が多い。真白と海老名は何故か陽葵ちゃん家の家の中にあるエステのサービスを受けている。どんな家だよ、ここ…豪邸なんてものじゃない…ここ、本当に横浜なの?
僕達は分担して勉強を教える事になった。真白は社会全般と理科系、海老名は国語と歴史担当だ。国語や古典は僕らも苦手だ。海老名はその点、国語や古典も得意だった。
そして、僕は数学や英語を教える事になった。真白も海老名も数学は苦手意識をもっているらしい。
今、僕が二人に教えているのは英語だ。どうも、僕の英語の発音に悶えているらしい。
「せ、先輩の凄すぎます!」
「そうです。まるで外人みたい!」
ますますヤバい発言が出てきた。なんか僕の周りってエロい発言する女の子が多いな。海老名が筆頭だけど、最近真白も妄想を暴露する際にエロい妄想を言っちゃう。
「僕、ロシアのインターナショナルスクールに3年間いたんだ。英語しゃべれないと友達もできないし、勉強だって0点取るしかないんだ。だから、僕、必死で勉強したよ。日本語で勉強できる事って、とてもありがたい事なんだよ。中には母国が政情不安で、やむなくロシアに来た人達だっていたんだよ。だから真面目にやって、お願い」
僕はロシアにいた時の事を話した。僕が勉強を頑張る理由。勉強を日本語で受けられる事がありがたいだけじゃない。海外には勉強どころじゃない国の人もいる。僕の友人にはパキスタンの子がいた。彼はアフガニスタンに近い場所に住んでいたけど…強盗、スリ、殺人…そしてテロ…彼の一家は裕福だったからロシアに移住できたけど、大半の人が今も信じがたく治安の悪い場所に住んでいる…彼の友人は5人も亡くなっているそうだ。
勉強ができる事って、とっても幸せな事なんだ。なら、僕は必至に勉強する。
とはいうものの、厳しい事だけを言っていても、この子達には彼の声は届かないだろう、直接彼に会ったわけじゃないもんね。
「かたい事行っちゃったけど、陽葵ちゃん達も少しずつ勉強すれば、きっといい点数とれるよ」
「ほ、ほんとですか? 陽葵なんかが!?」
「まさか、陽葵様ごときがぁ?」
「ちょっと、莉子!! 失礼でしょ!!」
例によって、また取っ組み合いの喧嘩が始まる。はは、口は悪いけど、この二人はホント仲がいいんだな。
しかし、突然二人がキラリンと目を光らせると、莉子が部屋の扉を閉めて、鍵をかけた。家の中とは言え、令嬢の私室に男の子の僕がいるのである。ドアは半分開けたままで、鍵をかける筈もない。当然の措置だ。部屋の外には彼女達のボディーガードがいる。
「あ、あの陽葵ちゃん? これはどういう事?」
「今はちょうど、PM6:00です。ボディーガードの交代の時間です!」
「そうです。いつもちょうど5分程空白の時間ができるのです!」
えっと…この子達、意外と頭いい。悪知恵の方だけど…
「そうです。だから、悠馬様にささっと手籠めにして頂いて…」
「えっと…だから僕はそんな事はしないから…」
「大丈夫です。悠馬様はただ黙ってじっとしていて下さい。初めてをこんな形で終えるのは心残りですが、致し方ありません。悠馬様はただ天井でも眺めてシミの数でも数えていて下さい。大丈夫! 痛くしませんし、すぐに終わりますから!」
「いや、だからそんな事したら、僕が社会的に死ぬから!」
ホント、ボディーガード交代の僅か5分の隙をついて僕の貞操を狙うなんて、なんて子達だ。
「莉子、お願いしますわ!」
「お任せ下さい。お嬢様!」
「黙って、やられるつもりはないよ!」
宣言するが、相手は女の子だ。荒事はまずい、しかも莉子ちゃんは合気道の構えを見せた。
「私をただの馬鹿の侍女と思っていたのが、悠馬様の敗因ですわ!」
「それはどうかな!」
いや、この子達馬鹿じゃないよ。素は普通以上だと思う。話してみると意外と頭の回転は速い。それに僕はこの子達が勉強ができない理由に察しがついてきた。
しかし、今はとりあえず莉子ちゃんをやんわり何とかしないと。
「行きなさい! 莉子、悠馬様を羽交い絞めにして動けないようになさい!」
「はい、お嬢様、お任せ下さい。私が悠馬様をがっちり押さえつけておきます! その間に!」
「頼んだわよぉ! 莉子♪」
陽葵ちゃんはそういうと恥じらいながら、自らのスカートの中のパンツをずりおろしてしまった。膝位まで…こんなところに踏み込まれたら、僕、社会的に死ぬよね?
陽葵ちゃんに気を取られている隙に莉子ちゃんが仕掛けてきた! しまった! だけど!
「い、いだい゛……ちぐしょう、ゆ、悠馬様ぁっ! あぐっ、いだい゛よぉ……」
莉子ちゃんの動きは悪く、あっさり手を後ろ手に絞り上げる事が出来た。
「や、やめて、やだ、やめ――――あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
僕、Sじゃないけど、ちょっと気持ちいいかも、莉子ちゃん、可愛い。少しだけ僕の心に 嗜虐心が宿る。
「これはどう!」
「あぐっ、いだ”い、いだ”い、いだ”い、よぉぉおおおおお!」
「莉子ちゃん、僕に挑むには修行が足らなかったね?」
「り、莉子!? なんでぇ!? さすがの悠馬様も隙をつけば大丈夫って、大見得を切っていたのに!」
「だって、流石の悠馬様も、女の子が下着を下した瞬間を襲えば大丈夫と思ったし、莉子、合気道の修行サボっていたから、未だに初段も取れてなくて!!」
えっと、ズル賢いけど、基本スペックが低すぎるという事?
「どうして、あなたが侍女の採用基準を満たしていないかを問い詰める前に、悠馬様はこんなに恥ずかしい攻めをしても、全然動じないではないですか? 莉子がわたくしの美貌とプロポーションなら一発ですって言うから!!」
「陽葵様! 落ち着いて下さい。確かに陽葵様は容姿だけでなく、プロポーションにも極振りの美少女です。しかし、陽葵様は英語のABCを最後まで言えないような残念少女なのです。ちなみにアンナはスタイルだけでなく、頭脳も優秀です!!」
「ABCを最後まで言えないのは莉子も同じでしょう? わたくし、こんな、はしたない事を! あなたが必ずうまくいくというから頑張ったのに…莉子が簡単に落ちますって自信満々で言うからなのに! これじゃ、わたくしが痴女みたいではないですか!!」
「残念です! 私の計画は完璧だったのですが…予定外に陽葵様の残念ぶりなのがわかってしまって、流石の悠馬様でも無理なのかと…普通この状態なら殿方はやられたフリして陽葵様を楽しんでしまう筈ですわ…」
「何てこと言うのよー 何てこと言うのよー! ていうか、これぇ! 全部莉子のせいよねぇ!!」
僕が莉子ちゃんの手を緩めてあげると、二人は喧嘩をし始めた。
「どうしてくれるのよぉー、どうしてくれるのよぉー、わたくし、悠馬様がお嫁にもらってくれなかったら、今度こそ、どっかのじじいに嫁がされてしまう!!!」
「大丈夫です。二人で襲いましょう。悠馬様を! こう見えても莉子も容姿とスタイルには自信があります。制服を脱いだ私達二人に襲われたら、流石の悠馬様も抗しきれない筈です!」
僕はギクリとした。二人は喧嘩を止めると、ヤバい目つきで僕を見据えた。僕は後ずさったけど、二人が僕にとびかかってくる。けど、
「そこまでよ、二人とも!」
「それと陽葵ちゃんは早くパンツを上げてね…」
いいタイミングで真白と海老名が帰ってきた。僕の貞操が危なかった。
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