華奈子への告白。梨子の真実。

 君が去った後の僕は、すぐに出会う前の生活リズムに戻り、タイムスケジュールも全く変化がなかった。しかし一日一日を無駄にしないという意識が以前とは大きく変わっていた。

 その中でずっと梨子のことを考えていた。君を想う僕は驚くほど冷静だった。君と過ごした時間はどんなことも刺激的で胸が高鳴った。ずっと一緒にいたら、いつか心臓発作で死を迎えるのではと恐れるくらい僕の脈拍は上昇を継続していた。とりわけ君のテクニックは超絶だった。そのお陰で僕も負けじと腕を磨いた。思い出すだけでイッテしまいそうだ。君との行為を反すうするだけでしばらくオナニーができる。でも直後に虚無感が訪れるのも大いに予想できる。そう考えると一抹の寂しさも込み上げてくる。中学生の僕ならそれが一生続くのではないかと落ち込んでいただろうが、一過性で納まるのは少しは大人になったという証かも知れない。

 気を取り直して真面目なことを考え始めた。

 君が好んで僕の部屋に居候してはいたけれど、両親が、いや華奈子が僕の存在を知らないのはずっと問題だと思っていた。何度も連絡を取ろうとしたが、携帯番号を教えてくれないし、ボク、まめに電話してるから大丈夫だよ、ママもこんな生活慣れっこだしと軽くあしらわれ、その度に君は何かを打ち消すように服従の証だよと言って僕に身体を捧げ続けた。君は僕のことは絶対にママには言わないと、しなくてもいい約束もした。君が何も言わなければ、ずっと華奈子に問い質されるだろう。もしも僕のせいで体調が良くない身体で妊娠でもしていれば、それこそ華奈子の家庭の大問題へと発展する。

 君は最後にママの携帯番号を教えてくれた。頑なに拒んでいたのが嘘のような変心ぶりだった。かけないと約束させて教えたということを冷静に考えれば、暗に連絡することを許したと言える。

 だから僕は意を決した。中学生の時、華奈子の家に乗り込む勇気はなかったけれど曲がりなりにも今は立派な大人だ。大人としてのけじめはきちんと着けなければいけない。

 それでも心の隙に逃げ道はあった。

 もしかしたら梨子にまた会えるかも知れないという『逃げ道』。


 その日の夜、僕は夢を見た。華奈子にふられたあの頃の夢だ。でも夢は思い出をなぞってはいなかった。僕は中学校の屋上で直接華奈子に告白していた。彼女は『お付き合いできません』とはっきり断わったけど、頬が赤らむのが分かった。夢の中の僕は僅かな心の変化を察知して、思いもよらない行動に出た。『これから僕のことを知ってもらうために努力します』と言った。そしてその後再び玉砕するものの、寝覚めは清々しいものだった。

 僕の思い出に残るあの頃の汚点は、全て払拭された。華奈子に気後れする自分は消えている。あとは正々堂々精神誠意、梨子のことを詫びるだけだと心に誓った。


 僕は華奈子に電話を掛けた。はい及川ですがという彼女の声に一瞬たじろいだけれど、間を置かず僕は声を発した。

「華奈子さんですか?冴木と言います。冴木実です。中学校の時同級生だった……」

 少し間があった。思い出せなくても仕方がない。それだけ華奈子の記憶に残ってないのだと考えれば。

「ああ、冴木くんね。何十年振りかしら」

 反応は意外なほど早かった。中学生の時に聞いた、少し濁っているけれど、突き抜けるような明るい声がよみがえる。

「でも、どうしてこの番号知ってるの?」

「それが、君の娘の梨子さんに教えてもらったんだ」

「えっ梨子が?いつ?」

「一週間くらい前に……」

「……そう。それで冴木くんが、なぜ私に連絡を?」

「梨子さんのことで大事な話があるんだ。電話ではなんだから、会ってもらえないかと」

 しばらく華奈子は黙っていた。僕は固唾を飲んだ。

「何だかよく分からないけれど、あの子も何か言ってたから、いいわ、会っても」

「ありがとう」

「でも、ちょっと今は立て込んでるから、後日私の方から連絡させてくれない?」

 僕は迷わず快諾した。謝罪が前提の再会だが、色々な期待が頭を巡った。


 華奈子との再会。梨子との再会。


 電話を切った後、改めて二人の会話を頭の中で反すうした。僕を思い出してくれた時の華奈子の声は、歳を重ねたとはいえ、確かに三十年前の彼女だった。しかしその後続いた会話は、少し疲れているような張りのないトーンだった。


 華奈子から連絡があったのは一週間後だった。梨子の言う通り華奈子は実家から離れた北の街に住んでいた。僕に会うためわざわざ出向いてくれると言うので、僕らは駅で待ち合わせ、近くの喫茶店で話すことにした。

 改札口で待つ僕の前に華奈子はさっそうと現われた。背筋の伸びたた佇まいはあの頃と変わらない。胸を張って歩んできた人生がはっきりと垣間見えた。

「冴木くん?冴木くんなの?久しぶり。ずいぶん髪、やられちゃったね」

 僕はただ苦笑いを浮かべるだけだった。でもいきなり目立つ外見をフランクに突っ込んでくれて、気分が楽になった。華奈子は昔と変わらない目が細くなる顔いっぱいの笑顔で僕を快く迎えてくれた。しわが少し目立つのはご愛敬で全く問題ない。しかし先日の声の張りといい、少し疲れた様子が気になった。

 この歳になっても喫茶店は不慣れだ。

 緊張した面持ちで華奈子を先導して、窓際の椅子が四脚あるテーブルに向かう。窓に近い方に座ると、華奈子は対面する窓に遠い方の椅子に腰掛けた。メニューの一番上にあるコーヒーを注文すると私も同じものをと華奈子は言った。早々に立ち去るウエイトレスを目で追って、僕は少し身を乗り出した。

「電話でも話した君の娘さんの梨子さん、ここ何ヶ月か、実は友達の家を泊まり歩いてたんじゃないんだ」 

「え、どういうこと?」

「ほとんど僕のところで寝泊まりしてた。突然、僕の前に現われて、東野華奈子の娘だって言われて、なぜだか僕に懐いてくれた。それで居付いちゃって。いきなり唐突だけど正直に言うと、肉体関係も持った……」

 華奈子は平然と聞いていた。最後の衝撃的な告白にも眉一つ動かさなかった。ウエイトレスがコーヒーを運んで来る気配を感じ、僕は一旦言葉を切った。華奈子は自分のコーヒーカップを手元に引くと、まるで関心のない話を聞かされているように、無言で砂糖とミルクを流し込んだ。それでも僕は続けた。全ての膿みを必死に絞り出すように、一方的に捲し立てた。

「ごめん、本当に申し訳ない。申し訳ないで済まないのは分かっている。娘さんとのことはお互い合意の上だけど、やっぱり未成年だし、学生だし、いけないことなのは判っていながら付き合っていた。罪の意識を抱えながら付き合い続けてしまった。でもこれだけは信じてほしい。最初は梨子さんの強引さに戸惑ったけど、僕のようなおっさんに一生懸命尽くす健気な彼女を見て、次第に僕の中の梨子さんは大事な人になった。本気で一緒にいたいと思った。華奈子さんが僕のことを許せないなら、好きなだけ殴ってくれ。警察に訴えるなりしても構わない。そうしたら僕は犯罪者として一生罪を償うよ」

 梨子に溺れてしまったのは紛れもない事実だ。彼女と過ごした楽しい過去は決して消えることはない。だからこれからの償いの日々は、それらを頭の中で再映することで耐えて行けると思った。悪い言い方をすればヤリ得だ。本当に反省してるのかと問い詰められれば、返す言葉はない。不謹慎極まりない。だがそれでも犯罪者というレッテルは永遠に残るから、それで勘弁してほしいと、何の信仰心もない神様に都合のいいお願いをした。自分の口から饒舌に零れた言い訳に酔っていたのかも知れない。ただの自己満足で何の詫びにもなっていないと、突き放されてしまえばそれはそれで仕方がないと覚悟した。

 華奈子は終始黙ったまま話を聞いていた。いやもしかしたら全く聞ていなかったのかもしれない。その根拠は予想外の彼女の返事の中にあった。

「梨子はいないの」

 えっいない?

「どこかへ行ったの?」

「ううん、もうこの世にはいないの」

「この世にはいない。死んだ?だって僕は二週間くらい前まで一緒にいたんだよ」

「そんなはずはない。梨子はずっとベッドの上だった」

 

 この世にはいない。

 ずっとベッドの上。


 一体どうなってるんだ?


「梨子が最近冴木くんの名前を良く口にするようになった。と言っても人工呼吸器を装着していたから、もう直接は話せなかったんだけどね。だから冴木くんから連絡をもらった時、何かあると感じたの……」

 その後華奈子は落ち着いた口調でゆっくりと話し始めた。

「梨子は小学五年生の夏、ある病気を発症したの。それは国が指定している難病。運動神経がどんどん死滅して次第に身体が動かなくなる。何も施さないと、最終的には呼吸を司る筋肉の運動神経が機能しなくなって死んでしまう病気なの。完治させる薬はまだこの世には存在しない。五十代以上が多くて十代で発症するのはその中でも珍しいの」

 華奈子はずっと看護師をしていた。彼女の実家近くに住む中学時代の男友達が、遥か昔に報告してくれたのでその進路は知っていた。永年医療に従事しているだけあって、彼女の説明は流暢に進んだ。それが自分の娘でも変わりがないようだ。

「それじゃあ、ずっと?」

「進行性の病気で、動かなくなり始める身体の部位も悪くなる早さも千差万別。初期の段階ではまだ自力で動けるし、進行を抑制する薬もある程度は効果がある。でも次第に行動範囲は限られてきて、中学二年生を迎える頃には一日の大半がベッドの上の生活になった。普通に生活できれば梨子は今、高校二年生。残念だけれど、高校には行けなかった」

「亡くなったのはいつ?」

「一週間前。突然だった」

 でも梨子は東○女学館のセーラー服を着ていた。

「梨子ちゃんは何処かの高校に行きたいって言ってなかった?」

「普段は男の子っぽかったのに、東○女学館の制服がすごく可愛いからもしも動けるようになったらそこに行きたいって、珍しく女の子らしいこと言ってたわ。でもよく調べたら東○女学館は中高一貫で、入学するには中学受験しかなかったの。結局は行けなかったんだけどね」

 僕といた梨子とも一致する。

 なぜ?

 多くの疑問を解き明かすように、華奈子は深い話を始めた。

「あの娘の父親、性は及川だけど、フランス人のハーフだった。だから梨子はクォーターになるの」

 なるほど、確かある女優もクォーターだけれど、顔は整った日本人然としていた。それでもスタイルが日本人離れしていたのは、女優の外見もそう感じていたから合点がいく。

 でも、なぜ話はそこから?

「梨子はパパが大好きだった。でも私は彼と離婚した。旦那は梨子を凄く可愛がっていた。でも本当は、男の子が欲しかったの。梨子の「梨」の字は、可愛らしい子になってとか周りの人に優しさを分け与える人になってほしいとか、そんな意味を込めて付けたんだけど、ヨーロッパ言語圏でRicoは男の子の名前の相性で使われるって後で知った。別れたのは梨子が小学三年生の時。彼は医者で職場結婚だったの。私に仕事を辞めてほしかったみたいだけど、私は仕事を続けた。それにきつい性格だから家庭でも気の休まる場所がなかったみたい。梨子は大泣きした。その後から梨子と私の関係が悪くなった」

 華奈子は一瞬、窓の外に目をやった。

「梨子はいつも私に反抗してた。躾けに厳しくて堅物な私が嫌いだったみたい。早く私から自立したいってずっと言ってた」

 僕といた少女が華奈子の娘なら、母親を疎ましく思っていた印象は全くない。

「私の父は厳格だった。一人っ子だったから凄く心配で私を縛り付けておきたかったのかもしれない。特に異性との付き合いには如実に現われた。『恋愛は大いに歓迎する。でもこそこそはせずきちんと父さんが納得できる人格者を連れて来てから付き合いなさい』って小学生の時から言われてた。だから冴木くんの手紙は父にすればコソコソの象徴で言語道断だったのね。その頃の私は父の言い付けを素直に守ってたからあなたの行動に納得しなかったんだと思う。ごめんなさい、脱線しちゃった。冴木くんにとっては嫌なこと、思い出させちゃったわね」

「いや、そんなこと」

「でも……」

「でも?」

「小学五年生の時、あの子の病気が見つかった。長く生きられる選択肢はあるけど、それは身体の自由が利かないベッドの上。それでも梨子は諦めなかった。奇跡を信じた。インターネットで大人の世界のことをたくさん調べてた」

 華奈子はコーヒーを一口すすると、もう一度窓の外を見た。女子学生が三人、楽しそうに歩くのが見えた。

「このまま何も知らないで死ぬのはイヤ。中学生になったらいっぱい恋して、高校生になったらいっぱいセックスして、そして色んなことをいっぱいしたい」

「小学生が?」

「そう、この病気を知った直後、小学生の梨子がそう言ってた。ベッドの生活になってもそれは続いた。恋愛のこと。ファッションのこと。セックスのこと。早く大人になったら色んなことをいっぱいしたいって口癖のように話していて、将来のために色んなことを調べてた。身体の自由が次第に失われて、思うように出来なくなっても、微かに動く指先でサイドテーブルに置いたパソコンを操作して何とかして一生懸命勉強してた」

 セックスのテクニックも調べてたのかな?

「いかがわしいサイトもたくさん検索していた。『男の子が喜ぶ彼女のセックステクニック』なんていうのもあった。さすがにそれはすぐやめさせたけどね」

 華奈子の話は止まらなかった。彼女もきっと長い間吐き出せなかった様々な想いを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

「私との関係もそれ以前とは一八〇度変化した。私の学生時代の恋愛経験をしきりに聞きたがった。中学生の時、高校生の時、看護師になる為の勉強をしている時。全部話した。自分で言うのも恥ずかしいけど、私は自分に正直に、どんな恋にもまっすぐに向き合った。浮ついた気持ちは一度もなかったと思う。それはさっきも話した厳格な父の影響だった。だから梨子への躾けも厳しくなった。私が看護師の仕事をしていて、長い時間一緒にいられなかったからなおさら。でも本当は自由に育てたかった。親から虐待を受けた子どもが成長して親になって、また自分の子どもを虐待する負のスパイラルに似ていた。自分の身体に染みついた習慣を簡単には拭えなかった。心とは裏腹に厳しく当たる私の態度が、梨子には負担だったのかもしれない。自由に生きたかった梨子はそれが苦痛だったんだと思う。でもその月日が逆に梨子と一緒にいられる多くの時間を齎した。病気になってからいろんな話ができた。それに梨子の反応がとても面白かった。順調に進んだ恋愛にはあまり興味を示さない。告白してふられた時とか逆に告白されたけれど、ふった相手の話とか。ふられた時の悲しかったことふった時の相手に対する自分の感情とか、ぶつけた相手の反応とか、それでママはどう思ったのとか、心の深いところをしきりに質問していた。きっと頭の中で色々な恋愛を想像したかったのかな。そう、冴木くんの話もした。梨子はなぜだか、あなたのことに異常に執着してた。初めて話した後も、何度も冴木くんのこと聞かれたわ。容姿のこととか、性格とか、私との接し方とか。何か覚えてるエピソードはないの?とか。冴木くんには申し訳ないけど、私の記憶にあなたの登場はほんの僅かだった。だから思い出すのが大変だ、そう思っていた。でも梨子に聞かれれば聞かれるだけ、冴木くんの記憶がよみがえってきた。どれも短いシーンなんだけど、たくさん思い出した。不思議ね、私冴木くんのことふったのに、ずっとあなたのこと気にしていたのかな。それを梨子に全部話した。きっと梨子の頭の中の相手は冴木くんだったのかもしれないね」

 そう言って微笑む華奈子の眉は八の字を形作り、涙が零れていた。

「ひと月くらい前から急に体調が悪くなって、それまで安定していた自発呼吸の力が急速に弱まったので、介護していた自宅の部屋から私が務める病院に緊急搬送されたの。先生もどうしてそうなったのか判らない。その後肺炎にかかっていることが分かって一週間くらい意識がなくなったの」

 梨子に変化が見られた頃と一致する。

「心拍数も下がってきて、このままダメかなって思ってたら、突然目を開けたの。最後に何かを訴えたかったのかも知れない。息を引き取る時の梨子の顔がとても穏やかだった。もう声は出ないけれど、口が『あ・り・が・と・う』って動いてた……」

 華奈子の涙は止まらなかった。人目をはばからず感情を露わにする彼女を、僕はただ黙って見ていた。そんな苦労を抱えていた彼女に、冴えない独り身のおっさんがかける言葉なんてあるはずがない。

「そうそう、そしたらね、この前突然冴木くんの夢を見たの。中学生の時の、丸坊主で、小さくて、可愛かった冴木くんが」

 華奈子の表情が何やら楽し気だった。

「夢の中の冴木くんの姿は当時のままだったのに、全然違う人に見えた」

「どういうこと?」

「凄く積極的だった」

 僕が先日見た夢と明らかにシンクロしている。

「放課後、屋上に呼ばれて『好きです。僕と付き合って下さい』っていきなり告白してきたの。それでね『私、冴木くんのこと良く知らないし、そういうことまだ早いと思うから付き合えません』ってきっぱり断わったの」

「やっぱりふられてるんだ」

 ここもシンクロしている。

「でもね、まだあるの。『それじゃあ、これから僕のことを色々知ってもらう為に努力します。そしてもう一度告白します』って。それで私、夢の中の冴木くんに少しキュンとなった。結局私は、好きな人がいて・・・、当時本当にいたから冴木くんは二度目のアタックも玉砕したんだけど、もしも私が失恋してたら夢の中のあなたもいいかなって、目覚めた時に思ったの」

 僕たちはコーヒーのおかわりをウエイトレスに告げた。

「冴木くんが話し出した梨子のこと。私にとっては全く現実離れした作り話だった。あなたと暮らしてたなんて、ベッドの梨子が言うはずないし、言っても意味が分からない。でも出任せを言うために、冴木くんがわざわざ私を呼び出す訳がない。真剣に話し続けるあなたを見て感じた。梨子と冴木くんを繋げる何かが確かにあったと。私は心霊現象とかスピリチュアルな出来事は信じないから、冴木くんの話は全て受け入れ難いけど、こうやって私とあなたが再会したということは、あなたと梨子が何かの縁があって導いてくれたんだと、そのことは素直に受け入れられる。久しぶりに会って、親しくもなんともないのに、冴木くんの顔を見たら、色んな想いが込み上げてきた。頭がそんなだから、冴木くんが身近な親戚のおじさんか何かに感じちゃったのかな。今日あなたに会えて私のこと、梨子のこと、色々聞いてもらえて、なんだか少し気持ちが軽くなった。本当によかった」

 やっぱり僕は苦笑いを浮かべるだけだった。


 次の週末、梨子の仏前を見舞う約束をして二人は別れた。

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