にわめ。 *はずみくん*

 体育館の利用時間は前後半に分かれている。

 前半の利用時間が終了し、男子バスケ部と女子バレー部は体育館を出て行った。


 体育館を出て行った部員たちは基礎練習に入る。

 外周を走ったり、ストレッチや筋トレを行うのだ。


 男子バスケ部と女子バレー部が――西谷くんとほのか・・・が話をする機会はない。


 動き回る運動部の部員たちを、羽住・・と花で追いかけ回すのも無理だ。


「今日は解散しましょうか」


 羽住はそう言って花と正門前で別れた。

 羽住と花の家は正門を出て真逆の方向にあるのだ。


 今は十六時半――。

 当初の予定通り、市立図書館に寄っていくつもりなのだろう。

 小走りに去っていく花の背中を見つめていると、Yシャツの胸ポケットに入れていたスマホが震えた。


 取り出すと電話がかかってきていた。

 表示されている名前は〝九重 ほのか〟。


「もしもし」


 羽住は迷うことなく電話に出た。


「うん、そう……うん、見に行ってた」


 スマホ越しに聞こえるほのかの明るい声に、羽住は相づちを打った。

 花に対して話すよりも、ずっとくだけた口調で――。


「それで、ほのか。昨日、話してた件……そう、それ。協力するよ」


 一拍、間を置いたあと。

 スマホを思わず耳から遠ざけてしまうほどの歓声に、羽住は眉間にしわを寄せた。


 一言、二言交わしたあと。


「じゃあ、詳しくは今夜」


 そう言って羽住は電話を切ると、目を細めて微笑んだのだった。

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