第10話
夕食も終わり、リビングのソファにどっかり座る。
大人はダイニングでコーヒーを淹れて談笑している。他のメンバーは女子同士でペチャクチャとお喋りをしている。
「………暇だ」
暇というのは人生において最もいらないものだと思う。暇を楽しむことなんて出来ない。
ということはつまり
「俺は死んでいる!?」
俺は生の極地にたどり着いてしまったのだ!こりゃ大変だ!
「成瀬さん大丈夫?」
「大丈夫でしょ」
「うん、いつものこと……」
だから、今俺がすべきことは……っ!!そうか!
俺は女子達が話しているところに割って入った。
「え?なに?」
急に変なやつがきたみたいな雰囲気を醸し出してくるが、俺は無視して凜香の方に真剣な眼差しで見つめた。
「凜香」
「え、私?」
「おっぱい揉ましてくれ」
今日蹴られた反対の頬に拳がめり込んだ。
成瀬は死んでしまった……
「ごめん、凜香ちゃん。バカお兄ぃで」
真奈の呆れた声が遠くの方で聞こえた気がした。
「………痛い」
俺は真っ赤に腫れた頬を冷やしながら凜香を睨む。
もう一回殴ろうか?みたいな視線をしてきたので俺はすかさずそっぽを向く。
「ケーキ食べるよ〜」
母さんが元気な声で言った。
「はーい」
俺達は机に向かった。
「何飲む?」
「私は紅茶」
「私も」
「私も」
真奈と凜香と彩ちゃんはそう言ってソファーに座った。
「んじゃあ、俺は…白湯で。なーんて」
「分かった、白湯ね」
おばさんは俺の冗談を真に受けてリアルに白湯を出してくる。
「ちょうど3人分しか、紅茶がなくて良かったわ」
何も濁っていない透明な水を見る。少し、湯気がたっている。
「いや、おかしい…」
「飲むわよね?」
おばさんが机に指をトントンとさせる。
「い、や…」
「ん?」
おっと、飲まないとイケない雰囲気だ…周りを見渡してヘルプを求めるが誰一人として目を合わせようとしない。
「の、飲みます……」
「よろしい」
俺はケーキとともに白湯を飲む。んー、お湯って感じ……香りと風味が欲しい……
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