第7話 走れないのは辛かったです

動くのが好きだった。楽しい事を考えると、自然に体がステップを踏んで走り出すんだ。それが何より楽しかった。元気だねと言われるのも好きだった。でも、周りは違う。


「友くん、教室の中を走っちゃだめでしょ」


「元気なのはわかった。でも今は授業中だから、席に戻れ」


小学校5年生のある日、授業が退屈で楽しいこもを考えていたら気持ちが抑えきれなくて、走り出したことがあった。そしたら先生に怒られた、そうか、学校じゃあ楽しい事をしたら駄目なんだ。だったら家で楽しい事をしないと。今度は家で沢山走った、嬉しい事を考えるだけで体が動いて、それに任せるようにステップを踏んで走り回るのが何より好きだった。


そこから僕が病院に連れて行かれたのはしばらく経った後だった。お母さんが言った、元気なだけじゃない、何かおかしいって。熱もないしどこも痛くないのに学校を休んでまで病院に行くのはなんていうか、変な感じだった。そして大きなお医者さんがいう。




「友くんは、ADHDの可能性があります」




お母さんは魚みたいに口をパクパクさせて、そして僕を愛おしそうに抱きしめた。ごめんねと何度も言われたけど、意味は分からなかった。その時ぐらいから、いつの間にか僕はクラスのみんなから仲間外れにされ始めた。何だっけ、ADHD? の話がバレたのか、それとも僕のことが嫌いになったのか。6年生になる頃には、お母さんも最初は優しかったけど焦ってき始めて、僕によく怒鳴った。


「お願いだから座って!」


「なんでそんなに動き回ってるの!?」


「アンタは普通じゃないんだから、せめて大人しくしててよ、



この障害児!!!」




泣きたい気持ちをグッと堪えた。僕が我慢すれば、普通になれる。

普通になれば障害児じゃなくなるでも僕は走りたいよ

ウズウズしても我慢しなくちゃステップ踏んで踊るのも大好きなのに

お母さんのために頑張るねどうしても走っちゃ駄目なの?

ほら見て僕はちゃんと普通でしょ走りたい走りたい走りたい走りたい

障害児じゃないでしょ走りたい走りたい走りたい走りたい

欠陥品じゃないでしょ走りたい走りたい走りたい走りたい

お母さんもお父さんも僕を褒めてよ走りたい走りたい走りたい走りたい走りたい走りたい


気がついたら僕は真っ暗な家で一人踊っていた。頭から血を流したお父さんとお母さんが観客だった、まるで授業で習った『まやく』のようだ、楽しくて仕方がない。ああ、やった、やった!




これでいっぱい踊れるんだね!!!

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つまらない私は私は子供達を助けたい 荒瀬竜巻 @momogon_939

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