第25話 ショッピングモールで水着を買うのぉお?
放課後、風紀委員クラブが始まる。まだ、海老名が来ていないからか、真白は人目をはばかる事なく、妄想全開モードだ。いや、人目は誰もいないのか。
「でも、でも赤ちゃんを作る行為は尊いもの!…たくさんの人がきっと、みな可愛い赤ちゃんを夢見て神聖な気持ちで…でもでも、その快感が癖になってしまって…依存するようになってしまって、きっと何倍もエッチな刺激に肌が敏感になって、何倍もよくなって、ずっとイキっぱなしになってしまって! もうこの世のものとは思えない快楽を経験して! 男の人とも、凄く仲良くなっていくんだわ! いけないわ! いけないわ! そんなの! はぁはぁ!!」
テシッ!!
僕は真白に強めにチョップを入れておいた。
「い、痛いよう! でも、悠馬にチョップされちゃったよぉ♪」
頭にチョップされて悶える真白、ほんと、普段のクールぶりはどこに行った? 真白は僕の目の前だと、普段のクールさを忘れて、デレ続ける。そのギャップは凄く可愛いと思うけど…そもそもこれデレなのか?
ちょっと残念臭が…
そんな時、海老名と凛姉、いや厚木先生がやってきた。
「不純異性交遊はほどほどにしろよ。先生が責任取らされるのは嫌だぞ」
「きぃ! 真白! あたしに黙って、抜けがけはズルいわよ!」
「いや、僕達後ろめたい事何もしていませんから!」
「そうです。先生、私達はただ、赤ちゃん何人作ろうか相談していただけなんです!」
いや、真白、それ一番アウトな話だから!
「まあ、卒業するまでは我慢するんだぞ、悠馬、一時の想いに身を任せるのは…ああ! 私も一時の想いに身を任せたい。彼氏欲しいよぉ。なんで悠馬に彼女がいて、私には彼氏いないんだ? これでも、スタイルだって、容姿だって、少し自信があるのに!」
「凛姉、いや先生…それは内面に問題があるとしか思えないですよ…」
凛姉は教室の隅っこで体育座りを始めて、ぶつぶつ何かを言い出した。
「先生が使い物にならないから、あたしが新しい依頼者を紹介するね。入ってきて詩織」
「う、うん。本当に相談に乗ってくれる上に解決までサポートしてくれるの?」
教室のドアを開けて入ってきたのはクラスメイトの詩織さんだった。僕は彼女を知っていた。彼女はサッカー部のマネージャーだったからだ。以前、少しお世話になった事もある。
詩織は依頼内容を言ってくれた。彼女の依頼は女の子らしく、恋の悩みだった。
「で? 詩織さんは三浦君の事が好きで、一緒に海水浴に誘って彼を悩殺したいと?」
「あわわわわわ! の、悩殺だなんて、ただ、三浦君と最近仲がいいのだけど、彼の気持ちがよくわからなくて…このままだと期末テストの上、夏休みに入ってしまうし、ここで何かイベントが欲しいの!」
まあ、わからないでもない。僕だって、空音に告白した時はドキドキというより、ビクビクだった。高校生にとって、告白なんてそう簡単にできない。三浦君に気持ちがあっても、そう簡単に告白なんてできないよ。三浦君は僕や大和と同じで陰キャなんだ。
「まあ、海水浴であたし達が詩織ちゃんが三浦君の事好きみたいよ…ていう事を吹き込む事はできるわね。それでいい?」
「う、うんお願い! 私、前から気になっていたんだけど、サッカー大会で三浦君が活躍していて、他の女子からも話題になっちゃって、焦っちゃって…」
わかる、わかる、三浦君はびっくりした。元サッカー部の僕やユースの大和の目から見てもいい動きだった。実際2ゴールもあげている。
「じゃあ、悠馬が大和君経由で海に誘えばいいね、大和君と三浦君、仲がいいもんね」
「でも、大和って、海に興味あるのかな? 大和が海に興味があるとは思えない」
「そういえば、最近山登りに興味があるみたいよ。あたし、この間この辺でトリカブトが群生している山ってどこかな? って聞かれたわよ」
うう、ヤバい、大和の僕の暗殺計画は順調に進んでいるようだ。ハッ!Σ(゜ロ゜;)!!:
「大丈夫だよ。海老名も来るっていえば、必ず来るし、事情を話せば、三浦君も誘ってくれるよ」
「なんで、あたしが海に行くと、大和君が必ず来てくれるの?」
海老名は自覚なし? 意外とそんなものなんだね。
僕はクラブ活動を終えると、真白と海老名とで下校した。海老名は駅から家の方向が逆なので、駅でブレイクした。
駅前は混雑していて、真白が迷子になりそうになる。
「真白、僕から離れないで」
僕は真白と人込みで離れないように真白の手をギュッと握って引っ張った。すると、
「えっ? わ、私の事をもう二度と離さないぞって! えっ? 夫婦なら当然じゃないかって! そんな、悠馬、気が早すぎるわ! 私達未だ、婚約もしていないのよ! え、そんな、婚前でも、事実婚があるじゃないかだなんて! 大丈夫、いつでも結婚できるよう、婚姻届けに署名済よ。ええっ!! 家に、か、か、帰ったら、婚姻届けをだそうだなんて…ご、強引すぎます! あ、でも、私、強引な悠馬も好き!!」
頬を薄紅色に染める真白だったが、僕の言った事はほとんど入っていない。脳に同時に複数の捏造機能を有し、かつ並列処理機能も有しているようだ。
しばらく歩くと、人通りは少なくなって来た。真白がどこかの異世界に行っていたけど、僕は真白に置いてけぼりをくらって、寂しい…だからすねた。だから、真白に復讐した。
僕は真白にハグをした。ロシアでは別に普通の挨拶だ。もちろん、僕のはすねたから意地悪でやっている。真白の妄想を邪魔してやる。
「どうしたの? 悠馬? 悠馬らしくないわよ?」
「…別に」
真白のほうこそ、らしくない。突然抱きしめたのに、普通に返された。
「もしかして構って欲しいの?」
「…う、うん」
多分、僕の顔は真っ赤になっていると思う。そんな時に真白は僕の意表をついた。
僕の頬に真白の頬の感触が伝わった。真白が僕を抱きしめて、僕の右頬に一回、左頬に一回、そして、もう一度右頬に…自分の頬を擦り寄せている。
チークキスだ…それも真白は左右二回ずつ頬を寄せてきた。親しい間柄でしかしない、チークキスだ。頬から柔らかい感触と温もり、真白からギュッとしてくる。
真白の胸の感触の破壊力が大変な事になっている。
「今日はありがとう。それと…海用の水着買いたいから…週末一緒に行こぉ♪」
「う、うん、もちろんだよっ………………………………ええっ?」
真白は次々と僕の予想の斜め上を行く…凄い爆弾を投下してきた。
「去年、海に行っていないから、水着のサイズが合わないと思うの、だから…」
「うん、コクコク、水着ね」
そりゃ、海に行くのには水着は必要だよね。それに水着のサイズが去年より合わなくなっているよね? だって、去年より確実に育ってるもんね、うん。さっき確認した。
「水着を買うのを、手伝って欲しいな。やっぱり悠馬の感想を聞きたいな♪」
「み、み、み、水着だよね。うん。じゃあ週末ね」
「うん。お願い♪」
真白と水着を買いにショッピングモールに二人で? これ、凄いドキドキのデートイベントじゃない? 僕はワクワクする内心を見透かされないように必死だった。
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