関係性のバリエーション
1本の小説には、多くの登場人物が出てきます。
主人公と密接に関わるキャラもいれば、そこまでしっかりと関わらないキャラまでいて、作品によって様々です。
前回「三角関係は分かりやすいシステム」という解説を私なりにしましたが、世の中の小説は3人だけしか登場しないものが、無いとはいませんが、圧倒的に少ないのは事実です。
5人以上となると、三角形だけでは説明ができない関係になってしまうように思いますが、そうではありません。
登場人物が増えた場合でも、三角関係の応用によって物語を読みやすくすることができます。
A、B、Cの三角関係を主軸にしている小説があるなら、そこに四人以降を絡ませる場合、手段の一つに挙げられるのは「別の三角関係を作る」ということです。
D、E、Fの三角関係を物語に盛り込むことで、複雑化させずに登場人物を増やすことができます。
しかし、この手段の欠点は「それぞれの三角関係が別々に成立してしまうこと」です。
単純に3人追加しただけですので、どんでん返しでもない限り水増し感が出てしまいます。
外界との交信手段を絶たれた山奥の屋敷で連続殺人事件が起きている小説で、同時刻にコンビニで展開される店員と客とのいざこざを書かれたら、明らかに取って付けた感が出てしまいます。後半でこの2つの話が繋がってくるといった展開があるなら評価ポイントになるかもしれませんが、まったく絡まずに終わったら「どっちが主軸なの?」とマイナス評価を受けてしまいます。
「2つの三角関係を繋げる」という手段を用いることで、その問題を解決させることができます。
A、B、Cの関係の他に、A、D、Eの関係を作る方法です。
主人公に2つの三角関係の一片を担当させることで、三角形を維持しつつ、登場人物を増やすことができます。
この手法も多くの作品で使われているように思います。
例を挙げると、会社で同期2人と激しい出世争いを繰り広げ、時には容赦無く部下を切り捨て、時には同僚の足を引っ張るような裏工作をするような、まるで権力に取り憑かれたような男が主人公だとすると、家に帰ると奥さんには頭が上がらず、娘からは嫌われていて、家での立場がものすごく低い。
こうすると、キャラクターがより立体的になっていき、水増し感は少なくなります。
また、世の中にはさらに多くのキャラが登場する小説もあります。もはや三角形を作るのも難しいように思いますが、実は「枝分かれ関係」(と仮に命名しておきますが)を利用していることもあります。
AとB、AとC、AとDといった感じです。
ポイントは三角形をあえて作らないことです。
三角関係よりもさらに分かりやすくなりますが、ストーリーの立体感は薄くなってしまいます。
ですが、枝分かれ関係にも利点はあり、それは「シンプル」であるということです。
私が思うに、バトルがメインの小説に枝分かれ関係が多く使われているような気がします。格闘マンガに多く、見どころはファイトシーンなので、あまりごちゃごちゃした人間関係はかえって読みづらさを与えてしまうのかもしれません。
仮にバトルものに三角関係を用いたとしても、恋愛小説のそれよりはだいぶあっさりしたものに仕上がるはずです。
ですが、世の中には三角関係の組み合わせで説明ができないような複雑な人間関係を小説に取り込む人がいます。
それが決して悪いわけではありません。上手い人が書けばちゃんと成立するので、作家としての腕があるなら五角や六角の関係の物語を作ることができます。
ただ、それは上手い人が書くから複雑でなおかつ面白いのです。
以上のように偉そうに書いている私ですが、前回書いたように高校時代に四角関係で挫折して以降、三角関係を駆使する方向に力を注ぐようになりました。
しかし、小説の人間関係は、作家ごとに得意不得意ありますし、作品ごとに適切不適切があります。すべての小説が三角関係でなくてはならない、と言うつもりはありませんし、複雑であればあるほどいい、と言う気もありません。
それでも、三角関係は非常に便利なシステムなので、これからも作品に盛り込んでいこうと思っています。
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