第3話 計画
時間は経過し、放課後になった。結局、瑞稀と悠里は体育の授業には出ず、体調不良という理由で早退したらしい。
進は特に部活にも入っていないため、真っ直ぐに帰宅する。そのまま、夕飯を食べ、お風呂に入り、宿題などをやって、スマホを見たりする。そんないつものルーティーンをこなし終えると、部屋を暗くし、ベッドに腰掛ける。
暗い部屋の中で進の目だけが光る。気がつくと進は不気味な笑みを浮かべていた。進の内心は非常に愉快であった。それもそのはず、今まで自分をいじめてきたイケメン2人の圧倒的な弱みを握ったのだ。
まさか自分がこんなマンガのような体験をするとは、それも2人もなんて、思いもしなかったが、それでもあの教室での光景、そして元気だったはずの2人が体調不良で早退するという、この状況が全てを物語っている。
手を組み、じっと考え込む進。これから自分はどう動くべきかを考える。あの2人が実は女であると知っているのは自分だけ、そして、もちろんあの2人はこの事実をバラされたくはないだろう。どんな事情があるのかはわからないが、学校上ではあの2人は完全に男子として扱われているのだ。
しかし、冴えない陰キャの自分が、あの2人が実は男なんだ!とクラスに言いふらしたとしたらどうなるだろうか?恐らく、誰もそんな与太を信じようとはしないだろう。あの2人はめちゃくちゃイケメンの人気者であるし、そんな2人にイジメられた可哀想な陰キャが嘘っぱちをでっち上げてとうとう気が狂ったのかと、クラスの哀れみの視線をかっさらってしまうに違いない。
そうなると、自分ができる復讐は1つ。進は少しだけため息をつくと、カーテンを開けた。澄んだ夜空には、星々が瞬いている。
「やるしかねぇのか、セクハラってやつを」
彼の頭から弾き出された、男装女子に最も効果的な復讐、それはセクハラであった。そう、男同士だからこそ許される、肉体言語、ボディータッチなどを瑞稀や悠里に行うのだ。
「別にしたいわけじゃないんだ、そんなわけない。でも、僕はあの2人に目をつけられてずっとパシリにされてきた。そして、2人に目をつけられてから友達すらもできなかった。確かに僕が、本当に限りなくほんの少しだけコミュ障なのも原因かもしれないが、それでも僕の青春を奪ったのは事実だ!」
そう言いながら、彼の頭の中にあるのは体育前の教室での光景だけだった。生まれて初めて見た女の子のあられもない姿。進の『進』は耐え難いほど怒張していた。アダルトコンテンツを見ている時、人間のIQは200を超えるなんていう研究結果があるらしいが、この時の進は恐ろしいほどの頭の回転で、これからの計画を立てていた。
しばらくの間、考え続け、ついに進の脳内に限界が訪れた。心地よい疲労感とともにそのままベッドに身を投げた進。彼はいじめられっ子とは思えないほど下劣な笑顔を浮かべ天井を眺めながら、この幸運を神に感謝した。
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