第11話
「今日はいけそう?」
「結構してきたから行ける気がする」
「ヤバい死ぬかも」
「ミートゥー」
教室に入るとまだ新しいクラスにもかかわらずかなりの話し合っている声と教科書が見える。みんな勉強熱心すぎるだろ。
「あ、成瀬」
「うっす、てかなんでこんなにみんな勉強してるんだ?」
俺はいつも勉強しているところを見たことがない久保が教科書を開けているのを見て言い放った。
「え?だって今日テストだよ?」
「………は?」
「え?今日テストだよ?」
「………は?」
「え?今日テストだよ?」
「………は?」
「え?今日ーー」
「もうわかったわ!何回も言わなくていいわ!」
「そう?」
久保はとぼけたような顔をする。くっそ〜、なんかこいつにイジられると腹立つな…
「まだ今日という世界も始まってしまった。生きていて嬉しく思うぞ」
いつも通りの朱里が登校してくる。
「どこが生きてるんだよ。今日テストだぞ?」
「ふふふ、何を騙そうとしているのだ?テストは来週に決まっているであろう?」
顔に三本指を当て今日も全開の厨二病をかます。
「え?ガチで今日だぞ?」
「え?」
朱里は信じられないような顔でコチラを見てくる。そして久保の方を見た。久保はぎこちなく頷く。
「そん、な………」
朱里はその場に崩れ落ちた。
「ど、どうしよ!?本当にまだ何もやってない、ねぇ、成瀬ヤバいどうしよ!?」
朱里は厨二病も忘れて涙目になりながら訴えてくる。
「いや、もう無理じゃね?」
「嫌だよー!今回のテストで悪い点採ったら塾とか行かされるの!!お小遣いも減らされるの!!」
朱里は懇願して、俺のズボンを涙で濡らす。
はぁ、と俺は溜息をついて、朱里の頭をポンと撫でる。
朱里は涙をやめて上目遣いでコチラを見る。
俺は親指を立てて、はにかむ。
「一緒に聡志のところに行こう!」
成績優秀、URクラスの聡志ならこのピンチを救ってくれるだろう。
「成瀬…」
「さぁ、行こう!」
俺は教室のドアに向かって指を指す。
それを讃えるかのようにテスト開始5分前のチャイムがなって、先生が席に着け〜と合図した。
「今回のは難しかったよね〜」
「それな」
教室中でクラスの連中がさっきの答え合わせとかべちゃくちゃ騒ぐ。そう、テストが終わったのだ。二重の意味で。
「大丈夫?二人とも」
俺と朱里は白目をひん剥いて机に突っ伏している。朱里からは何やら塾に行かなきゃ、嫌だ、死ぬ、など怨念のように聞こえてくる。
「ま、まあ、………頑張れ」
久保はなんの励ましにもならないことを頬を掻きながらつぶやく。
あー、テストなんて撲滅してしまえ!!
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