第35話 団欒
「美奈ちゃん! この料理美味しいわね!」
「でしょ〜。私もそれなりにできるのよ高橋さん」
「私が家事するまではお姉ちゃんがやってたもんね〜」
「美奈さん、美香ちゃん。今度料理教えてもらってもいいですか?」
「もちろんよ水望ちゃん!!」
現在、高橋ママン含めた計5人での夕飯である。
ほぼ女子会である。
宿題を終えて、丁度起きてきた
スナックで働く美奈、常連の高橋ママン。
思ったより仲良過ぎ問題。
更に、今日は休みである美奈はワインを空けて高橋ママンと飲んでいるため非常に楽しそうである。
というか、高橋と高橋ママンが普通に馴染んでるのがすげぇ……
むしろ俺だけ浮いてませんかね?
浮いてるよね? 邪魔じゃない俺?
俺、ここに居ていいんですかね?
「あ、お兄ちゃん。お代わりいる?」
「……おう」
お茶碗を渡すと台所に向かった美香。
なんかいつもより張り切っているがする。
「いつもはお母さんと2人だったから、みんなでご飯食べるの楽しい」
「合宿の時も楽しそうだったな。高橋」
「吉村は火の番人してたよね。漢っ!!って感じした〜」
「お兄ちゃん料理なんて出来たの?」
帰ってきた美香が怪訝そうな顔をして俺を見てくる。
「焼きそばとかバーベキューは誰でも出来るだろ。火を見てれば焦げないし」
「出来ない人は弱火・中火・強火がそもそもわかんないんだよ?」
「だいたいで出来るようになるもんじゃないのか?」
「吉村、もしかして合宿の時初めてだったの?」
「……そうだが?」
「お肉の焼き加減とか完璧だったよ?」
「そんなもんだろ? たぶん」
焦げないようにするだけだしな。
「……なんか、お兄ちゃんに負けた気がする」
「何に負けたんだよ?」
「だがお兄ちゃん! 私はまだ下っ端。第二第三の
「美香ちゃん、悪者っぽい!」
誰か助けて。
お兄ちゃん着いていけない。
妹の奇行をどうしたらいい?
高橋も助けてくれるどころかノリノリじゃねぇか……
「お兄ちゃん、いつも家でだらけてる割に仕事させたらすぐこなすんだよね〜。無駄に優秀」
「美香、褒めるならちゃんと褒めろ。俺は褒めて伸びるタイプだ」
「お兄ちゃん素敵! だからきっとお皿洗いやってくれると信じてる!!」
「……」
「水望お義姉ちゃん! 水望お義姉ちゃんも一緒に!」
「吉村、お願い!!」
高橋も悪ノリして美香と同じように瞳を潤ませて両の手のひらを握り合わせてお願い、もとい雑務を押し付けようとしてくる。
「……まあ、晩御飯作ってもらってるわけだしな」
「水望お義姉ちゃん、お兄ちゃんはこういうの弱いから覚えといてね!」
「さすが美香ちゃん! 勉強になります!」
……美香、覚えてろよ。
高橋、メガネ越しの上目遣いからの潤んだ目はダメですよ。ずるい。
仕方ないのでそそくさと空いているお皿を回収していく。
「吉村、ウェイターさんみたい」
「単発のバイトでやってたりするからな」
「お兄ちゃん、片付けとか早くて便……頼りになるんですぅ」
「おい美香、便利って言おうとしたよな? 酷くないですかね」
美香ちゃん、お口が悪いでございますわよほんま。
お兄ちゃんそういうの良くないと思うんだよなぁ。
とりあえずお皿を下げて台所の流しに置き、2往復目で残っているつまみ以外の料理を下げて冷蔵庫へ入れた。
薄手のパーカーを着ていたため腕を捲ってお皿洗いを始める。
リビングからはまだ女性陣の楽しげな声が聞こえてくる。
こういう時、仕事をしているととりあえずその場に居なくてもいいという理由ができるからいいよな。
……なんか、どんどん社畜根性が染み付いてる気がする。気の所為だよな。きっとそうだ……
「吉村、ごめんね。わたしも手伝おうか?」
高橋が気にして手伝いに来たが、とくに手伝いが必要な量ではないしキッチンもそこまで広くはない。
「いや、大丈夫だ」
「そっか」
「あ、すまん。腕、捲ってくれないか?」
「うん。いいよ」
お皿洗いの時くらいはパーカーを脱いでいてもよかったのだが、リビングからのクーラーの冷気が少しばかり寒い。
「はい。もう大丈夫」
「ありがとな」
「ううん。こちらこそ」
「あ、イチャイチャしてる〜」
覗いていた美香がスマホ片手にニヤニヤしながら盗撮していた。
「イチャイチャはしてないな」
「じゃあ共同作業だ〜」
「美香、皿洗い終わったらまた宿題をみっちり見てやるからな?」
「すんませんでしたぁ!!」
一体、美香は誰に似たんだろうか。
親父だな。絶対親父。つまり親父許すまじ。
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