わたしは婚約者のことが好きだ。
わたしは婚約者のことが好きだ。
最初は政略結婚で知らない相手と結婚するなんて、と思ったが鋭い目つきで赤系の髪の強そうな女性だが話しているとすごく胸がじんわりする可愛らしい人だとわかるとこの人となら! という気持ちが胸に満ちた。
まぁ、彼女はボンキュッボンですごく魅力的という性的な欲求もある。あるよ、男だもの。
彼女と会うと視線がどうしても上へ下への大騒ぎになってしまう。それがいけなかったのか彼女の付き人のひとりがわたしの視線を遮るようになった。
目が合うたびに睨んでやった。なぜ邪魔をするのか、と念を込めて。すると、付き人の方もわたしをキッと睨んできた。
そんなことが何度も続いたため、わたしはその付き人を呼出した。
もちろん、誰にも気づかれぬように、だ。未婚の者がふたりきりで会うなどとは気が付かれたらやばい。
顔を合わせたら即開戦。言葉を投げあった。鋭く、穿つような言葉がわたしたちの間で行き交った。
その会話の後、わたしは付き人とガッチリ握手を交わした。
趣味が合う。なんだか長いこと共に歩んできた友人のように思えた。
次に会う時はなにか贈り物でもしてやろうか、と思った。もちろん秘密裏に。
数日後、わたしは婚約者に呼び出された。付き人の姿はなかった。
婚約者はわたしに言った。
「婚約は破棄します。あなたはもっと良い人と結婚するのです」
ん? なんだって? 破棄? いや、一国の姫が国家間の事に食い込めるはずがないと思うが?
「大丈夫です。あなたのお父様もわたしのお父様も説き伏せました」
え? いや、説き伏せたって、そんな簡単な話ではないと思うが?
「大丈夫です、大丈夫。身分の差なんて愛でどうにかなります。幸いにもあなたのお国に空いている領地がありまして結婚後そこに行けるように手配も済ませてあります」
呆然と震えるわたしの頬を撫でる婚約者。え?なにこの婚約者。怖すぎる。こっちの国の領地を把握しているの?ああー、多分財政とかも把握しているんだろうなあ……。うん、丁度いいやその領地とやらで誰か知らない結婚相手と引きこもろう。この国とは金輪際関わらない。わたしはもう知らん。
その数日後、わたしは純白の式服を着て神官の前に立っていた。目の前にはあの付き人。
ベールを上げて彼女と分かったとき全てを察してわたしは難しい顔になった。全て、見られていたのだ。彼女との掛け合いも密会も。でも、もう進むしかない。そう思って彼女に口づけをした。
結婚して引きこもろうと思ったら彼女にひっついて元婚約者が一緒にやってきた。こいつ、自国が暇だから出る機会を探っていやがっただけだわ。正直この女から逃げられるビジョンが見えない……。彼女はロックオンしているし、この女、仕事だけはできるし。
はぁ、仕方ないな。できる限り忙しく働いて貰おう。暇になったら何をするかわからないから……。
ひとりじめしたいっ! 初月・龍尖 @uituki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます