冷たいのは視線も
ほんわかと暖かくなり少し薄着になってきた。
薄着になるという事は?
露出が増えるという事だ。
れーこさんと会う度に服装が、服装がっ! と悶そうになってしまう。
れーこさんは冷たいものに耐性がありすぎるせいかこの時期ですでにジャケットの下が半袖なんだ。
汗ばんでジャケットを脱いだ時のあの姿が、夜にもんもんとさせる。
そんな事をビクビクしながら心の中で考えていつもの通りに振る舞っている。
振る舞っていたはずだった。
ふと覗いた視線にれーこさんの顔があったのは驚きだった。
「かかくん、最近よく見ているわよね。ここ」
そう言って指を指したのは胸辺り。
ええ、見ています。ガン見です。
なんて素直には言えないので俺は当たり障りない様に。
「まだ涼しい時間のが長いのに寒くないのかな、大丈夫かなって心配だったんです」
なんて四半分は思っていた事を言ってみた。
するとれーこさんは冷たいのは得意なのと答えた。
視線のコールドビームが得意技なのですね。わかりません。
手にしたボトルの栓を開き、れーこさんはコーヒー味の水を飲み干した。
「それ、おいしいんです?」
と俺はさり気なく話の焦点をずらしてみようと試みた。
「おいし、くはないわね。でも1回は飲んでみたいじゃない。冷たいコーヒーだから」
「俺もホットココアで少し変わったものがあったら飲みたくなりますね」
「人間、そうやって学んでいくものなのかしら」
「じゃ、無いですかね。失敗から学ぶって言いますし。完璧な人間なんていないと思います」
「どうしてそう思うの?」
「試行錯誤って言葉があるくらいですからどうあがいても完璧にはならないんでしょうね。俺はそうやって思ってますから六、七割くらいでいいかなって」
「出世は遠くなりそうね」
「でも、壊れるよりかはましだと思います」
「そうね」
そこで話は途切れた。
俺は何度かれーこさんの胸元を見たが彼女と目が合う事は無かった。
失敗か。
今日した俺の話は失敗だったのか。
変に理屈っぽくしちゃだめだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます