第2話 どうしてこうなるのぉおおおおお!!!!!!!

……。



…………。



………………。



なんで、世の中って理不尽なことばかりなんだろ。


布団に潜って3分後。

扉が破壊される音と共に屋根裏部屋に入ってきたのは、広場にいた騎士たち。

わたしは布団ごと騎士に抱えられ、6年ぶりに外に出ることになった。


そして今、布団を羽織った姿で、沢山の村の人たちに見守られながら、広場の中央に立っています。

何、この地獄……いっそ殺して。


「すまない。全ての国民が挑戦することになっているのだ」

「……」

「その、何だ。君みたいな娘に抜けるとは思えないのだが、そういう命令だからな。許せ」


無造作に長く伸ばした白い髪。

不健康なくらいに日焼けをしていない白い肌。

運動をしていないからとても細身な身体。

身長も4年前から全然伸びていない。


誰が見てもか弱そうなひきこもり少女。

そんなわたしを見て、剣が抜けないと思うことは普通だと思うし、私も抜ける気が一切しない。


そんな相手だったとしても、命令に従ってわたしを連れてくるなんて、真面目な騎士さんなんだね。

わたしからしたら迷惑な話なんだけどさ……。


「では、抜いてみてくれ」

「……はい」


剣に目を移す。

十字架のような形。

少しさび付いているけど、所々に金色の装飾が見える。

これが昔、勇者が使っていた伝説の剣なんだ。


昔話に登場する勇者を思い浮かべながら、剣のポンメルに触れてみる。


「ん……あたたかい?」


金属で出来た剣が暖かいはずはないのだけれど、そんな気がした。


「……よしっ」


わたしは剣のグリップを両手で掴み、ゆっくりと引っ張る。


「――っ!!」


すると、剣が白い光を放ち始め、岩がボロボロと崩れていく。


「えっ、え????」


何が起きているのかが分からなかった。


「……抜け……た?」


気が付いた頃には謎の白い光は治まり、新品のように輝く1本の剣が、わたしの手に握られていた。


いやいや、どういう原理なの?

確かにわたしは引っ張ったけど、わたしの力で岩が崩れるはずがない。

それよりも錆びていたはずの剣が綺麗になっているのは一体、どういう……。


この場にいる全ての人間が唖然とする中、1人の騎士は叫んだ。


「こ、国民よ!!喜べ!!今ここに、新たな勇者が誕生したぞぉおおおおお!!」


わたしも叫ぶ。


「どうしてこうなるのぉおおおおお!!!!!!!」

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ひきこもり少女の冒険譚 柚乃原 暦 @YunoKoyo

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