夢のようなひととき。Part-1

 独り暮らしのアパートは、玄関ポーチがそれほど広くない。入口ドアの鍵を開けると目の前に迫る左側の壁のスイッチに素早く手を掛けた。玄関内部と短い廊下を照らす柑子色の照明が灯り、梨子と名乗る少女は狭い玄関で僕の左をすり抜けると、脱いだ靴を跳ね飛ばし、はしゃぎながら先に奥へと駆け込んだ。室内のドアを勢いよく開き、わぁこんなんだと、何かに感心する声が廊下まで響く。室内はごくありふれた間取りだから、思い当たる箇所も浮かばない。やれやれと仕事で疲れた身体を引き摺り居間のドアを閉める。

 ドアを入って右手にはベランダ付きで南向きのリビングが広がり、東の壁を背に置かれた四〇インチの薄型テレビの正面には、幅六〇センチ、奥行き三十五センチのガラステーブルとテレビ画面に正対する長さ一八〇センチのソファがそれぞれ平行に鎮座する。

 入口ドアやや左には、二人しか座れない小さなキッチンテーブルが台所と繋がるカウンターに連動するように置かれ、左手奥台所にある南向きのシステムキッチンからはシンク前のカウンター越しにリビングが見渡せる明るい作りになっている。

 そしてリビングのソファを背に寝室が連なり、その境は三枚引き戸で区切られている。

 辺りを見回す彼女に背を向け僕は上着を脱いだ。リビング南西側隅に置かれたハンガーポールから未使用のハンガーを手に取り上着を被せる。今夜の寝床はどうしたものかとポールの中段に、位置を整えながらハンガーを戻した。しばらく僕は無関心を装う。しかし心の中はニヤけている。今宵夜更けには今まで妄想しても成し得なかった夢のようなひとときが訪れることを密かに期待していた。

 イケナイことと知りながら。


「ねえ、実クン」


 ハッと我に返った。

 背中近くに気配を感じ、心の内を見透かされたのかと、慌てて振り向いた瞬間、僕はいきなり唇を奪われた。

 両手で顔を挟み君は舌を絡める。熱い鼻息が頬をくすぐる。髪の甘い香りが鼻孔を通過し脳を麻痺させる。胸を押し付け、身体を密着させる。唾液が流し込まれる。無意識に喉に流し込む。君が作り出す液体はまるでピーチジュースのような味と香りだった。僕は完全に脱力していた。完全に不意打ちを掛けられた。

 やられてしまった!

 君に、セーラー服少女に、おっさんが手玉に取られている。舌が僕の中を優しく撫で回る。頬の裏、歯茎、歯の裏そして舌。快感は一気に上り詰めた。夢のようなひとときは準備もなく始まった。それは本当に夢のようだ。


「どう?日々疲れてるおじさんとしては久しぶりだったんじゃないの?こんなエグイチュー」

「……」

 僕はソファのある右脇のフローリング床に倒れ込み、直ぐに返事ができなかった。

「あれ、すごく膨らんでるね」

 君は股間の勃起にすぐさま気づいた。更に付け加えるなら既にイッた後だった。見せて見せてとはしゃぎながらスラックスのファスナーを下ろし、忙しく中身を取り出した。

「へえ、結構なモノ持ってるね。それに歳行ってる割りにはショーネンみたいに反応早いね。あれ?実クン、もうシャセーしちゃってるの?ソーローもショーネン並みだね。パンツにもベットリだよ」

「ち、違う、僕はキスにめちゃくちゃ弱いんだ……」

 下半身を晒したまま女子高生に言い訳している自分が情けない。

「ボクがいきなり実クンの弱点突いちゃったわけね。これって何気にスゴイでしょ」

 梨子は腰に両腕を置き、得意げに言い放つ。

「お詫びに舐めてお掃除してあげるよ。そしたら今度は本格的にヤろ」

「や……」

 君の行動は言葉よりも早かった。拒否する隙を与えてはくれない。決して清潔とは言えない、しかも明らかに汚れがこびり付くおっさんの男性器を、君は躊躇なく口に含んだ。一息つく暇も、一日の疲れを癒す入浴タイムも与えてはくれない。しかも驚くほど手際がいい。

「実クンのドーテー、ボクが解消するって言ったでしょ。ボクはもったいぶって焦らすの好きじゃないし、そうされるのもキライなの。だから約束はきっちり素早く守るからね」

 一通り粘液を舐め取った後、君は一度口を開いた。

「せ、せめて風呂に入らせて」

 僕は懇願した。

「ええっ!?、綺麗な身体にして『さあ、始めよう』って、なんか興ざめしない?男の人って、カワイイ子に臭いイチモツ舐めさせるのすごくコーフンするんでしょ?征服欲ってやつ?」

「どこでそんなこと……」

 そう言い放った後、再び君の口内の温もりが股間を優しく包む。絶妙な舌の動きを今度は下半身が味わっている。

「あ、また出ちゃうよ」

「大丈夫、ボクが長続きするようにコントロールするから」

「き、君さあ・・・、そんなことどこで覚えたの?」

 発する言葉は情ないほど悲鳴に近い。

「ナイショ。ねえ、『君』じゃよそよそしいから実クンもリコって呼んでよ」

 僕の質問は軽く受け流されてしまう。

「ねえ!呼んでよっ!」

「う、うん、分かった」

「それじゃあ、『リコ、俺のチ○ポもっと丁寧に舐めろ!』って言って」

「そんなこと・・・」

「ねえ、言って!!」

 根元を強く握られた。

「は、はい・・・。リ、梨子、お、俺のチ○ポもっと丁寧に舐めろ!」

「うん、分かった。これはボクが実クンに服従している証」 

 君は、嬉しそうに再び舐め始めた。

 梨子の奉仕は十分くらい続いた。勃起を長く持続させるのもおっさんにはつらい。間違いなく気持ちはいいけれど。

「そろそろ始めよっか?」

 顔中唾液まみれにした大きな瞳が、僕の顔に迫る。

「う、うん・・・」

 もう、くたくただった。

「じゃあ、脱ぐね」

 君はすっと立ち上がりいきなりスカートを捲った。すらりと伸びた脚の根元に佇むショーツは、なんの飾り気もない清潔感あふれる純白だった。イケイケの君からは想像できない無垢な肌着に僕はなぜか感動した。

「可愛いの、はいてるね」

「ありがと、おじさんはこんなギャップにも萌えるでしょ?」

 そう言うと、何の恥じらいもなく、無造作にショーツを脱ぎ捨てた。

「スカートとソックス脱いじゃう?それともはいたままの方が実クンは欲情するのかな?」

「は、はいたまま・・・」

 素直に答えてしまった。

「フフッ、実クン、やっぱり女子高生とシタい妄想、してたんだね」

 梨子は口に手を当て含み笑いをした。

「はいっ、見て!」

 スカートをたくし上げた君は僕の前に仁王立ちし、無防備な女性器を晒した。

「おい、何を・・・」

 君の行動は予測できない。 

「実クンも女子高生のアソコ、舐めたいでしょ?好きなだけして!」

 女性器を初めて見上げた。滅多に拝めないモノを惜しげもなく差し出されては、やや劣化しているとはいえ、健全な男子が頂戴しない訳にはいかない。僕はまず凝視した。数少ない女性経験の中で十代は初めてだった。過去はみんな永年使い続けた味のある造形ばかり。ピチピチは諦めて世代の近い熟女に走っていたから、それはそれでなかなか良かった。しかし、やはり少女は別格だと、目の前にして改めて変な感慨を深くする。

 丘はやや盛り上がっている。天然なのか陰毛はほとんどなく、素肌に剃りあともない。わずかな産毛が銀色に光る。その中心は綺麗な桃色だ。縦のラインは半開き(いや1/4かな)で中をわずかに覗かせている。透明なぬめりも微かに輝きを見せる。自らの行為で梨子の身体も少なからず臨戦モードのようだ。萎えかけた下半身が再び臨戦態勢を整えた。

「いいの?」

「うん、いいよ。好きなだけ舐めて」

 梨子は立ったまま僕の顔に近づけた。たくし上げたスカートが頭に掛かる。少し蒸れた匂いも甘い香りを含んでいる。僕はラインに沿って舌を下から上にゆっくり這わせ、そして最後に先端を素早く跳ね上げる。

「あっ」

 小さく呻き、一瞬膝が崩れそうに君はよろけた。スカートをたくし上げている腕の力が抜け、目の前にある梨子の潤んだ女性器と僕の顔が密会をしているようにスカートの中に閉じ込められた。蒸れた香りが嗅覚を強く刺激する。あと五秒で意識が遠退いていた。

「ごめん、苦しくなかった?」

 慌ててスカートを引き上げ、覗き込む君の頬は珊瑚色に染まっている。初めて少女らしい恥じらいが見えた(やってることは決し少女らしくはないが……)。

「大丈夫」

 君の股間でこのまま死んでもいいと思った。 

 僕は再び舌を這わせる。中の小さな豆が姿を現わした。舌先をその器官に触れる。梨子の身体か微かに震えた。

「み、実クン、ドーテーなのに、舌使うの、けっこう上手だね。ボク、イッちゃいそう」

 気を良くして調子に乗り、梨子の尻に手を回した。思わず鷲掴みしてみる。君は小さく唸った。大きくはないが張りのある弾力が指先に伝わる。そのまま腕を引いて腰を顔に近づける。視界を全て覆う梨子の女性器は潤いを増し、輝きと粘度を強くしている。僕は一心不乱に舐め続けた。水面に小石を投げる音がして石の数があっという間に増えていった。

「あー、もうだめっ!」

 君の甘い囁きが聴こえた時、出会ってからこれまでの梨子の理不尽な仕打ちに、やっと一矢報いたと思った。


 大人をナメるな!


「もー、ダメって言ってるでしょ!」

 君は両肩を強く突き、僕は床に頭を打った。一瞬動きが止まった僕を見下ろしながら忙しくスカートを脱ぎ捨てる。下半身の上にまたがり、指先でたぎる男性器を掴むと、君は一気に自分の膣内(なか)に埋めた。その動きには淀みも迷いもない。自分の入口と僕の先端の位置を瞬時に把握し、狙いを定め一気に納めた。梨子の一連の動きは、手探りも何もない『ノールック』だった。意識が朦朧としている中で一部始終を見ていた僕は感服せざるを得ない。またやられた。

「ふう~」

 君は大きく息を吐いた。熱い風呂に浸かった瞬間のように、身体を環境になじませていた。感じているのかは分からない。何かを確かめているようにも見えた。膣内壁が埋まる男性器への密着度を増していく。沈めた身体をゆっくり引き上げると、光る陰茎が現われ引きずられて女性器外部が盛り上がった。再びゆっくりと全てを埋めた後、その動きを三度繰り返す。直後、腰をリズミカルに上下させる速度が一気に跳ね上がった。

 胸で揺れる青い大きなリボンが現実離れした世界の欲情を煽る。半分強姦されているような気分で、全ての抑圧が解放された。

「うわあ、実クンのチ○チ○、スゴイね。中でまた大きくなってるみたい」

 君の中にいる僕はとても暖かく、上機嫌だった。

 梨子ははしゃぎながら腰の動きのバリエーションを増やしていく。左右にも腰を振る。

 気づくと君は上半身に何も着けていなかった。小ぶりだが形のいい胸がリズミカルに弾んでいる。梨子が身体を揺らすタイミングを見計らって両手を胸に押し当てた。気付いた君は僕の腕を掴んで自らの胸がしっくり納まる位置に誘導した。強く握ってみる。張りのある弾力を感じ、指先が優しく沈む。揺れに合せて握力に強弱をつけて若々しい肌触りを楽しむ。興奮度に比例して下半身で響く水面に跳ねる水音も大合唱になっている。

 もう限界だと思った瞬間、梨子は一度僕を抜いた。どちらのものか分からない粘液が股間から滴り落ち僕の腹を濡らした。暖かな流れだった。

「ボクのお尻も見て。小ぶりだけれどキュッと締まってるでしょ?」

 梨子は身体の向きを変え、背を向けて再び僕のモノを身体に埋める。

 腰を上下する動きに合わせて尻も前後に振り始めた。尻が後ろに突き出る度に接合部分がアップになり、少女らしく締まった肉付きの若々しい曲線が目の前に強調される。それはまるでいつかどこかで見た日本人には真似できない、洋物ビデオの金髪女優の腰の動きのようだった。

「り、梨子ちゃん、もう出ちゃうよ」

「『ちゃん』って付けないで。リコ!って強く言って!」

 そんなことはどうでもいい。

「梨子ダメだ。もう出る!」

「いいよ、そのまま射精(だ)して!」

 君は腰振りの速度を上げた。

 も、もう……

 その瞬間、君は僕の腰に尻を強く密着させる。まるで一滴も漏らさず受け止めようと。

「あっ」

 梨子は小さく呻いた。それは心地よいけいれんが始まった瞬間だった。君は背中を向けたまま僕の上で身体を丸め余韻に浸っていた。


「実クンすごいね。中でいっぱい出たみたいだよ。ドーテークンはよっぽど溜ってたんだね」

 観たばかりの映画の感想を楽し気に語り始めるように、君は笑顔で振り返り、捲し立てた。

「勃起を長く持続させて射精を我慢すると、多めに出るんだよ」

 もう童貞を否定するのは疲れた。言い訳に信憑性を求める気にもならなかった。でも最初に言うセリフはこれじゃない。

 何も準備をしていなかったこと。

 僕は一瞬で罪悪感に駆られる。

「何もしてないけど、今日は大丈夫なのか?」

「平気平気、昨日生理終わったばっかだから」

 君は軽く右手を振った。

「そんなことより、どう?ボクのセックス。すごいでしょ?ボクのこと、好きになった?」

 君のは大きな瞳を更に見開いて訊ねた。それにしても、それよりって……大事なことじゃないの?

「セックスが上手いのと人を好きになるのとは話が別だよ」

 そう突き放したけれど、明らかに嘘をついていた。君に最初から打ちのめされている自分を隠すのに必死だった。

「ええっ!でも床上手って言葉あるでしょ?あれってセックスうまいから離れられないってコトだから、好きとセックスは関係あると思うけどなあ……」


 何でそんな言葉知ってるの?


「これからもさあ、実クンがシテ欲しいこといっぱいしてあげるよ。だってボクは実クンに服従してるから。ねえ一緒にお風呂はいろ」

 梨子は全くひと息つかせてくれない。何でもするという割に、行動は全部君発信。まるで急いでいるみたいだ。

 アパートのユニットバスは通常大きなサイズは取り付けない。家族向けならまだしも、単身者用はなおさらだ。けれど、僕は独り暮らしでもゆったり入れるよう、あえて大きな浴室の部屋を探した。専門用語で言うと1618というサイズだ。

 とはいえ、大きいサイズの浴室でも二人で入ったら、それだけで湯気が充満するし熱気も籠る。入浴環境は明らかに悪化している。それでも、ボディソープを大量に使い、洗い場で全身泡まみれではしゃぐ君を湯船で眺めていると自然に笑みが零れる。つい二時間程前に出会った少女と既に裸の付き合いをしている自分が不思議だった。ここまでの流れは強引だが違和感がなく進んでしまった。

 君はなぜ突然僕のところへやって来たのだろう。セックス以外は純真無垢な少女の顔を見せる可愛い娘が、人生もピークを過ぎた、父親譲りで背の低い、冴えないおっさんの部屋になぜ転がり込んできたのだろうか?

「流してやろうか?」

 親戚の子でも何でもない少女に、自然にそう口が動いた。君は華奈子の娘だと言うが、それにしたって僕とは縁もゆかりもない、全く赤の他人だ。

「うん」

 君は振り向いて素直な笑顔を見せる。ゆっくり湯船で立ち上がると、梨子は目線の高さに飛び込んできた僕のモノにいち早く反応する。

「実クンのって、素でもけっこう大きいんだね。またヤル?」

 緊張感なくぶら下がるそれを、梨子がおどけて指で弾く。親戚の子だってそんなイタズラはやらない。

「梨子はそのことしか考えられないの?まだ高校生だろ?何勉強してるんだよ」

「えーっ、だってスルの楽しいんだもん」

 覚えたての男子中学生だって羞恥心はある。いくら夢中だからってこんなにははしゃがない。

 シャワーで全身を流した。梨子はヌルヌルが残らないか、ちゃんと触って確かめてと強く要求する。仕方なく背中や腕、脚のヌルつきを確認しながらお湯を当てていると、ちゃんとおマタとかお尻も触ってと僕の手を強引に引っ張った。言われる通り、尻の山や谷間にもそっと手を這わせた。実クン手つきがイヤラシイよ。ボク、違う液出てきてまた濡れちゃうよと、ふくれっ面で笑っている。僕は少しキレ気味に強く擦った。逆に痛いよと君はまた笑った。こんなに疲れる入浴は初めてだった。

 梨子を湯船に浸からせ、入れ替わって僕が身体を洗う。その後もう一度湯船に浸かりたいからと梨子を上がらせた。君は早く出て来てねと声をかけた。洗面所の君も、実クンのバスタオルくさ~いと意味もなくはしゃいでいた。

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