第7話



「なー君、凜香ちゃん家にいくよ〜!」


下の階から母さんの大きな声が響いてくる。


「なんで?」

「今日は二人の入学の御祝いするって言ってたでしょ〜。もう〜忘れっぽいんだから♪」


「ジャンボパフェ奢ってくれたら行くー」

「ダメよ〜、まーちゃんがなー君にぷりぷり怒ってたのママ知ってるんだからね〜。可愛くて写真いっぱいとれて良かったけどね〜!」


絶妙に言ってることがおかしい気がするんだけど…


「はいはい、分かったよ」


俺はさっさと着替え始める。


着替えて下に降りると父さんがソファに座って新聞を読んでいた。


「父さん」

「なんだ?」


父さんは新聞に目を向けたまま聞き返す。


「カッコつけるのは良いけど新聞紙逆さまだぞ?」

「っ!!通りで読みにくいわけだ。俺が馬鹿で読めないわけじゃなかったんだな!」


いや、それ以上に馬鹿なんだよ。


「こう君、仕事休めて良かったね〜」

「ああ。でも不思議と部下達も喜んでたよ」


そりゃああんたがいない方が仕事捗りそうだもんね。そんなことも露知らず嬉しそうに笑う父。本当に俺達って血の繋がりあるのか?    


「あ!ケーキもらってくるの忘れた!せっかく予約していたのに!」

「え!?じゃあ一緒に取りに行こう!成瀬は先に黒瀬さんの家に行っとけ!」

「えぇー」


俺だけを残してすぐに二人は家を出た。


「はぁ…」


自分の親ながら呆れてしまう。


「おーい、真奈〜!あいつん家行くぞー」


………………あれ?


いない?


先に行った?


お兄ちゃんを置いて?


結局俺は肩を落として一人で向かうことにした。









ピンポーン



「はいはい、あいてるよー」


ボサボサ髪のだらしない女性がだるそうにドアを開けた。彼女の名前は黒瀬真希。母と父とは同級生らしい。


「こんちわーっす、おばさん」

「はぁ、」


俺を見るとおばさんは露骨に嫌そうな顔をする。サイテーだな、こんなイケメンが来てやっているのに。


「真奈ちゃんもう来てるよ」


「うぅ、うっ、置いていくなんてお兄ちゃん悲しいよ〜」


俺は顔に手を当ててメソメソと泣く。


「はいはい、それよりあんた入学式でやらかしたんでしょ?」 

「ど、どうしてそれをっ!?」

「沙菜から聞いたんだよ」

「くぅ〜、やっぱり鬘は校則違反だったか〜!」


「その問題じゃないと思うけどね」


おばさんは肩をすくめて言った。


「そう言えば美子達は?」 


おばさんは俺の親がいないことに疑問をもつ。


「あ〜、…………なんかどっか行った」


なんかを忘れたって言ってたんだけど何だっけ?まあ、どうせ下らないからいいか


「はぁ、いつものことか」

 

珍しいとはならないんかい…








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