三角関係は古いのか?
小説を書くことにおいて、ストーリーは非常に重要です。
面白いストーリーはそれだけで読者を惹きつける要素であり、面白いストーリーが書けるということはそれだけで作家としての強い武器となります。
しかし、ストーリーだけで小説はできているわけではありません。
キャラクター造形にも力を注がなければなりませんし、ライトノベルにおいてはキャラクターが魅力であるということは人気に直結します。
「ストーリーは大したことなくても、キャラクターが魅力的なので面白い」といったこともあります。
ストーリーにおけるキャラクターとは、「キャラ同士の関係性」だと思います。
1本の小説には多くのキャラクターが登場し、それぞれが様々な関係を持ちます。友情でも愛情でも憎悪でも、とにかくキャラ同士を結びつけるのは関係性です。
例えばキャラクターA、B、Cがいたとします。
3人がまるで絡まず、関係性も持たず、ただただストーリーが進行していく小説よりも、3人のやりとりがある小説の方が面白くなる可能性が高いと思います。
AとBとCは同じ学校に通っているけどクラスも部活も違って、互いに会話もなく、お互いを見かけることなくすれ違うというようなストーリーも、うまく工夫すれば面白い小説になるかもしれません。
しかし、AとBとCはクラスも部活も違うけれど、ある日を境に親しくなり、行動を共にするうちにAとBが恋愛関係に発展したが、CもAが好きでBと激しく対立しあう。こういう関係性にすれば、ぐっと面白くなってきます。
このとき、よく使われるのが「三角関係」で、上に挙げた例もまさに三角関係の典型的な例です。
ですが、三角関係と聞くと、昔からあるシステムでちょっと古臭い、と感じる人もいるかもしれません。「そんな古臭いシステムを使うよりも、何十人ものキャラクターが入り乱れる壮大なストーリーを書きたい」と考えている人もいるかもしれません。
このように偉そうに語る私ですが、高校のときに書いた小説で三角関係を超える「四角関係」を取り入れた小説に挑戦しました。
「3より4の方がすごい」と思ったのか、当時の私は「これはすごいものができるぞ」と鼻息荒く執筆を開始しました。
ルーズリーフに4人のキャラの関係性をまとめました。1人の主人公を3人の女子が奪い合い、その中で正体不明の敵とのバトルも盛り込んだ、現代ファンタジーものになりました。
こうして意気揚々と書き始めた私でしたが、100枚くらい書いたあたりで挫折しました。
理由は「関係性の構築が難しい」ことに気づいてしまったのです。
三角関係を分解すると、
1:AとBの関係
2:BとCの関係
3:AとCの関係
となります。
つまり、構築するべき関係性は3です。
ところが、四角関係の場合、
1:AとBの関係
2:BとCの関係
3:AとCの関係
4:AとDの関係
5:BとDの関係
6:CとDの関係
となり、キャラクターがたった一人増えただけなのに構築するべき関係性が2倍になります。
これが五角関係なら10、六角関係ともなれば15となり、さらに複雑化します。
三角関係とは「もっとも分かりやすい人間関係のシステム」ではないかと思います。
書く側にとっても三角関係は整理しやすいのはもちろんですが、これば読む側にも言えます。複雑で分かりにくい関係の小説より、三角関係のようなシンプルな方が馴染みやすくて理解しやすいのです。
この三角関係を効果的に使ったので有名なのはマクロスシリーズです。
また、多くの作品でも三角関係のシステムは導入されているように思います。一見多くの登場人物がいるように思えても、メインのキャラで三角関係を使っているケースがあります。
私が思うに、三角関係とは使い古されたシステムではなく、作者と読者が理解しやすいシステムだと考えています。
もちろん、三角関係が適応されないタイプの小説もありますが、それはまた次回。
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