第17話 幼馴染達の攻防1真白vs海老名

今日は真白ましろとお弁当を食べる日だが、少々難を感じ始めた。いや、男子の殺意の籠った視線が痛い。真白とは隔日でお弁当を食べる事にしたのは、真白とお昼しないで男子の友達を増やそうと思ったからだ。だけど、全く、これっぽっちも、全然友達増えなかった。相変わらず友達は大和やまとだけだった。先日なんか、


「ねえ、三浦君、一緒にお昼食べないか? 大和も一緒なんだよ?」


僕は意を決して大和の友達の三浦君をお昼を誘った。空音に告白する時より緊張した。だけど、


「お前、殺されたいのか? あるいは、死ぬほど罵倒されたいのか?」


「い、いや、なんでそこまで言うの? 僕なんかしたっけ?」


「憧れの真白さんの純潔を奪ったろう? お前なんか死んでしまえ!」


……えええっ! いや、僕、何もしてないよ、キスはおろか、手も繋いでない位だよ。あ! 子供の頃は手を繋いだ事あったかも! でも、真白は口ではグイグイくるけど自分から手を繋いだり、キスをしてきたりはしない。そこまでちょろくはないんだ。あくまで僕の行動待ちなんだ。それにしても、とんでも無い妄想が蔓延しているな。僕はシュンとして、三浦君を諦めた。いや、男の友達をしばらく諦めた方がいいかもしれない。これも全部真白のせいだ。もちろん、真白を嫌いにはなれないけど。


お昼のチャイムが鳴った。僕は自分で真白の席まで行った。いつも真白の方から来させて悪い様な気がしたからだ。


「真白、ご飯行く?」


「うん、ちょっと待って、今ノートの整理を少ししていて、ほんの3分位で終わるわ」


「ああ、じゃ、待っているよ」


そう言って、真白の隣の席を借りて座った。真白の横顔を見る。凄い綺麗で整った顔立ちだ。長い髪もつややかで、とても綺麗な髪だ。みんなが真白に夢中になるのも無理ないな、と思った。ホント、僕、幼馴染偏差値高すぎるな。


「(うん?)」


真白に見とれていると、真白がこちらを振り返って見てきた。ちょっと、目に狂気じみたものを感じるが、何故かアワアワアワしている様にも見える。


「え……そんなに見つめちゃ嫌! そんなに私を見ないで! もう悠馬ったら、もう、そ、そ、そんな、今日は朝まで寝かさないぞ! だなんて、私、は、恥ずかしいわ!」


いつものやつを発症したみたい。それにしても発言がヤバすぎる。既に僕達の関係何処まで脳内で進めているの? 未だ、手も繋いでいないよね? 多分、僕の男子からの怒意が更に殺意に変わったのも、この真白の現実捏造機能のおかげだろう。多分、ほとんどの男子がマジだと思ってるんだ。僕、無実なのに。


そんな事を思っていると、面倒な奴、いや、女の子がやって来た。風紀委員の海老名えびなだ。そして、僕と真白の近くにグイっと顔を寄せてきた。 そして小声で、


「(貴方達、ホントは付き合っていないんでしょ? なら、私もお昼一緒でもいいよね?)」


「(何を言っているの? 花蓮、私と悠馬はもう婚約までしてるんですよ!)」


何時婚約した? 記憶が無い。


「(マジなの? 嘘でしょ? 悠馬君はホントに空音から真白に乗り換えたの?)」


「(人聞きの悪い事言わないでくれよ!)」


僕は猛抗議した。海老名とは言え、そんな風に思われると嫌だ。


「(じゃ、どういう事よ? これは?)」


そ、それは……


「(振ったのは、空音の方よ)」


真白が喋ってしまった。いいのか? そんな簡単に話しても? バレたら空音が攻撃されるかもしれない。身をもって、攻撃されるの辛い事は理解した。正面から言う奴あまりいないけど、ひしひしと色々嫌な眼で見られる。空音にそんな想いはさせたくなかった。


「(やっぱりね。そうだと思った。真白も気がついたでしょ?)」


「(ええ、やっぱりと思った)」


何の話だ? 僕には真白と海老名の話が見えない。


「(悠馬君、真白の虚言癖で困っているのでしょう? あたしが助けてあげる)」


「(助けるって、どうやって?)」


「(お昼はあたしも一緒に食べるわ!)」


「(はあぁ? それ問題解決より問題が増える!)」


「(あたしがいれば、真白も妄想を暴走させづらいと思うわよ)」


いや、思えない、真白の妄想虚言癖は筋金入りだ。それ位で止まるとは思えない。


「(言う通りにしないと、空音の事ばらすわよ。いいの?)」


「(わかった。それは止めて、頼むから、マジで!)」


「(……悠馬)」


真白が物憂げな顔をする。だってしょうがないじゃん。そもそも真白が空音の為に考えた事なんだから、仕方ないじゃん!


「(悠馬君はそれだから駄目なのよ!)」


何故か海老名に駄目出しされた。何故に海老名に駄目出しされているの僕?


「(あっ、でも、二人と一緒だと、僕が殺されそうだから、大和も一緒でいいかな?)」


僕はどさくさに紛れて、大和を巻き込んだ。大和は海老名に惚れている。大和に海老名を持って行ってもらえると、かなり助かる。大和! が・ん・ば・れ・ー☆ 僕の為に!


「(まあ、それなら、承知できるわ。私達は四人でグループ交際をするのね)」


「(何で、大和君が入るのよ!)」


「(大和君入れとかないと悠馬があなたのファンに殺されるわよ)」


「(あたしのファン?)」


「(あなた最近イメチェンしたから、男子に人気急上昇中よ。あなたのファンが悠馬殺すかも)」


あながち間違っていないかもしれない。真白のファンに殺されていないのが不思議な位だから。


「(それは自覚あるわよ。男の子に熱い目を向けられるのが、こんなに気持ちいいことだなんて……それに、上目づかいで頼んだら何でもOKよね? 笑いが止まらないわ!)」


あくどい笑みに歪んで折角可愛い顔が台無しだ。


「(海老名、性格もイメチェンしなよ、マジで)」


無視ですか?


「(でも、そんな事言ったら、あなたの方が悠馬君に被害を与えるでしょう? 悔しいけど、あなたが男子に凄い人気なのは知っているし、人気があるのも当然と思うわ)」


「(私は藤沢君達に頼んで、工作しているの。私が悠馬の幼馴染だった事、多分、今はこの学校では常識よ。それに空音も藤堂君と付き合っているから勘のいい子はわかっていると思うわ)」


「(あたしも工作すれば大丈夫じゃん!)」


「(あなた藤沢君に信頼されているの?)」


「(……ううっうううう)」


僕が殺されないで済んでいるのは真白のおかげだったのか。いや、それでも十分怖いけど。


こうして、僕達四人はお昼を一緒にする事になった。大和、頑張って海老名落とせよな! 僕の為に!


それにしても海老名のあくどさには困ったものだ。どう考えたら、脅しから恋が芽生えると思うのだろう? せっかく可愛くイメチェンできたんだから、性格もイメチェンすればいいのに。あの性格だと、折角の愛らしい容貌が台無しな様な気がする。逆に性格が見た目通りだと、真白や空音並みに人気でるな。


「まあ、でも、思い通りになったからいいか! うひゃははははははははははははっ!!」


海老名が悪役令嬢顔負けのあくどい笑みを浮かべて大声で想いを叫ぶ。


……不治の病にかからないかな、こいつ。(死なないけど、苦しいやつ)それなら同情できる。


「悠馬、あまりあちこちで女の子を誑し込まないでね」


真白に言われた。いや、僕も良くわからないんだ。何でこうなった?

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