勉強するなら小説以外がいい


◯起承転結って……


 小説の勉強って、すごく難しいような気がします。

 私も最初は見よう見まねで書いてみましたが、なかなかうまくいかず、そのうち「小説の書き方」みたいな本をちょっと読んでみましたが、いまいちピンときませんでした。


 最近、書店にある「小説の書き方」系の本を読んでみましたが、なんとなくフワッとした内容ばかりです。

・起承転結を意識しよう

・プロットを組もう

・最後まで書いてみよう

 みたいなことばっかりで、今まで本当に小説を書いたことない人にとっては役に立つ情報なんでしょうが、ある程度書いている人にとっては「ああ、知ってる」ってことばかりです。


 そこで、同じストーリーを作る媒体であるマンガや脚本の本を読んでみました。

 すると、かなり具体的な創作手法がたくさんありました。


 そもそも、「起承転結」は漢詩の構成法の1つで、

 第一句(起句)で、うたい起こし、

 第二句(承句)で、これを受けて発展させ、

 第三句(転句)で、場面や視点を転じ、

 第四句(結句)で、これらを受けつつ全体を締めくくる。

 というものなんだそうです(参考・goo辞書)。


 のちに、文章やストーリーの構成にも応用されるようになったそうなので、元々はストーリー専門に作られた考え方ではないのです。


 脚本などで用いられる構成方法として「三幕構成」というのがあります。

 第一幕は「設定」で、誰が主人公で、何をするストーリーなのか、主人公の目標などが示されます。主人公が誰なのか把握できないと感情移入できませんし、目標がなければ何をしようとしている話なのか分からないのでストーリーを楽しめません。

 第二幕は「対立と衝突」で、主人公の目標と達成するのを妨害する障害や対立、それらとの衝突が描かれます。目標達成するためにはライバルの存在が必要ですし、障害があれば盛り上がります。

 第三幕は「解決」で、障害や妨害の末に主人公は目標を達成できるのか、といったことが描かれます。


 ドラマなどでも使われていますが、特にハリウッド映画ではこの三幕構成が使われているように思います。

 ただ、三幕構成は基本中の基本らしく、人によっては5段階に分けたり、8段階に分けたり、場合によっては22段階に分けて細かく構成する人もあるようですが、基本の流れは非常に似ています。


 で、ここで疑問なのは、

「なぜ小説の書き方の教える本では、いまだに起承転結を守っているのか」ということです。

 ストーリーを構成する上でもっと良いものがたくさんあるのに、なぜストーリー専用でない構成方法にこだわっているのでしょう。

 もちろん、このあたりは大いなる謎なわけですが、いくつか仮説を立ててみました。


 まず、「ライバルを作りたくないから嘘を言っている」という仮説です。

 現在は小説が売れない時代だと言われています。小説の売り上げを伸ばすには、今まで小説を読まなかった人たちに買ってもらう必要があります。そうすれば読者人口も増えますし、業界全体の利益にもなるでしょう。

 ですが、現在読者人口はあまり増えていないのが現状です。映画化やドラマ化された原作は多少売れはするものの、継続的に買ってくれる読者の獲得には繋がっていません。

 ということは、既存の読者の取り合いになります。新規の読者が増えない以上、取り合いにならざるを得ません。

 もし、めちゃくちゃ面白い小説を書く新人作家が現れて、ベテラン作家が抱えていた読者たちが取られてしまわないように、嘘を言っているんじゃないか、と思いました。

 ただ、この仮説はさすがに無いと思います。

 面白い小説の登場は、新規読者の獲得に繋がります。嘘を教えると言うことは駄作を量産するわけですし、それこそ業界の衰退を加速させるだけです。さすがにそんなバカはいないと思いたいです。


 2つ目の仮説は、「小説は芸術だから」というものです。

 小説、特に文芸作品は芸術だと考えられています。

 今でも小説=芸術という考え方が抜けず、「芸術の本質は簡単に教えられるものではない」という思い込みから、抽象的な紹介だけに留めているのではないか、と考えました。

 これは1つ目の仮説よりも説得力がありそうです。

 しかし、これもちょっと違うかな、と思います。

 純文学ならこの仮説も通用するかもしれませんが、エンタメやラノベなどは三幕構成に近いストーリーになっている作品も多くあります。

 もちろん、彼らは実はストーリーの構成を練って書いているかもしれませんが、あまり公表はしていません。もしかしたら、本能的に面白い構成を作品に反映させているのかもしれません。


◯メソッド化しにくいのか?


 ここまで考えて、私なりの結論が出ました。

 それは

「言語化しにくいのではないか」

 ということです。


 三幕構成は映像作品でよく用いられるもので、三幕構成に当てはまらない小説はいくつもあります。

 ただ、たぶん小説界隈の人は、小説用のストーリー構成を言語化できていないんだと思います。

 だから「三幕構成=俺の小説には当てはまらない=役に立たない」と思っているんじゃないかと。それゆえに、メソッド化して他人に伝えることができません。結果として、無難な起承転結を書いているのではないでしょうか。


 それに、最近はストーリーよりもキャラクターが魅力的な作品の方が受けがいいようですから、ストーリー構成の重要度が下がっているような気がします。

 面白いストーリーや、複雑なトリックを用いたミステリよりも、若手の女優やアイドルが主演できる軽めのミステリが続々ドラマ化しているのを見るに、小説単体で売っていこう、という感じがかなり薄くなっています。


 とはいえ、面白いストーリーに魅力的なキャラが加われば最高ですし、ストーリー構成は学んでおいて損はないかな、と思います。

 書店や図書館に行けば、脚本術の本はかなりの数出ていますから、ストーリー作りに行き詰まっているのなら、それらの本を読んでみるのもいいんじゃないでしょうか。

 国内の脚本術の本はほとんどなく、あっても本当にザックリしたことしか書いてありません。

 海外だとだいたいがハリウッドの脚本術になるのですが、すべての鵜呑みにするのではなく、自分に必要と思うところだけ吸収してしまうのが、一番いい勉強の仕方だと思います。


 ただし、三幕構成といったストーリー構成は、映画や小説のように終わりがある作品に関して使われるものだと思います。

 何話でも続けられるウェブ小説では、既存の構成は通用しないのかもしれません。

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