第8話 入浴写真
進は目を覚ました。外を見てみると、もう辺りはかなり明るくなっている。休日だからまぁいいけど、ちょっと寝過ぎちゃったなぁと進は伸びをする。
進は寝返りをうち、そろそろ起きるかと考えながらも、ぼーっとしていた。
人間、ぼーっとしていると様々な事を思い出してしまうものである。進は、瑞稀と悠里の胸を揉んだ事を昨日の事のようにはっきりと思い出していた。人生で初めて触れた女性の胸に、進の炎は再燃してしまう。
結局、先週できた復讐というのはそれくらいだったし、あれからもなんだかんだでパシられ続けている進。しかし、少しだけというよりガッツリ2人との物理的な距離が近くなっている気がする。まさかな...。と笑う進。
とにかく、時間はまだまだあり、そして復讐の炎は未だ消えていない。やるべき事はたくさんある。その意気込みを抱え、セクハラの計画案を考えていく進。そんな時、進のスマホからLINEの通知音が鳴った。
友達のいない進にとって、LINEの通知音がなる事はあまりにも珍しく、少しだけ驚いてしまう。恐る恐るスマホを見ると、そこには葉月 悠里という文字が。
セクハラな計画案について考える事を中断し、悠里からのメッセージを見てみる。進は自分が見ているものが信じられなかった。
そこには、朝風呂気持ちいい〜というメッセージとともに、お風呂に入っている悠里の写真があった。その、様々な男と女を分けるものがギリギリ見えるか見えないかくらいの写真に進はもう興奮を超えて、理解不能であった。
急いでベットから飛び起き、部屋の中をうろつく進。あまりにも分からないことが起こっていて、進は事態を飲み込むのに時間がかかっていた。とりあえず、もう一度、悠里からのメッセージを見る進。やはり、そこにはあられもない姿をした入浴中の悠里の写真がある。
お湯で隠れてはいるが、明らかにその大きさを予感させる胸、そして、艶やかな足が起き抜けの進に襲いかかる。もう進の「進」はいつでも戦える状態になっていた。進はそんな「進」を見て諦めたように笑い、そして徐にズボンを脱いだ。
なんというか進にとって、悠里の入浴写真というのは、あまりにも重なりすぎているのだ。
同じクラスの女の子、それも普段は男として振る舞っている美形の女の子、そして、その子は自分の仇でもある。そんな条件が揃っている状態で、興奮するなという方が無理なのである。
しかし、クラスメイトをオカズにする事は、今の進にできる芸当ではない。彼は臆病な童貞なのだ。そこで彼は、まずスマホで悠里の入浴写真を開いた。そして、その写真を目に入る位置に置いておく。
「あー、なんか見えるけどなぁ。よくわかんないなぁ。」
そう独り言を呟くと、改めていつも愛用しているオカズを、入浴写真とは別で広げる。こうする事でクラスメイトをオカズにしてはいない。あくまでも目に入っているだけ、という状況を作り出した。
「さてと...」
彼は、そう呟くと自らの指揮棒を手に取り、オーケストラを奏で始めた。素晴らしい興奮のハーモニーが、彼の中を巡る。しかし、そんなハーモニーが存在したのは最初の1、2分だけであった。気がつくと進の目は、悠里の入浴写真に釘付けになりあっという間にコンサートはフィナーレを迎えた。
なんて事をしてしまったんだ。そんな罪悪感と虚無感に襲われながら指揮棒を掃除する進。掃除も終わると、椅子に腰掛け、ぼーっと天井を見つめる。
そして、進の中でまたしても悪魔が目覚める。ニヤリといやらしい笑顔を浮かべる進。彼は、スマホを持ってお風呂場に向かう。
服を脱ぎ、全裸になるとスマホを持ちながら、前の日の残り湯に浸かる。残り湯のぬるさを感じながらも彼は自分の入浴写真をパシャリと撮った。
そのまま、LINEを開く。とある人物を探し、その人物のメッセージを開く。その人物の名は、もちろん一ノ瀬 瑞稀であった。
「一ノ瀬ちゃぁぁぁん!絶対に逃がさないからねぇ...!!」
進はケタケタと悪魔のような笑い声をあげると、自分の入浴写真を躊躇なく送った。
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