ストーリーはマンガに学ぶ
「小説を書きたければ小説を読め!」と、多くの専門学校の講師は言いますし、小説の書き方を案内している本でも同様のことを言っています。
当然、小説を知らなければ小説は書けません。そういう意味では間違っていませんが、ちょっと説明不足な気もします。
小説を書くためのルールはあります。
・段落の書き出しは1文字分下げる
・セリフは鉤括弧(「 」)を使う
この辺がもっとも基本的なルールですが、これは単なるルールに過ぎません。
サッカーで言うと、
・ボールは手で触らない
・相手のゴールに入れたら1点
といったものに近いでしょうか。
確かに間違っていませんが、ルール説明としては不足しています。
さらに言えば「ボールの上手に蹴る方法」といった部分には全く触れていません。
これを小説に置き換えると「面白い小説を書く方法」にはノータッチなのに似ています。
面白い小説の書き方を教えてくれる本はありません。
面白いストーリーの組み立て方などは、作者自身が頑張るしかないわけです。
脚本術の本には、もう少し具体的なことが書いてありますが、最終的には作者の頑張りに丸投げしている部分があるように思います。
面白い小説を書きたい、と思うのは、プロアマ問わず望んでいることだと思います。
私も面白い小説の書き方は模索中ですが、個人的に心掛けていることがあります。
それは、
「ストーリー作りはマンガに学ぶ」
ということです。
小説とマンガでは表現形式が違います。
小説は基本的に文字だけです。ライトノベルだと挿絵もありますが、元の文章に対しての挿絵なので、メインは文字です。
マンガだと、セリフや効果音は文字ですが、主に画で見せる媒体です。
小説とマンガは、まったく別物のように思いますが、「ストーリーを描く」という面では共通しています。
ですから、ストーリーの作り方はマンガで学ぶこともできる、と考えています。マンガのすべてをそのまま小説に持ち込めるわけではありませんが、それでも学べることは多いと思います。
そもそも、小説とマンガでは発行部数が違います。
2021年、一番売れた小説は宇佐美りんの『推し、燃ゆ』の50万部だそうです。これでも充分すごい数字です。小説は10万部を超えたらベストセラーと言われます。
一方、2021年で一番売れたマンガは『鬼滅の刃』23巻の約5171万部です。
数字だけ見ても、小説とマンガは100倍以上の違いがあります。
売れている作品=面白い作品とするなら、マンガの方が面白いということになります。
さらに言えば、周囲の反応も小説とマンガでは違います。
『鬼滅の刃』の話は、多くの人ができます。ですが、『推し、燃ゆ』の話をできる人は少ないのです。
それは「若者の活字離れ」といったことではなく、単純に「面白いから」ではないでしょうか。面白いものは、やはり売れます。小説に限らず出版不況なんて言われますが、ヒット作は面白いですし、ちゃんと発行部数に反映されます。
『デスノート』を超えるサスペンス小説がいくつあるでしょうか。
『カイジ』を上回る頭脳バトルを扱った小説が何冊あるでしょう。
ただ、マンガが優れていて小説が劣っている、ということではないと思います。
ここからは推測になるのですが、小説が劣っているわけではなく、マンガが高度に進化したのだと思います。表現方法なども急速に発展していき、キャラクター描写もストーリー展開も巧みになっていきました。
試しに最新のマンガと戦後間もない頃のマンガを比べてみると分かります。コマの形も表現方法もまるで違うのがわかると思います。
それに比べて、小説の進化はゆっくりです。まったく変わっていない、というわけではありませんが、変化は少ないのです。
結果として、現代において面白さに差がついてしまったのではないか、と思います。
マンガのほうが優れているなら、マンガのいい部分を吸収すればいいのです。
ストーリー展開の方法やキャラクターの立て方など、参考になる部分は非常に多く、上手に取り込めば小説の上達にもつながる、と思います。
結論としては、小説を書くのに必要なのは「文章の書き方」ではなく「ストーリーの作り方」だと思います。
大抵のマンガは小説よりも面白いため、ストーリー作りの参考書は書店にたくさんあります。
もちろんマンガだけ読んでも小説は書けないので、
「小説を書くならマンガも読め」
というのが正しいアドバイスになるのではないでしょうか。
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