第39話 新しい幼馴染と新しい依頼
今日も真白も海老名も風紀委員の仕事で少し遅くなる。昨日はあの残念なお金持ちの令嬢を残して部室を後にした後、真白達とそのまま帰った。例の令嬢を撒くためだ。
そして、今日も一人で部活する。風紀委員クラブの仕事は生徒からの依頼をこなす事だけど、内容はレポートにまとめて凛姉に提出する必要があった。それで今日は僕の担当。
コンコン
とドアをノックする音が聞こえ、どうぞと言う前にドアが開かれた。
「げっ!?」
「ゆ、悠馬様!!」
「悠馬様、何故逃げたんですか!!」
訪問者は昨日僕がまいたこの学園の有名人で、かなり頭のねじが飛んだ令嬢とその侍女だ。
しまった。昨日は完全にまいたけど、また今日も捕まってしまった!
「その、僕も忙しくて、入れ違いで帰宅してしまったんです。陽葵ちゃん!」
「まぁ、そうでしたか!? 陽葵、嫌われちゃったのかと心配になりましてよ」
いや、別に陽葵さんは嫌いじゃないけど、いきなり押しかけ女房は遠慮願いたい。だって、僕には真白がいるんだもん。
「それはそうと、どうしたんですか? お付き合いはお断りしたつもりですよ?」
ホントは完全にお断りした訳じゃないけど、どさくさに紛れてお断りしていこう。
「悠馬様がわたくしのことをだいすきなのはわかっていまふが……はぅ……♪」
「陽葵様、自分で言っておいて恥ずかしがらないでください。大丈夫です。陽葵様と悠馬様は相思相愛ですので、何も心配する事はありません。それより練習通り言うのですよ」
「い、一体、何を?」
何故か僕と陽葵さんが相思相愛になっているという妄想に強い突っ込みをいれたい衝動に駆られるが、どうも、二人は何か重要な案件をもってきたように見える。
「悠馬様、わたくしにお勉強を教えて下さい。そして、ついでにわたくしを手込めにしてください!!」
「えっと、先ずは脳に直接チョップ入れた方がいいのかな?」
この子の脳みそは一体どうなっているのだろうか? 多分、手込めになんてしたら、この子のお父さんに社会的に抹殺どころか、文字通り抹殺されそうな気がする。
「悠馬様、こまりまふ。陽葵、そんなに真剣な顔をされたら、照れてしまいますョ」
「いや、君、一体何言ってんの? いくら女の子でも怒るよ!!」
僕が怒ると、二人共、びくっとすると、泣き出した。
「え~ん。悠馬様が怒ったぁ♪」
「悠馬様が怖いよおぉ♪」
「ちょっと、泣かないでよ!」
この二人、やりにくいな。
「えっと、悠馬、これは一体どういう事なの? 何か、手込めにするとか、しないとか…」
「そうよ、悠馬、あたし達に隠れて何やってるの?」
ややこしいタイミングで真白と海老名の二人が来てしまった。
僕はことの次第を説明した。突然求婚されて、勉強を教えろと言われて困っていると言う感じだ。
「陽葵ちゃんの求婚は置いて置いて、突然勉強を教えて欲しいという理由を聞こうよ」
海老名が二人から仔細を聞こうとすると、いつの間にか黙りこんでいた真白が壊れだした。
「ゆ、悠馬が陽葵ちゃんを、て、手込めに!? 真白だって、未だなのに、ズルい!!」
そこじゃないよね? 真白…
「い、いや、僕には身に覚えがないから…」
「真白、騙されないわ♪。真白は悠馬の彼女なのよぉ! だから、今すぐ真白を手込めにしてください♪ そうすれば信用できます!!」
「えいっ!」
僕は真白の頭にチョップを入れておいた。
「えへへ、悠馬にチョップされちゃった。これで二人の距離は0に、今日の夜にはもう0どころか!! ああ、いけないわ、悠馬! そんなに求められたら、壊れちゃいまふ……♪」
どうもチョップが足らないようなので、もう一発入れると、本気で痛かったのか、真白が頭を押さえてしゃがみ込む。
「それで、一体どういう事ですか? 説明してください、陽葵さん?」
「実はお父様がわたくしの婚約者として、どこかのジジイの様な資産家との縁談を進めてしまいまして、それで、その、わたくしが既に悠馬様に手込めにされてしまっているという事実をお父様の前で、言って、い、痛い!?」
思わずチョップが出てしまった。僕はつい、相手が有力者の御令嬢だと言う事を忘れて、チョップを入れてしまった。だって、勝手に僕を強姦魔みたいに言うんだもん。
「陽葵様いいなぁ。莉子もチョップされたい…」
もう、この二人はやりにくい。
「悠馬、この二人を助けましょう。ちょっと可哀想だし、風紀委員クラブへの正式な依頼だし」
「その通りよ、悠馬。この二人が可哀想よ」
ええっと、真白も海老名もこの二人の味方するの?
「おねがいしまふ!」
「お、お願いします。どうか陽葵様の為に!!」
いきなり陽葵さんと莉子さんが土下座した。お嬢様の土下座って聞いた事も見た事もないな。
「わ、わかったよ。陽葵さんの言う通りにします」
二人はぱあ~…と笑顔になると、
「と、とりあえず、もう一回チョップをくらさい!」
「り、莉子にも、莉子はまだ一度もしてもらっていなくて!」
僕は二人に軽いチョップを入れると、真白が僕を上目遣いで見る。海老名は視線を逸らした。
「も、もしかして、真白? チョップして欲しいの?」
「うん、悠馬、チョップください♪」
「……」
真白にチョップを入れると、
「悠馬が、チョップをぉ! えっ! えっ? お詫びに今日は僕と一緒に夜を過ごそうだなんて! 悠馬の部屋で二人っきりだなんて! ああっ! 今日の夜、悠馬に迫られて、抱きしめられて、『今夜真白は僕のもの』だなんて言われて、良くわからない成分を流し込まれて、天国にいっちゃうのかしら! 駄目よ、未だ早すぎるわ! でも、悠馬が望むなら! お父様、お母様、私、今日いよいよ大人の階段を上ります!」
「あたしは別に、チョ、チョップになんて…興味ないから」
そう言った海老名の目には涙が溜まって、僕はハッとさせられてしまった。
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