第20話



「……凄い家」


隣の家と同様に凄く大きな家の前でスマホの画面と見比べる。今日からここで家庭教師なんだよね。とはいえ教えられるかな?


ピーンポーン


私は家のインターホンを鳴らす。


「は~い」


と元気な声が聞こえて、扉が開いた。


「あ、家庭教師さん〜?入って入って〜!」


とても元気なお母さんが手招きをする。


「お、お邪魔します、」


私は門を開けて少し急ぎぎみに庭を歩く。


「ようこうそ、さ、上がって上がって!」

「お邪魔します」


私は家の中に入るが、あまりの家の大きさと豪華さに目がくらんでしまう。そこらかしこに億単位のツボみたいなものがある。


私は広い部屋に案内されて、多分ダイニングであろう場所の椅子に座った。


「あ、飲み物紅茶でいい?」

「あ、はい、ありがとうございます」


とても高級そうな食器に凄く香りの良い紅茶が出された。落として割ってしまったらと思うと手が震える。


「〜〜っ!凄く美味しいです。香りも良くて」

「そう〜?ありがとう!」


お母さんはニコニコと笑顔だ。良い人そうで良かった〜。


「誰か来てるの?」


と、そこへ女の子が入ってきた。


「あ、まーちゃん。家庭教師が来てくれたのよ」

「あ〜、もう来るって言ってた……え!?」

「どうかしたの?」

「え、神咲副会長ですよね!?」

「は、はい、神咲詩乃です」


凄い勢いで近づいてきた女の子に少し驚いてしまう。


「うっそ〜っ!本物!?凄い!可愛い!!」


そう言いながらその子は私の顔をジロジロと見て、顔を赤らめる。


「いやいや、私なんか…真奈ちゃんの方が可愛いよ」

「そんなことないです〜!って私の名前知ってるんですか!?」

「えっと、家庭教師をすることになったから…」

「………はい?」


真奈ちゃんは何故か不思議そうな顔をする。


「えーっと、真奈ちゃんだよね?家庭教師するの」


あれ?違った?私はスマホを確認する。ひとつ下の咲夜真奈。あってるよね?


「お母さん?」


真奈ちゃんはお母さんの方を見る。お母さんはスマホを確認して


「………きゃ〜〜!間違えてた〜!!」

「え、え?」

「ごめんなさい神咲ちゃん!私うっかりまーちゃんのこと書いてた〜!ごめんなさい」


お母さんは凄い勢いで謝ってくる。


「い、いえ、大丈夫です。えーっと、それではどなたが?」


「ただいま〜!!」


玄関から誰かが帰ってくる声がする。


(うん?どこかで聞いたことのあるような声…)


「ったく、大変だったわ〜、ちょっと冗談言っただけなのに……」


私はその人と目がバッチリと合う。


「ん?なんで副会長が家に?」

「なー君の家庭教師」

「「ええ!?」」


私はとっさに口に出してしまった。普通、絶対にそんなこと言ってはいけないのに……












「神咲ちゃん、本当にごめんなさい!私がこんなミスを犯したせいで!」

「い、いえ、お気になさらずに」

「ど、どうしよ…急に男の子を教えるなんて流石に嫌だよね」

「えっと…それは…」


占めたと思って俺はそっと副会長に耳打ちをする。


(こっちは全然平気だから、断ってくれ)


「ほぇ?」


副会長は素っ頓狂な声をあげておどろいた。しーっ!母さんにバレると面倒くさいだろ!?


「どうかな?神咲ちゃん」


奇跡的に母さんには聞こえていなかったのか、母さんはもう一度尋ねてきた。


「えっと、いいですよ…」

「ほえ?」


今度は俺が素っ頓狂な声をあげた。え?断ってって言ったよね?というか普通嫌じゃないの?


「それって…」

「成瀬くんの家庭教師やりますよ…?」


母さんは感激の余り十分程泣いた。















俺は母さんの隣に座らされ、家庭教師の日程決めなどをさせられている。


どうしてなんだ!!断ってくれるんじゃなかったのかよ!?


「では、月、火、木に三時間でよろしいですか?」

「よろしくないです。15年に一回くらいのほうが…」

「なー君?」

「よ、よろしいです…」


彼はしおらしく、恨めしく答えた。そんなに嫌なんだ…勉強…


でも、今回はラッキーといえばラッキーだ。学園一の問題児を更生出来ればこれからの問題は格段に減るだろうし…


「あ、そうだ!給料は時給を倍にしておくね!」

「い、いえ!流石にそれは…」

「いいのいいの!こっちが迷惑かけたんだし、それになー君の面倒を見るのは大変だから」

「は、ハハハ、、(それはそうかも)」


あれ?副会長が否定しない!?ほう、俺もその域に達したか……


「じゃあ、来週からお願いね!」

「はい、分かりました。こちらこそお願いします」


















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