第35話 僕は初めて真白とキスをする
カラオケが終わった後、川崎君と日吉さんはデートに行ってしまった。幸いまだ午前中。
何か、別に僕達が何もしなくても、自然にヨリが戻ったんじゃないかと思えた。
僕、残念な処、見せ損じゃない? と、思っていると、
「悠馬、今日はありがとう。お前のお陰で上手く行った」
藤沢が何故か頭を下げてきた。
「藤沢が頭を下げる事じゃないよ」
いや、誰も頭を下げる必要はないと思うよ。
「まあ、そんな訳で、お詫びにこれをあげるよ、受け取ってくれ」
それは横浜駅の近くの小さな遊園地の無料ご招待券だった。もちろん、二人分。
「いいの? これ? 真白と行ってこいという事だよね?」
「まあ、そんな処だ、これ位しないと悪いと思ってな。幸い、これは、たまたま親父からもらったんだ」
「そっか、じゃ、遠慮なく!」
「ありがとう! 藤沢君!!」
僕達は藤沢から遊園地の券をもらって、満面の笑みだ。
「ええっ!? なんで二人分だけなのぉ! ここは三人分でしょ!」
海老名が抗議の声をあげるけど、海老名はよく真白の前で堂々と言えるね?
僕達はブレイクすると、横浜駅まで向かった。そして遊園地を楽しんだ。
とても楽しくて、あっという間に時間が過ぎた。そして、
「「ねえ、観覧車乗らない!?」」
二人で同時に観覧車に乗りたいと言った。ちょうど夕暮れ時で、きっと夕焼けを見ながら観覧車のてっぺんまで行けそうだ。僕も乗りたいけど、ハッとした。そして僕は少し緊張した。だって、狭い密室に二人っきりだよ! こ、これ、キ、キスのチャンスだよ! 藤沢! ありがとう! あと、僕、頑張れぇ!
観覧車に乗ると、二人ではしゃいだ。意外と上下感覚がおかしくなって、真白が怖がって、僕の隣に来てしまって、僕に抱き着いてくる。
「こ、怖いよぉ~…悠馬ぁ♪」
ああ、このあざと可愛いのがたまらないです~♪
「大丈夫だよ真白、僕が隣にいるよ、安心して♪」
「うん、ありがとう♪」
二人共、声が弾む。すると真白が何かを鞄から出した。
「ねえ、チョコ食べない?」
「う、うん、頂戴?」
手を差し出す僕、でも、真白は僕の想像の斜め上を行く提案をして来た。
「恋人同士らしく口移しで食べさせあおうよ♪」
真白はチョコを口にくわえると、
「ん……♪」
顔を上に上げて、目を閉じて、キス待ちみたいになる。隣にいるから、可愛い顔が目の前にある。僕はごくりの唾を呑みこむと、真白が加えているチョコをちょこっとくわえた。
「―――――~~~~ッ!!!!」
真白が僕の唇に唇を押し付けてきちゃった。忘れてた、真白はロシア人の血が混じっていて、ロシアに2年もいた。僕はヘタレだけど、真白は結構グイグイくるタイプだった! 真白の脳内妄想では既に僕達は結ばれていて、婚約済、結婚済、初体験済、赤ちゃんを何人つくるかを検討中だった!
「ゆ、悠馬、ん……♪ んん、ぢゅ……ん、うむ、れろ…♪」
初めてのキスはものすごいベロチューだった。チョコまみれで、初めてのキスはチョコの味。
真白は唇を離すと、ペロリと唇を舐めると、
「悠馬の口、チョコまみれよ。わたしが綺麗にしてあげるね♪」
「…う、うん、お願い」
てっきりハンカチか何かで拭ってくれると思った、でも、
「―――――!!!!」
真白は想像以上の事をして来た。ハンカチじゃ無くて、唇と舌でチョコを舐めとってくれる。
「ん、れろ…ちゅっ…ん、れろ、れる…♪」
いや、ま、真白? いいのこんな事して?
「ちゅ、ちゅっ……♪ れろ、んっ…は、んっ…ぢゅっ…♪」
…真白はもの凄いエロい顔してる。頬を赤く染めて、耳真っ赤。
「んー、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、んむぎゅ~っ♪」
僕はつい、真白の腰に両手をそっと添えた。
「う、うん……♪ だめだよ、悠馬…♪」
普段クールな雰囲気だけに、このギャップがヤバいなぁ。
でも、真白はこれ以上は駄目よ、というサインを送ってきた。大丈夫です。十分エロ過ぎます。というか、ヘタレな僕は、十分すぎて消化しきれません。
「…ま、真白、だ、大好き」
僕は一生懸命真白の気持ちに応えようと必死で考えた自分の気持ちを伝える。
真白は僕の肩に頭をのせて来て、小さな笑い声を漏らす。
「時々私を差し置いて海老名さんにデレデレしている罰だよ…私だけを見て…海老名さんへのチョップが私より多かったよ。だからこれはチョップの足らない分だよ。だからこれくらいは真白を味わってもらうんだよ」
肩の上の真白は、鈴を転がすような声で囁く。
「…ふふっ♪」
甘えるような声で小さく笑い、そっと僕の腕に両腕を絡めてくる。絡めた腕にぎゅっと力をいれて、どこか張り詰めたような声で僕に囁く。
「欲しいものがある女ってえげつないのよ。私だって、海老名さんだって…」
…海老名、そうだ、僕は何処か今の状態を失念していた。何処かこのままでいいかな? と思っている処があったけど、僕は海老名との事もキチンとしなきゃ…真白も海老名も傷つけたくない。海老名にもはっきり釘を刺しておかないと…辛いな…正直、好かれて嬉しいけど…でも中途半端になると、もっと二人を傷つける。
観覧車の一番頂上で、僕は真白にもう一度、今度は僕の方から口づけをした。
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