第二話 宇宙人は『扉』を捨てろと言った

家から出ない地球人

(1)

 これは、ずいぶん未来の地球のお話。地球の大統領は二代続けて女性であり、今の大統領は前大統領の娘。課題に対して真摯に取り組んだため、全世界の人々から高い支持を得ていた。


 そんな大統領には大きな悩みがあった。解決したくても名案が浮かばないような課題であった。その日も副大統領の男性を呼び出して話し合っていた。


「副大統領、名案は浮かびましたか?」


「いいえ、昨晩も夜通し考えましたが何も浮かびませんでした」


「人々を家から外出させるのが、これほど難しいとは思わなかったわ」


 大統領は腕組みをして悩み始めた。未来の地球では、どの家庭も大きなドーム状の建物に住んでいる。世帯の人数により大きさに差はあるが、小さいものでも野球場ほどの大きさがあった。


「会話は立体表示装置を使えば、実際に会うのと同じように会話ができます」


 副大統領は、これまで何度も繰り返した議論を蒸し返した。


「運動は屋内でもできますしね。食料や必要な物資は外からコンベアーで運ばれてくる。外出する理由なんてありませんわね」


 大統領は自分に言い聞かせるような口調で言った。


「大統領。そもそも、人々をドームから出させる必要がないのではないですか? 運動が不足しているという訳ではありませんし、病気が増えたとの情報も入っておりません」


 散々、議論しても解決策が得られないことに副大統領は苛立っていた。


「いいえ、私はそう思いません。直接、会うからこそ成立するコミュニケーションがあると思うのです。毎日、外出しろとは言いません。しかし、もう少しその機会を増やすべきだと思うのです」


 これは、大統領が就任したときからの信念だった。この考えに賛同をしている人々は多い。しかし、実効性のある政策が打ち出せていなかった。


「部下に良い案がないか相談させます。また、明日」


 副大統領は部屋を出て行き、そのまま、部下がいる部屋に向かった。そして、十名いる部下に検討するように指示を出した。



(2)

 翌日。


「大統領! 朗報です」


 副大統領が、息を切らしながら大統領の部屋に飛び込んできた。そして、手に持っていたチラシを机に叩きつけた。


「何ですか、この紙は?」


「部下が偶然、発見したチラシです。課題解決の糸口になるかと」


 大統領は紙を手に取り目を通した。


<引きこもった人々を外に出させるお手伝いをします。ノンノンノ星人>


 大統領はチラシの見出しを読み上げた。


「ノンノンノ星人について、少々調査を行いました。彼らは、チラシにあるように家に引きこもる人が多い星々の相談に乗り、多くの成功を収めているようです」


 大統領は興味を持って聞いている。これまで地球中の有識者を集めて議論をしてきたが、解決手段をほかの星に求めることは考えもしなかった。


「これは、一度、話しを聞いてみる価値がありそうね。すぐに連絡してちょうだい」


 指示を受けた副大統領は、すぐにノンノンノ星の営業窓口に連絡をした。


「大統領、すぐにこの辺りの営業担当を寄こすとのことです! 明日にでも地球に来られるそうです」

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