ライターという落とし穴
◯簡単そうに見えて……
文章が書けるなら、副業としてライターとして活動すれば、文章力も鍛えられるしお金も稼げる、と思ってはいないでしょうか。
そういう私も、2年ほど前まで細々とではありますが、ライターとして活動してました。
しかし、今は完全に辞めています。
ライターとは、思った以上に稼げない仕事だったからです。
ですが、現にライターとして活躍している人もいますので、全てのライターがこれに当てはまるわけではありませんが、私の場合は大して稼ぐことができませんでした。
私がフリーのライターとして、クラウドソーシングのサービスに登録しました。割とCMなんかも流している大手で、名前を聞いたことある人も多いかもしれません。
クラウドソーシングサービスは、わかりやすく言うとフリーランス版の職業安定所みたいなところです。仕事を依頼したいクライアントがサイトに募集を出します。その募集に対してライターが応募して仕事をして報酬をもらう、といった感じです。
誰もが無料で登録でき、いつでも仕事を始めることができます。
こう聞くと、すごくありがたいサービスに思うかもしれません。
でも、実はかなり大きな落とし穴があります。
日本でアルバイトなどをする場合でも、最低賃金というものが設定されています。金額は地域によって様々ですが、時給で大体800〜1000円前後くらいです。
しかし、クラウドソーシングにおいてはこの最低賃金は適応されません。
そして、実際の報酬もピンキリです。
ライティングの場合、通常は1文字いくらで計算されます。1000文字の記事を書いて1000円もらったら、1文字1円となります。
ライターとして生活するのであれば、文字単価1円が最低ライン、1文字3〜4円はもらえないと生活はできません。
ですが、そんな好条件の案件はほぼありません。
文字単価0.5円以下は当たり前。場合によっては0.01円という条件もあります。1000文字の記事を書いても10円にしかなりません。
文字単価の高い案件には、その仕事をするのに必要な条件が厳しく設けられています。
「女性のみ」
「主婦のみ」
「過去に特定の職業に就いていた人限定」などなど。
雇用機会均等法なども、フリーライターには適応されません。
◯誰でも文字は書けるという決めつけ
クライアントも「文字は誰だって書けるから、文章だって誰だって書けるだろう」と思い、相場も調べずに安い値段で募集をします。
私が仕事をしていたとき、特に多かったのが「まとめサイト」の記事執筆です。
漫画やアニメのストーリーやキャラの解説など、クライアントが決めた記事を執筆します。
その方面に詳しいのであれば、案外簡単に書けそうな気がします。しかし、事実はそうではありません。
まず、記事の内容を自由に書くことはできません。「見出し」によって書く内容はほとんどクライアントによって決められています。「世間はこう思っているかもしれないけど、私はこう思う!」みたいな個人的な意見は入れ込む余地はありません。
逆に考えれば、そこまで作品を考察する能力がなくても、記事を書くことができます。しかし、オリジナリティ溢れる記事にはなりません。クライアントが求めるのも個性を消したような記事を求めてきます。ほかのまとめサイトにはない記事にしようと思っても、結局修正されてしまいます。
そして、経費はライターが負担することになります。
例えば『鬼滅の刃』のキャラについて、最終巻までの活躍を記事にまとめなければならないとしたら、普通は本を実際に読むといった取材をしなければなりません。自分の執筆する記事について、間違った情報があってはいけないと思うからです。
1〜23巻を購入する際、一冊440円として23巻で、10120円かかります。
一般的なライターであれば、こういった経費はクライアントが負担してくれます。また、経費としてライターが請求することもできるようです。
しかし、クラウドソーシングの場合、すべてライターが負担しなければなりません。
仮に1万文字の記事を文字単価0.5円で書いた場合、報酬は5000円です。
記事執筆のためにコミックスを全巻買ったとしたら10000円以上かかります。
約5000円の赤字です。
文字単価がもっと低ければ、当然赤字額は増えます。
「じゃあ2万文字くらい書いて10000円貰おう」と考えるかもしれません。
しかし、報酬は記事の文字数によって増えたりしません。
文字単価というのは「依頼された記事の文字数÷報酬」で表示されるので、1万文字の記事を書いても5000円ですが、2万文字書いても5000円です。
1万文字の依頼なら、できるだけ1万文字ぴったりにしておかないと、お金にならない文章を書く羽目になってしまいます。
今は閉鎖された大規模なまとめサイトは、ほとんど転載ばかりの情報しかありませんでした。
ハーラン・エリスンの『世界の中心で愛を叫んだけもの』というSF小説の紹介に『世界の中心で愛を叫ぶ』のあらすじが載っていたり、いい加減な記事ばかりが溢れていて、「こういう記事を書くライターにはなりたくないな」と思い、ちゃんとした記事を書こうとしていましたが、私には結局無理でした。
ちゃんと調べて1から書けば書くほど稼げません。
たぶん、小説を書くための筋肉と記事を書くための筋肉は違います。
「それはあなたに才能がないだけです」と言われれば返す言葉もありませんが、そんな私が言えることは「ライターは思ったほど稼げない」ということです。
クラウドソーシングには、ときどき小説の依頼が出ることがあります。
これなら小説を思いっきり書くことができる、と思うかもしれませんが、実はこれも非常に大きな落とし穴だったのです。
ちょっと長くなったので、今回はここまで。
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