第29話 悠馬、人助けの為に戦う
「大和! 行くよ!!」
「ああ、わかってる、悠馬と友達だと、こういうのばっかりだな」
「ぼ、僕も行くよ!」
大和は当然として、三浦君は荒事大丈夫かな? 僕は正義感が強いので、こういうのほおっておけない。大和は僕がよく巻き込むから慣れている。まあ、ほとんど空音が原因だったけど…
「川崎君、綾瀬君、助けにきたよ!」
「大丈夫か、川崎、綾瀬?」
僕と大和が川崎君と綾瀬君に声をかけたけど、
「なんだよ。悠馬と大和か、陰キャじゃ役に立たないから、あっちへ行けよ。こんな奴ら、俺達で簡単に何とかするぜぇ!」
「そうだ、お前らみたいな根暗に助けてもらう程弱っちくねぇ! 余計なお世話だぁ!」
どうも、二人は僕達の協力を拒んでいるみたいだ。この二人は割とクラスの中心人物で最近は藤堂とつるんでいる事が多かったな。
「どうする?」
大和が僕に聞く、ここは当然…僕は無言で頷いた。大和も頷く、ここはツーとカーだ。
僕達は川崎君と綾瀬君ではどうしようもないと思う。だって、絡んだヤツらの筋肉、マジなヤツなんだもん。何かスポーツをやってる、しかも最期の一人は間違いなく…空手、それも極真。拳がつぶれている。
一歩下がって、様子を伺うと、
「へぇ~、折角助けに来てくれたのに、追い返すなんて馬鹿だなぁ」
「ああ、間違いなく、お前らより強そうなのになぁ~」
「なあ、どっちの女にする?」
最期のヤツ、ヤバいな…いるんだ、性根がヤバいヤツって、経験的に発言でわかる。
「お前ら、ふざけんな! 何処の高校だ?」
「そうだ、この辺じゃないだろぉ!」
「何だよ、この辺の高校じゃないと、駄目なのかよ? 横浜のヤツはそんなに偉いのかよ!」
まずい、この流れはまずい!
「何だ、やっぱり県外のヤツかぁ~、道理で田舎くさいと思ったぁ!」
「ははっ、こいつらどうせ埼玉かどっかから来たんだぜぇ、ワザワザ!」
ああ~、禁句を…ここ海だよ、海の無い埼玉の人が来るのも無理ないよね。だって、電車だとアクセスが意外といいんだもん。それなのに、埼玉の人を田舎者扱いなんて…埼玉って結構都会だよ。あっちの人は横浜をたててくれて、横浜をやたらと都会扱いするけど、勘違いしちゃだめだよ。それは半分ノリのお約束のジョークなんだから…
「こいつ、俺達の事をダ埼玉だなんてぇ!」
「許せねぇ! 埼玉を馬鹿にするなぁ!!」
「こ、こ、こ、ころ、ころ、ころ、殺す…」
やっぱり切れた。しかも本当に埼玉の人だ、これ最悪だよ。むしろこっちの方が悪いよ。
「ぐへっ!?」
「あ、あぐぅ」
一瞬だった、僕は二人に呆れて、むしろ痛い目にあえばいいと思ったけど、最期の一人がいきなり川崎と綾瀬を殴った、しかも、一瞬で構えたかと思うと、懐に入り、右の正拳逆突きからスイッチして蹴り。
二人は一瞬で崩れ落ちた。まずいが、ここはむしろ、謝って許してもらったほうがいい。この空手の男ヤバ過ぎる、勝ち負けの問題じゃない、関わりにならない方がいいヤツだ。僕の正義感も犯罪を平気で犯すようなヤツには及ばない。それは警察に任せる。僕の出番じゃない。
「ねえ、それ位で、許してください。それにこれ以上は、お巡りさんとか来ますよ」
僕は言葉を選んで話した。情けない奴だなんて思わないで欲しい。実際、こんなヤバいヤツとは 『We should run away from the bad guys!/こんなヤバいヤツから早く逃げたほうがいい!』、いかん、僕は怒気が強くなると、むこうの思考になる。
「うるせぇ! 俺達の故郷を馬鹿にしたんだぁ! 当然だろぉ!」
「それはすいませんでした。僕のクラスメイトが言った事は僕が謝ります。横浜の人がみんなそんな風に思ってませんよ。埼玉の人って、横浜の人をたててくれているだけでしょ? 横浜の人って、プライド高いから…」『As you know?/それ位誰でもわかるだろう?』。
いけない、心の中で毒が出る。
「嘘つけ! お前ら横浜人の田舎のほうを見下す空気。俺達はいつもバカにされてるんだぞぉ! その癖東京にビビりやがって、お前ら東京のしもべかぁ! 二度と江の島になんて来るかぁ!」
「Too bad. Ah don't come again!/はいはい、それは残念だったね。二度と来るな!」
「な、何だ? 何言ってるんだコイツ?」
僕は横浜を馬鹿にされて切れた。僕はロシアで自分の意見をはっきり持つように教育を受けた。そんなに横浜が嫌いなら、来なきゃいいだろう? 僕は最近抑える事が出来ていた、自己主張を抑える事が出来なかった。
「Anyway, can't you understand what I mean? but I’m guessing that you’re probably not going realize it. Because your brain is the size of worm, oh wait, worms don’t have brains even better!/どうせ僕の言っている事なんて理解できないんだろう? その上、お前はきっと気がつかないだろう? だって、なんでかって? お前の脳みそはミミズサイズだからぁ! ああ、いや、そうだミミズに脳みそなんてなかったねぇ!」
僕は完全に以前のいけない頃の僕に戻っていた。自己主張できないもどかしさ! ずっと我慢してきた。でも、こいつに横浜をくさされて、クラスメイトがのされて、腹がたった。だって、いくらこちらが悪くたって、川崎達を打ちのめしておいて、謝ってさえいるのに、更に横浜を馬鹿にするなんて…僕は完全に理性を失った。
「So yeah, if you ever do that again, I’ll promise you that I’ll shave off all your dried-up nay hair and make a bonfire out of it. And I’ll make sure to buy you some diapers for your body ass. /だからお前がもう一度それを言ったらそのカサカナで嫌な髪を全部そり落として焚火にしてやるっ! そしてお前の顔のケツ顎の為におむつを買っておいてやるよぉ!」
「なんだコイツ! だから横浜のヤツは嫌いなんだぁ! なんだよ? 英語かぁ? ワザワザなんで英語なんだよぉ! ムカつく!」
「Who cares?/だから何?」
僕は理性を失って、かつての悪い僕に戻ってしまっていた。
「Very funny./笑える奴だ」
「ムカつく、こんな感じ悪い奴、絶対嫌われているぜぇ!」
「Mind your own business. /自分のことも考えなよ!」
遂にヤバい極真空手のヤツ、僕に素早く空手の構えを見せると、襲い掛かって来た!
続いて、大和と三浦君にも他の二人が襲い掛かる。ごめん、大和、三浦君!
裸での戦いは柔道には不利だ。空手の方が有利、掴む襟がない、上に服を着ていないからだ。
僕は空手のヤツが逆正拳突きからの蹴りに入るとぎりぎりで正拳突きをかわして、懐に入り、首投げをやった。襟が無くても投げは打てるんだ。僕はロシアでお父さんの友達の人達と、異種格闘戦の練習をやっていた。僕のお父さんは格闘技好きなんだ。だから小学生の頃から柔道を学ばされた。
空手家がバシンと真下に叩きつけられる。投げは重力を味方にする技、見た目より威力は大きい。そしてそのまま寝技に持ち込む。
「ぐ、ぐふぇぇ!! ぎ、ギブっ!」
僕がものの一分で勝利すると、大和と三浦君も勝利を収めていた。幸い空手のヤツ以外格闘技はやっていなかったみたいだ。
「おい! 君達! 何をやっているんだ!」
声が聞こえた。大人だ、多分セーフガードのお兄さん!
「まずいぜ、逃げろ! 覚えてやがれ!」
埼玉の三人は急いで逃げ出した。
声をかけてくれたのはセーフガードのお兄さんだった。幸い、近くで見ていた人が事情を説明してくれて、あの三人が無理やりナンパして来た事、いきなり殴りかかってきた事を証言してくれた。助かった、正当防衛じゃないと、僕らだけ補導されかねない処だった。
「悠馬…それが悠馬の言っていた、悪い頃の悠馬か?」
大和に聞かれて…
「ごめん、素の僕はちょっと、嫌なヤツかもしれない。いきなり川崎君達を殴りつけるし、謝っても許してくれないから、ついむきになってしまって…」
「いや、気持ちはわかるけど、いきなり英語でなんか言い出したのはびっくりしたよ」
「うん、英語なら悪口言ってもわからないと思って、思わず言っちゃった」
「いや、でも凄い発音が本格的だったね? 悠馬ってなんであんなに英語得意なの?」
「ぼ、僕、帰国子女ってヤツなんだ、中学の3年の途中までロシアにいたんだ」
僕は三浦君に自分が帰国子女な事を打ち明けた。彼には説明しておいた方がいいと思えた。
「宗形君(悠馬の事)、大和君、三浦君、ありがとう!」
「ホントにありがとう! それにしても、すごっ……」
日吉さんと綱島さんがお礼を言ってくれた。しかし、
「悠馬、これはどういう事かしら? 何であたし達がいるのにナンパなんてしているのかな?」
「ゆ、悠馬、私、信じているから、そんな はぁ! これはゎ! 優しさだけじゃ、ムリ! とか、おまえはしょせんつなぎだよ、とか、もう疲れた…とか、きっと、僕よりふさわしい人がいるよ、とか言われて、振られてしまうのね! お、お願い、悠馬! 真白を捨てないでぇ!!」
しまった。真白と花蓮が着替えから戻ってきてしまった。
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