第7話 僕のは触らなくていいの?

 悠里は進の隣に座ると、ぐいっと進に顔を近づける。肌と肌が触れ合ってしまいそうなほど近い距離、そして、悠里のあまりにも端正で可愛らしい顔立ちに進の心拍数はさらに跳ね上がる。


「ねぇ、進ちゃん。僕のは触らなくていいの?」


 ニヤニヤと笑いながら、じーっと進を見つめる悠里。進はもうどうしていいかわからず、うわずった声で言葉を発する。


「え、あ、あぁ、別に大丈夫だよ!」


 なんとか返答するも、悠里は全く引き下がらない。ぺたぺたと進の胸筋を触り出す悠里。瑞稀の胸を触った事で起こったあまりの興奮によって一周回って冷静になってしまった進は冷や汗をかく。


「えへへ、僕も進ちゃんの胸筋すっごい触っちゃったから、進ちゃんも僕の胸筋に触らないといけないね?」


 男同士だったら普通のことだもんね?と悠里は進に囁く。進はあまりにも近くから発せられる甘美な声と誘惑に悦びを感じるしかなかった。


 しびれをきらした悠里は遂に進の手を掴む。そのまま進の手を自分の胸に押し当てる。突然の行動に驚く進であったが、その瑞稀にも負けずとも劣らない柔らかさに夢中で手を動かしてしまう。

 んっ、という甘い声を洩らす悠里に進の「進」は臨界点に達そうとしていた。


「進ちゃん。僕の胸筋はどうかな?」


 潤んだ瞳で問いかける悠里。しかし、あまりの興奮により高まりすぎた血圧によって、進は自分の耳鳴りしか聞こえてはいなかった。夢中になって悠里の胸を揉み続ける進。


 そして遂に悠里は、進の「進」を見つけてしまう。悪戯な笑顔を浮かべる悠里。


「あれ?進ちゃん。これ何かな?」


 進は、はっとする。悠里が指し示したのは、もちろん進の「進」だ。進は興奮でドロドロに溶かされた脳内でほんの少しだけ羞恥心を感じた。


「僕のを触って、こんなになっちゃったの?」


 進の耳元で、悠里は優しく囁く。その言葉にさらに怒張する「進」。肯定も否定もできぬまま、進はただひたすらにその興奮と向き合う。そんな進の様子を満足げに見つめながら、とうとう悠里は進の「進」に触れてしまう。


 ここまで興奮を与えられ、学校という絶対に我慢しなければならない状況におかれた進の「進」は、そのわずかな刺激に対しても耐えることができなかった。


 悠里が触れたと同時に、びくんと反応した進の体。そして、まるで何かが放出されたかのようにどんどんと萎んでいく「進」。


 突然の反応に悠里は少しだけ動揺してしまう。全ての放出が終わった後、進はすっと立ち上がった。そして、瑞稀と悠里に一礼をすると、その場を後にした。


 向かう先は、もちろんトイレであった。洗わなければならない。ひとまずの復讐を遂げた彼の目はまっすぐ前を向いていた。

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