小説を書き始めたきっかけ その2

「ライトノベルが小説か否か」という議論はさておき、私は人生初の小説を読んだことで、すっかり物語を読む楽しさを知りました。

 2冊目は、同じレーベルの本を買いました。これも楽しく読み終えることができましたが、3冊目の小説を読み終わったときにあることに気が付きました。


 それは「ストーリーが思い通りに進まない」ということでした。

 小説に限らず、多くの創作物は、すでにストーリーが決まっています。大きな物語の流れはもちろん、セリフや描写に至るまで、あらかじめ決まっているものを受け手である読者は読むわけです。

 本をよく読んでいる人なら、そんなことは当たり前だろう、と思うでしょうが、当時大して本を読んでいなかった私にとってはちょっとしたフラストレーションを感じていました。

 一度気になってしまうと、それ以降の小説を読むときに「なんでこうならないのか」とだんだん強く思うようになっていました。


 そして、あるとき一つの解決方法を思いつきました。

「ストーリーが気に入らないなら、自分で作ればいいんだ」


 そう考えた日から、私は小さなメモ帳に自分だけの物語を書くようになりました。

 とはいえ、当時は小説の書き方も分からず、書いていた内容もゲームやアニメで見たような内容を切り貼りしたようなもので、キャラクターもどこかで見たことあるものばかりでした。肝心の内容も「〇〇へ行った」「△△をした」というような箇条書きみたいな簡素なものでした。


 今から考えたら、なんともお粗末な物語でしたが、そこで初めて物語を作る楽しさを得てしまったわけです。


 中学くらいからはアニメにもどっぷりハマり、さらにライトノベルに夢中になり、漠然とではありますが「小説家になりたい」と思うようになったのです。

 実際のところは「声優」「マンガ家」「小説家」でちょっと迷っていたのですが、自分の声にあまり自信が持てずに声優は候補から真っ先に外され、絵も上手くないことからマンガ家も諦める形になり、消去法的な形で小説家を選択したわけです。


 将来の目標が決まったはいいのですが、当時の私には小説家のなりかたがよく分かりませんでした。今ほどネットも発達していない時代ですので、中学生の私には調べようもなく、小説家になりたいと思ったまま、中学校を卒業しました。


 漠然とした目標を抱いたまま、高校へと進学し、相変わらずライトノベルばかり読んでいました。当時の私の生活は、アニメとゲームとライトノベルがほとんどを占めており、ある意味では立派なオタク道を歩んでいました。

 どうすれば小説家になれるのか、誰も教えてくれません。

 進路指導で先生と話したときも、

「将来どうしたい?」

「小説家になりたいです」

「そんなのてめえで勝手にやればいいだろ!」

 と先生に怒鳴られるだけで、アドバイスなどは何もありません。まあ、先生も小説家になる方法なんて具体的に案内できませんし、「夢みたいなこと語ってないで将来をもっと真剣に考えろ」という気持ちだったのでしょう。

 ですが、私としては至って真剣です。


 誰も作家なる方向性さえ教えてくれないまま、高校1年の冬になりました。

 そんなとき、高校の近くにある小さな本屋である本と出会いました。

 それが、川上稔さんに『パンツァーポリス1935』です。

 作品の内容も非常に面白いものでしたが、一番の衝撃が「電撃ゲーム小説大賞(現・電撃大賞)」からデビューした、ということでした。

 このとき、初めて小説の公募というシステムを知りました。


 そして、同時に思いました。

「賞を獲って小説家になる!」


 決意したこのときから、はっきりとしたビジョンを描いて小説を書き始めました。


 全てのことが小説のための行動になりました。

 本を読むのも小説のためです。周りに同じように小説を書いている友人はいませんでしたから、小説の勉強をするのは小説しかありません。

 ゲームを遊ぶときも、小説の参考になりそうなものを選びました。

 アニメやマンガからも、なにかネタになるものはないだろうか、と思いながら見ていました。

 1日原稿用紙で5枚以上書く、という目標を立ててコツコツと、原稿用紙罫のルーズリーフ(今はなくなってしまったようですが)に

ひたすら書き続けました。


 ですが、まったく完成させることができませんでした。

 書き初めはものすごい熱量を持って執筆できるのですが、徐々に熱を失っていき、100枚くらい書いたあたりで気持ちが冷めてしまい、次の作品に取り掛かる。

 これを繰り返していました。


 ようやく1本作品を通して書き切ることができたのが高校3年の終わりでした。

 そのころには、文芸創作を専門に教える専門学校への入学が決まっていました。


 こうして、作家志望の第一歩をやっと踏み出したのです。

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