赤い本の題

「……あ、ああぁ!! あっ……」


ママがその痛そうな声、で怒りに満ちたように叫ぶのと、悲しみに満ちたように声が漏れたのが聞こえた。


「マ、ママ……」

「あ、あぁ……っ」


あ……あ、たまが……。


まるで、自分の体すべてに、遥かに重い重力が一気にかかったようだった。


「マ……マ……」

「あああ、ぁ、あ……」


ママを助けないと、いけないのに……。


「はは、あぁ~リクぅ、痛いー? 悪い子だね~勝手に僕の部屋に入るなんて~。禁止してたのにね~? 自業自得だよ? リク」


微かな意識の中で、父の声がした。でもいつもの父の声じゃなかった。誰かを溺愛するような、そんな甘い声。


「あ、そうだ! リクがね、本棚から抜こうとした本のタイトル教えてあげよっか」

「……?」

「『監禁の仕方』だよ」

「……!……?」

「はは、リク、つーかまえた♡」


父は不気味に笑っていた。


「……っ」

「あ、ぁ、あ……」


途切れていく意識の中で……最後のママの声は聞こえなかった。


ママの声が聞こえる前に、オレは意識を失った。


「あぁ~気を失っちゃった。ごめんね、リク。でもさ、勝手に入って、ここ開けちゃったんだからさ。ね、アヤ? 仕方がなかったんだよ」

「……っ」

「……何だよ、その目はぁ?」


あーあーあーあー、怒るのはやめよ。僕最近よく怒ってるし。だって、絶対アヤは屈服して僕の言うこと聞くと思っていたのに、全然だもん。ちょーさ、マジで早くさ、アヤ屈服しねーかな。マジでイライラするんだけど。あぁあぁ、だから僕の二面性……いや、三面性……を出すのはやめないと。体力の消費がヤバいし。


僕を睨みつけるアヤの目は鋭い。まぁ、全然怖くないんだけど。むしろ可愛い!!


「アーヤー、分かるだろー? バレたからこうするしかなかったんだよー。最近、リクはスクスク大きくなってて、力も強くなってて、僕もあの頃より年を取ったから、!!」

「……んっ」

「なんだよ、何か言いたいなら、言えばぁ?」

「……」

「あ、でも言えないよねー! アヤの声はもう出ないもんねー! あぁ、あんなに可愛かった声がもう出ないなんて……可哀そうに。あぁー、アヤの声、聞きたいなぁ、あ、でも、叫ばれたら面倒だし、いいや、別に。アヤの声、他の人に聞かれたくないし、もちろんリクにも」

「……」

「もちろんリクもアヤの隣に並ばせてあげるよ! 正直こんな早くバレるとは思ってなかったけど、いつかはバレるかもって思っていたし。準備は万端なんだ!! しっかし、勝手に僕の部屋に入ったことは許せないな。何かお仕置きしなきゃ」

「んん、ぁ、、や」

「悪い子はしつけなきゃ、でしょ? アヤ? それに外された布も付け直さなきゃ」

「ん、あ……や」

「もっときつく、ね? 大丈夫。アヤは喋れなくても、可愛いよ……」

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