第3話 松田友
渚ちゃんは明日にでもまた目を覚ますだろう、私には時間がない、子供達が待っているのだから。次のカルテを見てみよう……次の子はなかなか手がかかるな。
カルテNo.46460804
病名:フラフラ病
歩くことでしか自我を保てない病気。止まっているときは常時発狂状態であるため、意識の疎通は不可能。歩くことで意識を取り戻すが、走る飛ぶを繰り返すとアドレナリンが大量に分泌されて暴力を振るい始める。
また痛みを感じにくいというこの患者ならではの特性があり、常に外傷がないかを確認すること。病室にいないことが殆どなので、見つけたら随時診断を忘れないように。
またこの患者は好奇心が非常に旺盛なのが災いしたのか、脱走癖あり。
この男の子は担当を始めた日からまともに病室で話した覚えがない。しかも脱走癖があり夕食の時間になっても帰ってこないと思っていたら、通気ダクトを通って地上の病練まで遊びに行っていたこともあるぐらいだ。いくら好奇心旺盛とはいえその後も穴掘って地上に登ったり、大胆にもエレベーターで地上に行こうとしたり、限度があるようにも思える。痛みを感じないからこそ自身の身体に無理を強いることが出来るのだろう。
「友くん、犬田です、入ってもいい?」
ノックをして声をかけてみたが反応はない。いつもの話しかとドアを開けたが、やっぱりいない。さてどこに行ったんだろう。誰かの病室に遊び行ったのか、どこかの廊下を走り回ってるか、それともまた思いもやらない所から脱走して夜に帰ってくるのか。カルテにはいつも通り書いておこう、病室に居ませんでしたと。
さてもう後半だ、あと2人。次の子も中々手がかかる、というよりこの子はもう長くはないんだろうな。
カルテNo.06060314
病名:メラメラ病
常に体全体が焼け焦げている病気。激しい激痛感じているようで時折泣きながら悲鳴をあげる。新種の病気でまだ不明な面が多いが、最新の研究で心臓が熱源であることがわかった。
治療方法は一切として不明だが、この患者は優しくすると火傷の進行が遅れる。寂しがりな患者の性格とどういった関係があるのか現在研究中。身体中を包帯で巻いている、衛生のため1日一回必ず取り替えること。
また火傷の進行が手に負えない時は、治療ポッドに入れて様子を見ること。
初めて穂くんをみた時、絶句したのを覚えている。色んな子供達を見てきたけど、こんなに無惨な姿で運ばれてきたのは初めてだった。日に日に火傷は広がっていく、最後の砦である治療ポッドはまだ避けられているけど、逆を言えばアレなしではいられなくなった瞬間が治る見込みがないと絶望する時だ。
「穂くん、犬田です、入ってもいいかな?」
「ァァァ……い″ぬ″だざん″……い″だぃ、だずげでぇ……」
「ニコニコ? ニッコーー!」
……あーあの子も来てたんだ、そうだよね、穂くんが心配だったんだね。意を決して入った。
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