オススメしない小説の書き方

◯小説を依頼される難しさ


 クラウドソーシングでは、ときどき「小説を書いてください」という募集が出ることがあります。

「お、そんな募集あるならやってみようかな」と思っている人がいたら、決してオススメしません。

 ここからは、あくまで私個人が体験したことです。


 作家としてデビューできていませんが、小説を書くことに関しては、それなりに自信がありました。2000文字の原稿で2000円。文字単価1円なので、クラウドソーシングでは比較的良い方です。

「これならできる」と思い、私はその依頼に応募しました。

 ただ、クライアントも予想外にライターの募集が多かったようで、結局8人のライターが選ばれました。リレー形式で小説を書いていく、ということに決まりました。


 あるサイトでは、小説を書くと読者から「投げ銭」が貰えます。クライアントの考えでは、1話小説を上げれば数千〜数万になると考えたらしく、投稿ペースさえ維持できれば問題なく稼げる、と思っていたようです。


 肝心の中身ですが、クライアントが「これなら売れる!」と思ったストーリーがあり、それをライターに発表しました。

 作品が特定されてしまうため詳しくは書けませんが、一言で言えばエロギャグにアイドル要素を足した感じの作品です。たとえて言うなら、ラブライブ!にエロ要素を足した感じ、と言えば、なんとなくの雰囲気を掴んでもらえるかと思います。


 クライアントとライターの間で、チャットを使ってさまざまなやりとりが交わされましたが、ライター側でも戸惑いがありました。

 とてもではありませんが、人気が出るような作品には思えなかったのです。もちろん、こちらはライターですし小説執筆の経験はありますから、依頼されれば書くことはできますが、人気が出なければ「やっぱり途中でやめましょう」なんてクライアントが言い出しかねません。

 新しい要素のある作品であれば、注目もされるかもしれませんが、それもなんとなくなさそうでした。

 メインとなる女性キャラクターは8人いました。どのキャラも個性的でしたが、魅力的ではありません。至る所に既存のキャラに近い要素があり、常に既視感が漂っています。

 肝心のエロ要素も昭和の少年漫画っぽさがあり、いわゆる「お約束」や「サービス」のような感じが出ています。どうやらエロさえあれば読者はついてくる、と思っているようでしたが、そこまで振り切ったエロでもないため、中途半端な感じに収まっています。


 作品の成功を頑なに信じているクライアントの元、ライターは小説を書き始めました。

 数話をアップロードしていきましたが、思うようにPVも伸びないことにクライアントは焦りました。


 そこで、クライアントはライターを3人にまで削り、新たにテコ入れをしよう、と提案してきました。

「体のどこかにアザがあって、それを見つけるために女の子は裸になるというのはどうだろう」

「そうして集まった仲間は○◯の生まれ変わりで……」

 そんなクライアントの発表に、ライターは案の定不安を覚えました。

 マイナスのテコ入れにしか思えなかったからです。


 プラスのテコ入れは、作品を方向転換させると共に人気を生み出します。

 最初はギャグ漫画だったけど、途中からバトル要素を取り入れたことで人気が爆発的に上がった作品もあります。ドラゴンボールだって、最初はコミカルな冒険モノだったわけです。

 ただし、この場合は苦し紛れのテコ入れになってしまいました。

 頑張りが空回りし、読者だけでなくライターさえも遠ざける結果になりました。


 ライターからは反対の声も上がりましたが、最終的にはクライアントが強行する形で進行しました。

 しかし、当然読者がついてくるわけもなく、数話ほどアップしたものの、ある日何の予告もなくクライアントとの連絡がとれなくなりました。

 私も1話分書きましたが、その報酬もあやふやなままです。

 どうやらライターを変えたのか厳選したのか、さまざまな投稿サイトにアップロードして、完結したみたいですが、思ったほど注目はされていないようです。


 ◯プロとアマの違い


 自分で考えたストーリーを自分で書くなら、おそらくこんなことは起こらなかったでしょう。

 クライアントは「自分は面白いストーリーを考えついたが、小説を書く時間も技術もない。だが、金はある。それなら金を払って他人に書かせよう」と思ったのでしょう。

 自分で思いついたストーリーは、必要以上に面白く思えてしまいますが、第三者の目から見ると大したことない、なんてことはよくあります。

 プロである編集者が言うことなら、もっと説得力もありますし、ちゃんと聞くべきだと思いますが、プロアマ問わず同業者の言うことであれば、耳を傾けてもいいと思います。アマチュアの人が言うことは説得力もありません。


 プロとアマの違いは、やっぱり作品制作に関する知識量の違いです。

 デビューしていないセミプロの人たちでさえ、物語を作る独自のノウハウを持っているはずです。もちろん素人はいきなり作った作品がウケる、ってことも、ないとは言いませんが、ほとんど考えられません。


 クライドソーシングでは、このほかにも小説の依頼がときどきありますが、どれも報酬が安かったり、注文が難しかったりするものばかりです。


 はっきり言って、普通に働いた方が稼げますし、アルバイトの方が割に合います。

 文章力を磨きたいのであれば、小説投稿サイトにアップロードしまくればいいのであって、苦労ばかり多くて大して稼げないライターの仕事は本当にオススメしません。


 だいぶ愚痴っぽくなってしまったので、今回はこのあたりで。

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