第22話



「どういうこと!?ねぇ、どういうこと!?」


購買から帰ってくると久保が壊れていた。


「どうしたんだ?」


俺は焼きそばパンの焼きそばだけを食べながら尋ねた。焼きそばパンって炭水化物に炭水化物ってもう罪悪感しかないよね〜。


「あ、成瀬!聞いてよ!聡志が告白されたって!」

「・・・・・」

「あ、これ思考が追いついてないやつだ」


聡志が告白された?………誰に!?


「………聡志!相手は誰だ!!」


俺は聡志の肩を掴んで揺らす。


「えっと…同じクラスの山岸」

「・・・知らん」

「僕も知らない…」


だいたい、知ってる人の方が少ないのに同じクラスでもない奴を聞いても分かるわけないよな…


「で、告白の返事は?」


俺は睨みを効かせながら言った。


「ほ、保留に…」

「ハア!?そこはオッケーでしょ!千載一遇のチャンスなんだよ!?」


久保が珍しく気が立っている。


「ねぇ、好きなの!?その彼女のことは好きなの!?」

「いや、まだ、その分からん」


聡志はなんとも煮えきらない回答をする。


「嫌いじゃあないんだよね!?もしかして他に好きな子とかいんの!?」

「いや、いないが」

「じゃあオッケーしかないよね!?嫌いじゃあないんでしょ!その彼女のこと!」

「まぁ、そうだな」


聡志は戸惑いながらも答えた。


「そうだ!おい、そいつのREINレイン*持ってるのか!?」

「あ、ああ」

「じゃあ出して!」


聡志は俺と久保の気迫に圧されてスマホを取り出す。


「よし、貸せ」


俺はその相手のレイン…がどれかよく分からないので適当に女の子っぽいラインのアカウントにメッセージを送った。


「おい、今何を送った…?」

「『話があるので放課後、体育館裏に来てください』って」

「まじかよ…」

「男を見せろ!聡志!」


俺は聡志の背中をバシバシと叩いた。












「さぁ、いよいよだな」


放課後、告白のために体育館にやって来た聡志を草むらの陰から観察する。


「あの、聡志が、聡志が…」


久保は隣で情緒不安定そうにブツブツと呟いている。昼はあんなんだったのに変な奴…


「………というか、なんかギャラリー多くね?」


何故かそこらかしこに生徒がスマホとかを弄りながら、時折聡志の方を見ている。


「噂になったんじゃない?」

「にしてもこの数…」


明らかに多すぎる。窓から覗いている奴すらもいるほどだ。


「山崎くん、話ってなにかな?」


ちょうどそこに彼女が現れた。


「ああ、山ーーえ?神咲?」


山岸ではなく神咲詩乃が


「ーーあれ?成瀬、なんで?」


さっきまで情緒不安定そうにブツブツと呟いていた久保が不思議そうに俺に尋ねてきた。


「さ、さぁ?」


俺は惚けた振りをする。そんな俺を久保はジッーと見てきて


「間違えたんでしょ」

「ギクッ!、さ、さぁ、私にはなんのことやら」

「ちょっと!!不味いでしょそれは!」


久保は俺の肩を掴んできて揺らしてくる。


「仕方ないだろ!どれが誰のかわからなかったんだし!」

「聞けば良かったでしょ!」

「……、俺、過去を振り返らないので」


カッコよく名台詞を言う。


「言ってる場合か!!」


久保が大声でツッコんだ。


そして、そのせいで聡志に俺達の居場所を悟られてしまった。



「で、話って…」

「あ、ああ、そうだな…」


(成瀬め、間違えて神咲にラインを送ったのか…)


絶対にどこかに隠れて見ていると思って自然と周りを見るがどこにも見当たらない。


というかギャラリーが多いな…


「山崎、くん?」

「ん、ああ、えっとそうだな…」


流石に成瀬にやられたとは言いづらいな


「その、すまないが間違えて」


そう言いかけた時、


「言ってる場合か!!」


久保の大声が聞こえた。


(いや、言ってる場合だろ…)


声がした方を見やると


「ーーあ、」


木の陰に山岸が隠れてこちらを覗いているのを見つけてしまった。というか思いっ切り目が合ってしまった。


山岸は気まずそうにして、その場から去ってしまった。 


(どうするんだよ、成瀬!)


俺は心の中で叫んだ。

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