第5話 個性とは

昔から、こだわりが強かった。これといったら絶対曲げない頑固さが1番の個性だった。


「どうしてそんなにそれがいいの?」


「こっちも楽しそうだよ?」


「同じものばかり食べちゃダメだよ」


みんな口々に言う、うん、きっとそれは全て正しい、そして僕も絶対正しい。人それぞれみんな違ってみんないいっていうでしょ? みんなが正しいのに僕だけが正しくないわけがない。


だからこそ考えて好きなものを食べるし、考えて好きなことしかしない、考えて嫌なことがあったらそれを拒否する。それだけの事だ。なのに、なのに、


「もうお前とは遊ばねー、強情すぎて楽しくねーもん」


「こら、そんなに強情じゃあ駄目、お友達の話も聞かなきゃダメでしょ?」


「……ねえ、別れよ。強情すぎて面白くない」


みんなが僕を強情だと言いはじめる。みんな違ってみんないいんじゃないの、僕の頑固は個性じゃないの、人を困らせる個性は個性じゃないの?


大体僕は強情じゃあない頑固なんだ、何が違うのかって? 僕にもわからない、何故か知らないけど頑固の方がしっくりくるんだ! いつもの僕らしくない感情論でしかない主張、仕方がない、何故か気に食わないという理由があるんだから!


「お前ら、僕は強情じゃあない、頑固なんだ! 全員言えよ、正せよ、反省しろよ!」


「嫌だ嫌だ、俺は頑固なんだ、それは個性なんだ!!」


「何でわかってくれないの!? 早く認めろよ! 馬鹿、馬鹿野郎ばかりだ!!!」


ある日僕はクラスメイトの胸ぐらを掴んで地面に叩きつけた。身体から赤い斑点が浮かび上がって、その一つ一つが僕に力を分けてくれる。これでみんな認めてくれる!


……違う、ごめんなさい、ごめんなさい。怯えないで、何でそんなに怯えているの……斑点の化け物? この斑点も個性じゃないの? 誰にも迷惑かけてないのに、迷惑かけてなくても個性じゃないの?


ああ、違う。全員個性が大事じゃないんだ。


みんな自分にとって他人の持つ都合のいいスキルを個性って名付けて、それでみんな違ってみんないいって言ってるんだ。だから僕は没個性なんだ、頑固はいらないんだ、斑点はいらないんだ。




「ほざくな屑め」



いつだってそう。

感情論に理論武装をしたところでこんな感じにすぐ剥き出しになる、

他人の言う事を受け入れられない個性を持ってる、

頑固なんだ、僕は。

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