第19話




「その人の名はーー」


俺は思いっ切り息を吸い込む。この溜め込んだ1年間への思い届け!!









「松永先生だ〜〜!!!」



シ~〜〜ンと音が聞こえそうなくらい皆が押し黙った。松永先生は、はあ?みたいな顔でこちらを睨んでいた。それでも俺は続けた。


「年齢=彼氏いない歴を今こそ打ち破ろうではないか!もうすぐ三十路、そろそろ本格的なお付き合いが必要なのではないか!」

「お前、絶対馬鹿にしてるだけだろ!!」


遠くの方から愛しの人からの声が届く。一年生はポカン?としているが、2、3年では松永先生を知っている人がクスクスと笑っている。


「松永先生!婚活アプリなんか止めて今をときめこうではないか!」

「お前、なんでそれを!」


松永先生ははっ、とするが既に遅く、笑いの渦がおこった。


「僕はあなたのすべてを知っている!!僕はどんなに性格が悪くて、どうせ女子力もないであろう先生をすべて受け入れます!さぁ、三十路になる前に輝きましょう!付き合って下さい!」


俺は遂に告白をした。


松永先生は顔を真っ赤にしてこちらへ突撃しようとしているところを他の先生が、4人がかりで抑え込んでいる。


結局この後、騒動は収まらず、天女祭は幕を閉じたのであった。




(………成瀬を起用するんじゃなかった)


生徒会全員の意見が一致した。










「え〜、今回はなんでまた理事長室によばれたんですか?」


前回は4人でお呼ばれされたが、今回は俺一人だけだ。心細いな〜



「凄く重要だよ、今回は」


理事長は指を組みながら静かに言った。若干怒ってる気がする。俺は緊張しながら静かに息を呑む


「………娘を貰ってくれるそうだね」

「……え?」

「ようやく娘が結婚できるなんてこれ程嬉しいことはないぞ」


と言って理事長は涙ぐむ。


「パパっ!!冗談でもそんなことを言うな!!なんでこんな奴と……思い出しただけで腹が立ってきた!!」

「松永先生落ち着いて〜」


後輩の佐々木先生に揶揄されて、松永先生は少し落ち着く。


「後輩に揶揄されるなんて…」

「キッーー!!やっぱ、お前ってやつは」

「そういうとこですよ」


松永先生は凄く睨んでくるが、俺はヘラヘラと無視をする。


「でも、なんであんなことをしたんだい?」


理事長が真面目に尋ねてきた。


「それは………生徒会の奴らが俺を騙して」

「あ?」


松永先生の怒りの矛先が生徒会へ向く。


「あ、そ、その!告白祭の時、い、いつも!誰も出てこないので!最初の人だけ決めとこうかと!それで…」


日比野は松永先生に滅茶苦茶ビビって涙目になりながら答える。


「なんでコイツなんだ?」

「口調…」

「お前は黙っとけ!!」

「えっと、誰かいないかなと考えているときに、姫沢会長に成瀬くんが良いのでは、とのことで…」

「そうだ!あいつが悪いんだ!よし、あいつを探しに行こう!」


俺は椅子から立ち上がって理事長室を出ようとするが、松永先生に後ろ襟を掴まれる。


「何逃げようとしてるんだ?」

「やだな〜、ゆいっちを探しに行くだけじゃないですか〜?」

「逃げる気満々だっただろ!」 


結局俺はまた椅子に座らされる。


「……こうなってはああするしかないな」


理事長が静かに言い放つ。


「ああすると言いますと?」

「生徒を代表する者に決めてもらう」


ん?やっぱりゆいっちが必要じゃん


「「「ああ〜、神崎さんですね」」」


先生らの意見が一致した。てか副会長はどんだけ信頼厚いんだよ!会長は!?


「あ、あの〜、神崎副会長は今日用事があると言って、帰られたのですけど…」

「「「………打つ手なしか」」」


だから会長は!?


結局、神崎副会長がいないということで結論は有耶無耶になって俺は解放されたのであった。















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