第26話
「で…これは?」
俺は物凄い数の生徒が俺達の部室の前に集まっている姿を見て呟いた。
「……凄いだろ、」
聡志もしんじられない顔をしているが、口だけは自慢している。
「だから辞めとこって言ったのに…」
久保は何故か項垂れている。俺がいなかった部活紹介で何があったんだ?
「久保、どいうこと?」
「……聡志が丁度良い部員数を獲得するにはって考えて、全面的に朱里を推したんだよ」
「ん?それじゃあ絶対いっぱい来るだろ。ほんちゃら天使何だろ?朱里は」
だからか…やけに男子が多いのは…
「だから、成瀬も全面的に推したんだよ…」
「ん?更にプラスしてどうするんだよ」
「プラスなわけあるかぁー!マイナスでしょ!」
久保はさも当然のようにいってくるが、それだと僕傷ついちゃうよ?
「で、どうするのだ?」
朱里がちょいちょいと指を突いて尋ねてきた。
「そりゃいつものように部活して…」
「いつもの
「・・・何してたっけ?」
うんうん、確か、トランプやったりぐーたらしたり、オセロやったりぐーたらしたり……何もやってねぇ…
「……よし、今から家庭科室行くぞ」
俺はそう言って家庭科室の鍵を取りに行くために職員室に走った。
「じゃあ今から家庭科部llの活動を始めま~す。じゃあまず久保、ゆで卵の殻をむけ」
「え、僕が?」
「ああ」
久保は調理台の上に置いてある卵を取る。そして、卵を机に打ち付けて
ーーぐしゃり
「え?」
その卵はゆで卵ではなく、生卵だった。思いっきり割れて、久保の手はベトベトになった。見に来ている後輩達は唖然としている。
「成瀬?」
久保はカチカチになりながらこちらを見てる。羞恥心か怒りのどちらかはわからないが耳まで真っ赤になっている。
というかさ、さっき来たばっかなのにどうやってゆで卵にするんだよ。魔法か?魔法を使えとでも言うのか?
「.....じゃあチャーハン作って」
俺は新たな指示を出す。
作り方はさっきホワイトボードに書いたから分ると思うけど...
久保は手際よくチャーシューやネギを切ってる。けど、不細工だな..
形や大きさはバラバラで家事をいかにやってないかが分かる。後輩たちも微妙な顔してるし
久保はそんなことはお構いなしに具材を一気にフライパンに入れ、ご飯も入れた。
「よっし、いくよ」
久保はフライパンを持ち上げて、中身をクルっとひっくり返…。
「………あーあ、やっちゃった」
なんかやらかしそうだなとは思っていたが、案の定久保は失敗して中身のチャーハン全てを床にぶち撒けた。
「……これは久保が片付けるとして、朱里次よろしく。料理はハンバーグな」
俺は久保にはもう料理は無理だということが分かったので、次に朱里に頼む。
「ふっ、そんな肉塊我には容易に出来ようぞ」
「じゃあよろしく〜、片付けるの手伝っとくし」
俺は後輩の方をチラリと見る。さっきの久保の失敗はなかったことにして次の朱里の料理に釘付けになっている。
(…そういや、朱里って料理できたっけ?)
ヒューッ
刹那、俺の頬の直ぐ側に煌めくものが刺さった。
(え…包丁?)
俺はその場に尻をついた。一歩間違えれば大怪我だった。
朱里は何食わぬ顔でこちらに近づいてきて、包丁に目をやった。
「ふっ、怖気づいたのかアイアンソードよ。さぁ、我の元に!」
そう言って朱里は俺の隣に刺さっている包丁を引っこ抜いた。が、予想以上に深く刺さっていたのか、取れた時には朱里の両手からは離れており、包丁は真上の天井に突き刺さっていた。
「あ、駄目かも…」
この後はさんざんだった。急に電子レンジに生卵を入れて爆発させるわ、朱里が指をザックリやってしまうわ、いろいろ大変だった。
結果ハンバーグを作るどころではなくなってしまった。
まぁ、つまりはーーー
新入部員はゼロということだ。
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