第5話




「僕に彼女ができない理由が分かった」


放課後、いつもの様に喫茶店に入って座るやいなや久保が真面目に話しだした。


「ん〜、俺はいつものジンジャーで」

「俺はホットコーヒー」

「私はこの世界を統一せんとする邪悪な盛り合わせで」

「パフェって言いなよ。あ、僕はオレンジで」


かしこまりましたと言って店員が戻っていく。


「パフェ奢って」

「はぁ〜?なんでだよ」

「今日、ノってあげたから」

「え〜〜、……まあそうだな、いいぞ。今日は俺の奢りだ!」



「流石我が盟友!」

「ありがとな」

「え?いいの?ありがとーってちがーう!!」


久保は机をバンっ!と叩いて立ち上がる。


店内の視線が一気に久保に集中し、久保は周りに謝ってからゆっくり座った。


「………僕に彼女が出来ない理由が分かったんだよ」

「そりゃ店内で大声上げるやつ奴の彼女にはなりたくないわな」

「そうっ!……じゃなくて、」


また大声を出しそうになって、周りの注目を集める。今度は人目をはばかるように小さな声で話しだした。


「だから、成瀬と一緒にいるから僕まで変人扱いされるんだよ」

「………え?俺?」


嫌だな〜。急にモテない理由が俺にあるとか。というかモテないより変人?それじゃあまるで俺が変人みたいじゃないか。


「いや、変人だからね?」

「っ!?お前読心術でもあるのかよ!?」

「いや、もう顔に出てたし……」


「まあ、イケメンだしな」

「一言もそんなこと言ってないけど!?」


久保は軽快なツッコミを入れる。もうこれはこっちサイドの人間だよな〜。


「お待たせしました、ホットコーヒーとジンジャーエールとオレンジとDXジャンボパフェです。では

ごゆっくりどうぞ」


俺達が頼んだ飲み物は置いといて、目の前にびっくりするほど大きなパフェが届いた。


俺はカチコチになりながら朱里の方を向く。


「お、お前これ食べられるのか?というより値段は?」

「3000」

「高っ!!まじかよ!?」


こいつ奢ってもらう前提で頼みやがったな!!








「暗黒の世界に彩りを添えるほどの美味だった♪」


あの巨大なパフェを一人で食べきった朱里は上機嫌に歩きながら言った。


「あー、はいはい良かったですね」


対して俺は財布の中身が空っぽになり、深い溜息がでる。


久保や聡志は帰り道が違うので今は朱里と二人だ。まあ、これはいつもなことなのでどうってことないのだが、それより……


高校生にもなって塀に登って歩かないでほしい……


パンツも丸見えだぞ……


「あぁ、日が沈む。今日という日が平和に、いやでもまだ分からない!漆黒の闇に突如として奴が現れるかもしれない!…??どうして我を見ている、の、だぁぁぁ!!!?」


ずっと首を固定して見ていたのが仇となり俺がパンツを見ているのに気づかれてしまった。


俺はショックで塀から落ちてくる朱里を受け止める。


「くぅ、我としたことが…」


そういいながらも恥ずかしいのか嬉しいのかわからないが顔が赤い。


「いや、いい大人のパンツだったぞ?お前ってあんなの履くんだな、」

「〜〜〜っ!!」


朱里は顔を更に真っ赤にして声にならない叫びをあげた。






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