第2話 あいつと俺
高3と高1。
俺とあいつのはじまりは20数年前に遡る。
3年生の進級と同時に生徒会会長に推されていた俺は、入学式で新入生総代の挨拶をした颯真から誓いの言葉を受けた。
派手な顔立ちの男、というのが第一印象だ。
俺たちの学校は地域でも有名な進学校で、自由な校風だったからか。
入学式からあいつは茶髪で制服を着崩すような奴。
俺は真逆。
親の敷いたレールの上を逸れないように走り、実家から遠く離れた親の決めた学校に寮生として進学した。まだ12歳の時だ。
いずれは父親の病院の経営に携わる人生に何の疑問ももたない、自覚も何も無い。
医大進学以外興味のない日々。
今考えればつまらない時間を送っていた。
颯真のことなど忘れていた5月、
新入生の生徒会参画であいつが執行委員として推挙されてきた。
見るからに軽く1年生とは思えないふてぶてしいというか堂々としているというか。
でも噂は耳にしていた。
「石川は特進で全教科学年トップだってよ」
へぇ、人は見かけによらない。
気にも止めていなかった、が ──
「ねぇ神田会長、聞いてよ〜」
あいつはことある事に生徒会室の俺にちょっかいを出してくるようになった。
「俺さ
…… へぇ横浜?!スゲ!カッコイイなぁ」
「体育祭の総代も押しつけられてさぁ」
「ウチ?両親が医者でちっさい医院をしてる」
「センパイんち兄さんも医者かぁ、兄貴とか憧れるな。……はっ?弟もいんの?最高じゃんか」
はじめは学校行事の担当のこと、
そのうちクラスの問題や疑問、
そして家族、進学や将来について暇さえあれば生徒会室の俺にまとわりついていた。
弟のような無邪気さはいつし熱を孕んだ視線に変わるまでさほど時間はかからなかった。
恋愛に疎い俺でさえ気づくほどの・・・。
「好きだよ、神田先輩が好きなんだ」
夏が終わる頃には遠慮なく気持ちを押し付けてくるようになった。
俺の戸惑いなんてそっちのけ、子供のように真っ直ぐに向かってくるあいつに理解不能の俺。
そうだろ。俺とお前は男同士で、
お前はいつも女生徒の取り巻きを連れて歩いているような男なのに。
なぜだ?
どーして男の俺なんだ?
からかってるならとんだ迷惑だ。
冷たくすげなくあしらっても効果なし。
俺の居心地の悪さなど一切に気にすることもなく、ひたすら俺への好意は日に日にあらわになる。
本気なのか、ニセモノなのか。
男女の恋愛だって興味なかった俺なのに、
男同士なんて未知の世界だった。
俺は自分の気持ちすら、わからないままでいた。
……わからなかったが、
俺は生徒会室のドアからあいつが顔を出すのを密かに待ちわびるようになっていた。
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