第2話 見てしまった

 バッと目が覚める進。いつの間にか寝ていた事に気がつくと慌てて時計を見る。時刻はもう5時間目の体育が始まる直前であった。




 急いで教室に戻る進。早くジャージに着替えないとなどと考えながら階段を駆け上がる。




 進が通っている学校では、ジャージに着替える時、大抵は教室か更衣室を使う。この学校は共学なので、女子は更衣室、男子はほとんどが教室で着替える。男子にも更衣室はあるが使う人間はほとんどいない。




 ようやく、教室が見えてきた。即座にドアを開け、中に入る。




「はぁ、やっとついた。早くジャージに着替えないと」




 大きな独り言を呟いた瞬間、進は目の前の光景に固まってしまう。そこにいたのは瑞稀と悠里の2人。そして、2人は上半身裸であった。そこまでは全く問題はないはずだった。




 しかし、2人の周りにはさらしのような白い布が落ちている。そして、2人の胸元には本来男であればつけることのない下着が。




 さらに、2人は男子とは思えない明らかに豊満な胸を持ち合わせていた。彼らが太っているなら、それでも苦しいがなんとか男ということにできたかもしれない。しかし、この2人はすらりとした体躯で、スタイルもイケメンだったはずだ。




 ここまで来て進の思考はオーバーヒートした。時が止まったかのように静まり返る教室の中で、進は2人に見られながらも自分のジャージを取る。ガックガクに震える足腰をなんとか動かし、ジャージを取るとダッシュで教室を抜け出した。




「おい、進!!待て!!」




 後ろで瑞稀の声が聞こえたような気がしたが、構っている場合ではない。そのまま更衣室に入り、急いで着替え体育の授業に参加する。




 遅いぞー、と体育教師になじられ、進は謝罪をするが頭の中はそれどころではなかった。さっき見た光景が何度も何度も表れては消える。




 2人がつけていた水色とピンクの下着。そして、そこからこぼれ落ちそうな程、豊満で魅力的な胸。




「間違いない。」




 進は、1人呟いた。自分をいじめてきたあの2人、一ノ瀬 瑞稀と葉月 悠里は間違いなく女の子だ。

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